2024年4月、台湾の知的財産及び商事裁判所は、事業者が作成した「競争相手に不都合な情報が記載されているFacebookグループ」が、競争相手に損害を蒙らせ公平交易法(公正取引法)に違反するかどうかに関する判決(111年度民公訴字5号)を下した。
本件の原告は、掃除機を販売するA社であり、(共同)被告は、同じく掃除機を販売するB社、B社の代表者や代理店などの関係者を含んでいる。A社とB社がそれぞれ販売する掃除機は、販促の方式、商品の立ち位置、価格などの面において類似するので、両社は台湾やシンガポールなどの国で主な競争相手となっている。
原告の主張によると、被告は、競争相手という正体を隠して「〇〇〇(原告の商品名)返品自力救済連盟」というFacebookグループ(以下、本件Facebookグループと称する)を作成して、原告にまつわる消費者紛争が多発し、原告の商品や役務の品質が劣るような印象を作り上げ、原告の名誉を毀損していた。そこで、原告は、被告等の行為が民法上の不法行為に該当するほか、公平交易法にも違反するとして、約1億台湾ドルの損害賠償などを請求した。
本件訴訟において、被告は、本件FacebookグループがB社の代理店の責任者のC氏(被告のうちの一人)が作成・管理したものであることを否認していない。したがって、本件Facebookグループに掲載された情報や、本件Facebookグループにかかわる被告の行為が、原告の権利を侵害したり公平交易法に違反したりするかどうかということが本件の主な争点である。
まず、原告は、本件Facebookグループに「いいね」を押した600名のロシア、ウクライナ、モルドバからのユーザーが被告が購入した偽アカウントであり、これによって被告が原告にまつわる消費者紛争が多いような印象操作をしていたと主張した。しかし、裁判所は、それらのアカウントが被告が購入したものであることが証明されておらず推測でしかないとして、原告の主張を受け入れなかった。
そして、原告は、被告(C氏)が本件Facebookグループに掲載した文字若しくは画像が原告に損害を被らせたと主張した。例えば、
- グループのプロフィール写真として、原告製品に赤丸に斜め線の禁止マークが加えられ、禁止マークの下に「〇〇〇返品自力救済連盟」の文字があるものが表示されている。
- グループの自己紹介欄に、「ここは悔しい思いをさせられた人たちが無償で作成したグループで、今管理者はいない」という記載がある。
- トップに固定された投稿は、「原告製品を購入した消費者が後悔して返品したいとき、ここで返品の心得をシェアしたり学んだりすることができる」という旨の文字が記載されている。
- 本件Facebookグループに原告(A社)の営業スタッフと消費者のやりとりのスクリーンショットがあり、そのやりとりは、消費者が返品しようとするものの、原告の営業が種々の口実で拒否したという内容である。
しかし、裁判所は上記の文字と画像は、いずれも原告に損害を被らせ、又は公平交易法に違反することはないと判断した。具体的に言えば、上記の1について、原告製品の画像に禁止マークを付けた行為は、被告等が原告製品の使用を望まないことのみを意味し、被告が消費者に返品・クレームを煽って原告に損害を蒙らせたことを証明できないとした。そして、上記の2について、本件Facebookグループにおける投稿は、確かに消費者が原告製品を購入してから自ら発表した感想であったため、たとえ被告が「ここは悔しい思いをさせられた人たちが無償で作成したグループで、今管理者はいない」と記載したとしても、原告に損害を蒙らせていないとした。さらに、上記3は中立的な記述であり、原告に損害を蒙らせていないとし、上記の4についても、スクリーンショットにおけるやりとりが実在していたと認定したので、被告が捏造したものではなく、原告の権利を侵害していないとした。
これに関して、原告は被告(B社)が本件Facebookグループを通じて虚偽の情報を拡散して原告製品を購入した消費者が改めてB社製品を購入するよう煽ったため原告に重大な損害に被らせたと主張したが、裁判所は下記の理由に基づいて原告の主張を否定した。
- 本件Facebookグループにおける投稿は、確かに原告製品を購入した消費者の感想であり、それらの投稿がB社が煽った結果であることを示す証拠はない。
- 本件Facebookグループにおいて、「当Facebookグループの目的は返品と自力救済に協力することだけであり、購入するに値するかどうか、使い心地がどうかは問わないでほしい」、「製品選びに関してはアドバイスをしない」との記述がある。
- 原告は、B社が本件Facebookグループを通じてB社製品を購入するよう消費者に要請したことに関する証拠を提出していない。
また、原告は、被告が本件FacebookグループにおいてA社製品とB社製品を測定する動画を投稿し、不正な方法で原告製品が劣る結果を示してA社製品がB社製品より劣ることを仄めかしていたと主張した。しかし、裁判所がその動画の内容を調べたところ、動画にはA社製品の外見に類似する掃除機があるが、掃除機の外見とブランドマークの様子は充分に表れておらず、且つ動画の目的がA社製品とB社製品の効果を測定するためではないため(むしろ動画の目的は掃除機の効果を測定する機器の精度を示すためである)、裁判所は原告の主張に正当な理由がないと判断した。
上記の判断に基づき、裁判所は、その判決で原告の請求を全面的に否定した。
本件のように、自社の正体を隠して直接的な競争相手の製品又は役務に対する消費者のネガティブな意見(例えば製品の使い心地の悪さ、返品しようとする際に難癖を付けられた過程など)を収集・シェアするためのFacebookグループを作成することは、よく見られるソーシャルメディアの使用方式ではないと思われる。しかし、本件判決に示された見解からすると、(1)競争相手の製品又は役務に対するネガティブな意見が確かにその製品又は役務を購入した消費者に由来し、(2)ネガティブな意見がFacebookグループの管理者が意図的に煽ったものでない場合、法律違反になる可能性は低いと思われる。
一方、このようなFacebookグループを作成・運営することは、やはりどうしても経営の常道とは言えず、投稿される情報を細かに選別しなければ、競争相手に目を付けられて法的措置を提起されるリスクが増えるであろう(例えば、もしFacebookグループの管理者が自ら自社製品と競争相手の製品を比較する動画を投稿する場合、ある種の比較広告となる可能性がある。このような比較広告が公平交易委員会が公表した規則に反する場合、違法となる可能性がある)。
また、権利が侵害されて訴訟を提起しようとする者への教訓として、本件のような訴訟はやはり民事訴訟であり、裁判所は原告が負うべき立証責任を重視するため、自らの主張を支えられる充分な証拠で立証できるかどうかに留意しなければならない(例えば、本件Facebookグループに「いいね」を押したロシア、ウクライナからのユーザーに関し、経験則から見れば掃除機の返品がテーマとなる中国語のFacebookグループにロシア人やウクライナ人が「いいね」を押すことは考えにくいことであるが、それらが被告等が購入した偽アカウントであることについて、やはり原告が立証責任を負わなければならないと裁判所は判断した)。
本件の原告は二審裁判所に控訴したようであり、二審裁判所が原審の判断を維持するかどうかについて今後とも注意を要する。