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ネット販売業者が負うべき最低限の確認義務に関する台湾裁判所の見解

    台湾では、ネット通販サイトを通じて商品(例えば、アメリカや日本からの並行輸入品)を販売する小売業者が、販売ページにその小売業者が自ら作成したとは考えられないほどクオリティーの高い商品写真を掲載することがよく見られる。もしその商品写真が商品の製造会社や台湾内の正規代理店が撮影したものである場合、小売業者が無断掲載をしたとすれば、当然ながら、著作権侵害になる可能性がある。

    最近、台湾の知的財産及び商事裁判所は、この種の著作権侵害に係る事件を審理していた。この事件の原告は、自社ブランドを立ち上げてそのアパレル商品をネットショップや実店舗で販売するアパレル会社である。そして、原告は、同じくアパレル業者である被告(個人事業主)がLINEなどのアプリで原告が撮影した商品写真を無断で使用してアパレル商品を販売していたことに気付いたため、著作権侵害訴訟を提起し、被告に損害賠償を請求した。だが、被告は、「被告の従業員が勝手に原告の商品写真を使用したか、間違って使用したのであって、被告が悪意に基づいて原告の商品写真を使用することで営業利益を上げたわけではない」と弁解した。

    これに対し、知的財産及び商事裁判所はその判決(110年度民著訴字第95号)で下記の見解を示した。

「知的財産権に対する侵害は、既に現代の企業運営において概して直面するリスクになっているので、事業者が製造や販売を行う際、他人の知的財産権に対する侵害を避けるために、より高いリスク意識を持ち、注意義務を払うべきである。著作権の場合、登録・公示の制度が採用されていないが、電子商取引が頻繁に行われている今日では、販売者がオンラインショップで他人の画像を無断使用して権利侵害紛争が引き起こされていることも耳にする。そして、主務官庁の経済部知的財産局も引き続き画像の出所に留意して他人の著作権に対する侵害を避けるよう販売者に呼びかけているので、販売者は著作権保護に対する認識を持たなければならない。そのため、自分が作成したものでない画像・写真で商品販促をする場合、販売者は最低限の確認をしなければならず、その画像が合法的な許諾を受けたものである、又は合法的な出所から取得したものであると信用させるほどの証拠があってこそ、はじめて過失がないといえる。」

    上記の見解に基づいて、裁判所は下記のように判断した。被告は原告と同じくアパレル業者であるため、原告がその写真でアパレル商品のネット販売を行った事実を容易に知ることができるはずである。アパレル業者として、被告は、写真が許諾を受けたものか、合法的な出所があるかを確認しようとするほどのリスク意識を持つべきである。しかし、被告は、事前の確認義務を果たさず、写真が合法的な許諾を受けたものであることに関する証明も取得せずに、そのアパレル店舗の従業員が原告の写真を無断使用し、又は間違って使用したことに関する積極的証拠を一切提出していないので、著作権侵害に関し被告に過失があると認めるべきである。

    上記を受け、ネット販売を行う会社や個人事業主はこの判決から以下の教訓を得られるであろう。自分が作成したものでない画像(とりわけネットから拾った画像)を自分の販売サイト・販売ページに使用する場合、その画像が合法的な許諾を受けたものか、合法的な出所があるかを確認しておく必要がある。たとえ合法的にその画像を使用できることを確認したとしても、適切な方法でその確認の過程を記録するほうが望ましい。その場合、今後著作権侵害訴訟が提起されたとしても、画像を使用する前に既に適切な確認を行ったことを証明できる。それと同時に、著作権侵害を主張されないために、自分の販売サイト・販売ページに出所不明の画像があることに気付いた場合は、積極的にその画像を使用した経緯を調査すべきである。そして、合法的な許諾がないことが判明したときは、直ぐに使用を停止するほうが望ましく、「従業員が無断使用したのであって、会社(又は個人事業主)とは関係ない」と受け流すことは避けるべきであろう。

    一方、上記の裁判所の見解は、海外の製造会社や台湾における正規代理店にとって間違いなく朗報である。何故なら、台湾で並行輸入品を販売することは基本的に合法的だからである(即ち、商標法に違反しない)。この状況で、海外の製造会社や正規代理店が撮影した商品写真を無断使用した並行輸入業者に対し、民事訴訟・刑事告訴を提起することは、並行輸入業者の不正行為を抑制する手段の一つとなる。そして、上記の裁判所の見解により、海外の製造会社や正規代理店は、より容易に著作権侵害訴訟で権利を主張できるようになる。その反面、並行輸入業者が海外の製造会社や正規代理店の画像を無断使用したことで著作権侵害訴訟を提起された場合、自身が経験が浅くて規模が小さい業者であるため、画像に合法的な出所があるかどうかを確認する能力がないとして、過失がないと責任を逃れることが困難となるのであろう。

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