實務報導

人工知能(AI)の利用は、徐々に生活や仕事の隅々まで浸透しており、訴訟も例外ではない。訴訟当事者が法的文書の作成にAIを利用することはもはや取り上げるまでもないことであるが、AIが訴訟行為に携わる際の態様と影響はこれにとどまらない。証拠収集から裁判所による事実の確認に至るまで、AIの存在は至るところで見られる。さらに、個々の訴訟手続きにおいて、たとえ実際にAIが使用されなくても、驚くほどリアルな文字、画像、音声を生成できるAIの能力は、裁判所が従来採用してきた基準の再検討を促す可能性がある。以下に、代表的な判例を挙げ、今後の関連規則の制定に向けて参考となる意見を述べたい。

一、書状の作成におけるAIの利用

まず、当事者が書状の作成にAIを使用することについて、裁判所が明示的な禁止や拒否を示しているわけではないが、AIで生成された内容をそのまま書状の中核として用いることを、裁判所が問題視した事例がすでに存在する。例えば、台北地方裁判所の115年度声再字第13号決定は下記のとおり示している。

いわゆる再審事由の「表明」とは、自己の内なる思考や精神活動を外部に表現する行為を指す。…申立人がCopilotとの会話を引用し、再審を申し立てる際の主張とすることは禁じられるわけではないが、申立人が用いたプロンプトや会話の文脈を総合的に検討してはじめて、再審理由が合法的に表明されたかどうかが判断できる。「…再審申立書を書いてください」という申立人のプロンプト、および「承知しました。再審申立書のサンプルはこちらです…原判決の番号は…」というCopilotの回答に鑑みると…原判決のどこに民事訴訟法第496条第1項第13号に該当する具体的な事情があるかを、明確に述べたとは認めがたい。

AIが生成した内容に誤りや関連性の欠如が見られる場合、裁判所がそれに気付き、弁論の全趣旨の一部として斟酌し、判決や決定において取り上げた事例も少なからず存在する。例えば、2025年12月の台湾高等裁判所の114年度声再字第429号刑事決定は、以下の内容を示している。

その内容を見ると、これは単に申立人がAI言語モデルに対し、114年度声再字第341号決定および本件確定判決の内容を一方的に述べた後、AIがその意見をまとめて作成した文書に過ぎず、いかなる事実をも証明していない。…この書証を、再審事由の存在を証明するに足りる証拠として認めることはできない。

桃園地方裁判所の115年度訴字第867号判決(2026年7月)は、下記のとおり記載している。

当裁判所としては、以下のように推奨する。判決を受け取った際には、弁護士を見付けてきちんと相談されたい。もちろん、生きている、肉体を持つ弁護士であることは言うまでもない。AIに相談したり、AIに控訴状を代筆させることは控えるように。ましてや、AIが作ったものであることを他人がわからないとは思わないように。

なお、刑事事件においては、AIを用いて反省状を作成したことも、量刑判断において考慮される可能性がある。なお、AIによる反省文の作成を禁止する旨の判決も見られる。例えば、基隆地方裁判所の基簡字第572号刑事判決(2026年7月)では、次のように判示されている。

被告人がAI(人工知能)のツールを用いて反省文を作成し、且つ精神鑑定報告書から関連内容を収集してこれを反省文に引用した上、酌量減軽を求める際の根拠となる一切の情状としようと企てた点を斟酌し、主文の刑を処する。

そして、桃園地方裁判所の審簡字第2294号刑事判決(2026年4月)では次のように判示されている。

被告人は、本判決の確定した日から6ヶ月以内に、主文に掲げる条件に従い反省文を一通提出しなければならない。ただし、自分の手で書かなくてはならず、人工知能ソフトウェアで作成してはならない。

これらの判決に鑑みると、AIが乱用されることは、かえって訴訟主体としての当事者による訴訟行為における意思表示に真正性がなければならないことを裁判所が強調するきっかけとなっている。

二、AIで生成した内容の証拠能力と証明力

AIで生成された事実に関する内容を証拠とした場合、一部の裁判所が傍証の欠如を理由に採用しなかった前例がある。最高裁判所もまた、AIによる顔認識システムを、被告人が犯人であることを立証するための唯一の証拠としては使用できないとしている。

桃園地方裁判所の113年度易字第1166号刑事判決(2025年12月)では次のように判示されている。

しかしながら、Geminiのようなマルチモーダル大規模言語モデルは、その本質として、テキスト、音声、動画など多様なデータを統合・処理する機械学習によって構築されている。ユーザーの指示に基づき、学習データベースからコンテンツを選別・判断して回答を提供する仕組みは、社会的に周知の事実である。したがって、こうしたマルチモーダル大規模言語モデルが生成する内容や回答の正確性は、ユーザーの入力するプロンプトと、モデルの機械学習に用いられたデータベースに依存する。その回答において合理的な根拠や情報の出所が示されない場合、裁判所はそれらを直ちに証拠として採用すべきではない。

また、最高裁判所の114年度台上字第5166号刑事判決(2026年3月)では、以下のとおり判示されている。

現在の顔認識技術は、環境(光、角度、障害物など)やアルゴリズムの精度、ディープフェイク技術の影響を受けやすく、また「ブラックボックス」の問題(人工知能のアルゴリズムの複雑さと不透明性のため、通常、利用者がその意思決定プロセスや結論に至る過程を理解できないことを指す)が存在するため、検証可能性に欠ける。刑事裁判の実務においては、証拠の性質や事案の状況に応じて伝聞法則とその例外が適用されるか否かを判断する必要があることに加え、個々の事案において、相互に裏付けとなる証拠が存在するか否かも考慮する必要がある。顔認識による比較の結果のみを、被告人が犯罪者であると判断する唯一の証拠として用いるべきではない。

一方、犯罪発生後の被害者とAIとの会話のやり取りを、裁判所が被害の証拠として認めた事例が複数存在する。その多くは性的暴行事件であり、この種の事件は立証が困難であることから、こうした法的な判断や流れに至ったものと推測される。例えば、桃園地方裁判所の114年度侵訴字第182号刑事判決(2026年5月)は、次のように判示している。

本件におけるChatGPTのチャットログのスクリーンショットは、事件後、証人Aが人工知能ソフトウェア(ChatGPT)との会話のやり取りを通じて残したデジタル的痕跡である。このチャットログは、コンピュータシステムの作動により保存された電磁的記録に基づいて客観的に生成され、それをスクリーンショットとして撮影したものであり、非供述証拠に属するとともに、文書証拠および物的証拠の特性を併せ持つ。…その内容は、事件後における証人Aの質問を客観的に記録したものであって、そのいずれもが本件の事実と関連性がある。さらに、本件の記録上、当該スクリーンショットが法的手続きに違反して取得されたことを認めるに足りる積極的な証拠はなく、偽造や改ざんなど、その証拠能力を排斥すべき事情も存在しない。…法律上の証拠能力を有するものと認められる。

新北地方裁判所の115年度侵訴字第39号刑事判決(2026年7月)、および同裁判所の114年度侵訴字第166号刑事判決(2025年6月)も参照されたい。

三、裁判所におけるAIを活用した事実認定

裁判所が事実確認のためにAIツールを積極的に活用することは珍しくない。以下に3つの例を挙げる。

(一) 交通事故に関する事件において、裁判所は当事者の通院に必要なタクシー料金をAIを用いて算出し、その請求を合理的かつ根拠のあるものと認めた(新北地方裁判所113年度簡上字第65号民事判決。2025年10月)。

(二) 交通事故に関する事件において、裁判所はAIを用いて医療記録に記載された用語が「グラスゴー・コーマ・スケール」であることを確認した(新竹地方裁判所114年度交易字第46号民事判決。2026年8月)。

(三) 不動産売買契約の違約金支払に関する訴訟において、裁判所はAIを用いて豚の飼料の平均価格を照会した。これにより、「控訴人がこの期間に養豚によって利益を得ることができたとは断言できず、どれほどの利益を得られたかについて、裁判所に心証を抱かせるに足りる証拠を提出していないため、このような損失が生じたとは認めがたい」と認定した(台湾高等裁判所高雄支部112年度上更一字第27号民事判決。2024年6月)。

四、AIの間接的影響

当事者、裁判所、検察官による使用を通じて、訴訟手続きへ直接AIを関与させた事例は、上記のとおりである。さらに、たとえ訴訟においてAIが使用されなかったとしても(あるいは使用された証拠がない場合でも)、AIの潜在的な利用可能性やそれに伴う影響を考慮すれば、裁判所が過去の基準を調整する可能性がある。これは、AIが訴訟手続きに及ぼす間接的な影響といえる。

(一) 訴訟記録の閲覧、および裁判の録音データの引渡しの申立

例えば、裁判所においては、訴訟記録の閲覧や裁判の録音データの引渡しを申し立てる際の審査において、AIの濫用によって訴訟記録や録音データに含まれる個人情報が侵害されるリスクがあるため、その要件を厳格化する傾向がますます強まっている。例えば、台北高等行政裁判所の115年度声字第31号決定は、次のように判示している。

AI技術の進歩とディープフェイク(Deepfake)技術の成熟に伴い、個人の音声や画像の高度な偽造はもはや容易になっている。裁判手続きの参加者の個人情報保護を軽視し、その声紋や感情表現等の個人情報を申立人に提供すれば、当該参加者を高度な偽造の危険にさらすおそれがある。これは参加者の権利を侵害するにとどまらず、裁判の録音・録画データが高度に偽造された場合、訴訟手続きの妨害につながるおそれもある。

(注:生成AIが普及する以前の2022年7月、台湾高等裁判所は既にその111年度声字第39号決定において、ディープフェイクがもたらすリスクについて類似した見解を示した上、録音データの引渡しの申立てを却下した。)

なお、最高裁判所115年度台抗字第711号決定(2026年7月)は、下記のように示している。

「人工知能基本法」の第4条では、人工知能の研究開発および応用において、人格権および基本的人権を尊重し、「プライバシー保護およびデータガバナンス」の原則に基づき、個人情報やプライバシーを適切に保護すること、データ漏洩のリスクを回避すること、データの最小化原則を採用すること、ならびに憲法上のプライバシー権の保護を遵守することを前提として、機微にふれない情報(または:機微でない情報)の公開および再利用のみを促進すべきであると明確に規定している。…上記のプライバシー保護およびデータガバナンスの法的原則に基づき、訴訟記録に示された客観的状況を考慮した結果、申立人による訴訟手続上の権利行使が、公正な裁判に必要な範囲から逸脱し、訴訟手続を利用して高度に機微な個人情報を収集し、人格権を侵害し、または手続の秩序を著しく阻害する高度な危険性があると認められるに足りる場合、その手続上の利益に対する憲法上の保護の程度は相対的に低下する。裁判所が、手続上の権利の保護、人格権の保護、データの最小化原則、および訴訟手続の秩序維持を比較衡量した上で、訴訟記録の全部もしくは一部の閲覧を制限し、またはマスキング、要約、複製制限といった侵害を最小化する措置に置き換えるなどの処分を講じる場合、これは比例原則、人工知能時代のデータガバナンス原則、個人の尊厳の保護、および適正手続保障の要件が要請する合法的な利益衡量であって、訴訟権に対する不当な制限には当たらない。

2026年7月に下されたこの最高裁判所の判決は、台湾において人工知能基本法を引用した初めての判決であり、特に重要な意義を持つ。さらに、人工知能基本法第4条第1項第3号は、プライバシー保護を強調するにとどまらず、「企業の営業秘密の尊重」という原則をも示しており、この判決に示された思考枠組みは今後、知的財産紛争に関わる訴訟手続きにおいても適用される可能性がある。

(二) デジタル証拠の真正性の確認

例えば、裁判所は、AIが容易にデジタル証拠を生成できることを考慮し、そのような証拠の真正性の確認を厳格化している。その一例として、台湾高等裁判所115年度上易字第578号刑事判決(2026年7月)は以下のように判示している。

しかしながら、現代の技術においては、デジタル電磁記録に対して人工知能技術を用いて画像を追加、削除、変更、あるいは合成することは容易である。組版ソフトウェア、画像編集ソフトウェア、あるいは生成AIを用いることで、本物と区別がつかない対話メッセージのスクリーンショットを迅速かつ簡単に作成することができる。これらの電磁記録が別の媒体に移されたり、撮影されたり、あるいは複写されたりして、紙媒体におけるスクリーンショットの二次的証拠に変換された場合において、比較または確認のためのオリジナルの電磁記録媒体やシステムの履歴記録が存在せず、オリジナル証拠との同一性を確認できないときは、当該証拠が偽造または改ざんされた可能性を排除することは困難である。

 (注:これは名誉毀損の事件であった。告訴人が提出したLINEの通話記録が紙媒体によるものであったため、台湾高等裁判所は原審判決を破棄し、被告に無罪判決を言い渡した。)

(三) 詐欺罪の量刑における加重事由「3人以上による共同犯罪」

AIが訴訟に間接的に影響を与えるもう一つの例として、通信詐欺事件における刑法第339条の4第1項第2号の「3人以上による共同犯罪」という加重事由の適用が挙げられる。最高裁判所はその112年度台上字第5620号刑事判決(2024年2月)及び115年度台上字第2844号刑事判決(2026年8月)において次のように判示している。

今日の高度なデジタル技術と通信ソフトウェアの発展により、詐欺グループのメンバーと被害者、口座提供者、現金受け取り役などが実際に顔を合わせることはないため、複数の人物が同じ通信ソフトウェアのニックネームを使用していたり、一人の人物が異なるニックネームを使用していたり、あるいはAI技術によって架空の人物が相手とビデオチャットや通信を行っていたりすることが可能であっても、犯罪に関与した人数の算定は依然として形式的に観察しなければならない。つまり、反証がない限り、同じ名前を使用している者は同一人物とみなされ、異なる名前を使用している者は別人としてみなされるべきである。このような認定こそが一般大衆の認識と一致する。

AIのテキストおよび動画生成能力は、本物と区別できないほどのものを作成できるのみならず、従来の法学における行為者の概念にも影響を及ぼしている。AIにより、一人の詐欺犯が複数人による詐欺グループの体裁を作り出すことが可能となる。そのため、容疑者が逮捕されて自分が単に他人の指示を受けた現金受け取り役にすぎないと主張した場合、「3人以上による共同犯罪」という要件を満たすかどうかという問題が生じてくる可能性がある。AIを使用した可能性を考慮に入れると、この加重事由の適用はより困難になり、詐欺グループ対策に対する国民の期待に応えられない可能性がある。一方で、AIを使用した可能性を完全に無視すると、構成要件が満たされるかどうかとの論理が適切でなくなるきらいがある。最高裁判所の上記の見解は、両者の中間点を見出そうとするものであり、相当な努力の跡を示している。

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以上內容僅為一般性之討論,非法律意見,不適用於具體事件。若有實際問題,請與我們聯繫。

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