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商標の不法占有に関する最高裁判所の判決

    知的財産及び商事裁判所は先般の商標権侵害事件の判決で、商標の先使用権について、営業譲渡と共に営業譲渡を受けた者に移転されるが、本来の営業から切り離して単独で許諾できるものではないという見解を示した(2021年7月の記事を参照されたい)。

    だが、この事件は「侵害訴訟を起こした商標権者の商標が、実際には、他人の外国商標を不法占有したものであり、商標権者の商標を無効にできる期間が既に満了し、且つ不法占有された商標が有名なものでない場合、不法占有者が提起した商標権侵害訴訟においてどのように自己弁護すべきか」という難題をはらみ、先般の判決の内容よりも複雑な様相を呈している。台湾の最高裁判所は、今年6月の111年度台上字第16号判決で、公平交易法(公正取引法)と権利濫用の禁止によりこの難題を解決する道しるべを示した。

    この事件で、被告は2019年に、2004年より中国商標「AUTEL」を使用してきた中国の会社(A社)から、台湾で「AUTEL」商標のもとでA社製品を販売できるとの許諾を受けた。しかし、原告は、2013年に台湾で「AUTEL」商標(以下、本件商標という)の出願をし、2014年に商標権を取得していた(指定商品は基本的にA社製品と同じものである)。そして、被告が台湾でA社製品の販売を開始して間もなく、原告は民事訴訟を提起し、被告が商標権を侵害したとして被告に侵害差止めなどを請求した。だが、知的財産及び商事裁判所の調査によると、原告は2012年にA社の台湾代理店となってA社製品の販売に携わっていたため、当時原告は必ず当の「AUTEL」商標の存在を知っていた。これにより、知的財産及び商事裁判所は、原告の商標出願は悪意によるものであると判断した。

    通常の状況では、商標出願が悪意によるものと被告が証明した場合、商標の不法占拠に対応するための台湾商標法第30条第1項第12号の規定を引用して、その商標が無効にすべきものであると主張すれば容易に勝訴するはずである。しかし、この事件では商標法第30条第1項第12号の規定を適用することができなかった。何故なら、本件商標は登録されてから既に5年が経過しており、商標法第30条第1項第12号の規定により無効にできない状態であったためである。

    それだけでなく、知的財産及び商事裁判所の調査によると、2013年3月に本件商標の出願がなされる前にA社の「AUTEL」商標が台湾で広く使用されて著名商標になったという証拠はなかった。そのため、著名な未登録商標を保護するための商標法第30条第1項第11号を適用することもできなかった。こういった状況で、被告は新たな抗弁として善意による先使用を主張した。

    一方、別の事件で最高裁判所が下記の判決文で指摘したように、善意による先使用は被告が主張できる唯一の抗弁ではない。

被上告人(原告)は、自社の商品に用いるためでなく、A社の代理店になることを意図して、悪意により先に商標出願し、不正な方法で本件商標権を取得した。これは不正競争となるので、本件の商標権侵害差止訴訟を提起したのは、信義則の違反となる。これは上告人が事実審において再三に渡り主張したことであり、重要な防御方法でもあるが、原審はこれについて論じず、何故か採用しない理由も説明していないので、自ずと判決に理由不備という誤りがある。

    この事件は、知的財産及び商事裁判所に差し戻されている。

    台湾の公平交易法(公正取引法)第45条は、「著作権法、商標法、専利法その他の知的財産権法の規定により権利を行使する正当な行為は、この法律の規定を適用しない」と規定している。この規定によると、商標権の濫用は、例えば公平交易法第25条などに違反する可能性がある。公平交易法第25条は、「この法律において別途規定がある場合を除き、事業者はまた他の取引秩序に影響を及ぼすに足りる欺罔又は著しく公正を欠く行為をしてはならない」と規定している。

    仮に、原告の商標出願と商標権行使が確かに公平交易法に違反し、被告の利益を侵害したとすれば、知的財産及び商事裁判所は後続の裁判手続きにおいて、原告が被告に対して商標権を行使してはならないと認定するかもしれない。だが、原告の商標登録自身が排除されるべき権利侵害行為であると認定される結果には至らないであろう。

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