審査の品質及び一致性を向上し、商標識別力の判断基準をより市場取引の実態に合致させるため、台湾知的財産局は2022年7月26日に「商標識別力に関する審査基準」を改訂したが、同改訂内容がこの度、同年9月1日より適用されることとなった。今回の改訂内容は、主に各類型の商標の識別力にかかる審査原則の強化、及び各類型における参考となる適用事例の例示である。改訂のポイントは、以下のとおりである。
1 文字商標について
文字を商品又は役務の出所を指示・区別するための標識とする場合、識別力 の有無は、文字の意味及びそれと指定商品又は役務の間の関係により決まる。改訂後の審査基準第4.1項によれば、商品又は役務の普通名称、又はその品質、機能若しくはその他の特性等の直接かつ明らかな説明的文字は、仮に目新しいフォントで表したり、図形としてデザインを施すことで、商品又は役務自体の特性を表すのみであったり、普通名称である等の本来の意味を脱却した場合、識別力を有する。しかし、審査ではさらに、元の文字が商標権について疑義を生じないか否かについて判断し、ディスクレームの要否について審査すべきである。反対に、記述的商標の文字のデザインが、仮に色を足したり、簡単な装飾のある外枠若しくはラインを組み合わせ、又は外国語の文字の小文字と大文字のわずかな差異がある等のみであり、需要者に与える印象が元の文字の意味にとどまり、同業者の公平な使用を妨げる可能性のある場合、識別力を有しない。
許可事例
化粧品等の商品を指定する「
」商標…「ESSENTIA」はラテン語であり、必需品、基本的な、エッセンス等の意味があり、商品に関連する説明にあたるが、文字が葉と組み合わせて配列され、字体にデザインを施しているため、全体として単純な文字としての記述の意味を脱却しており、「ESSENTIA (ラテン語:エッセンス)」文字をディスクレームした後、登録を許可した。
2 外国語及びその組み合わせ
審査基準の第4.1.3項によれば、外国語の意味が仮に指定商品又は役務の普通名称又は関連する説明である場合、識別力を有しない。英語など、台湾人に比較的馴染みのある言語は、審査時に、商品又は役務の普通名称又は関連する説明であるか否かが比較的判断しやすい。一方、台湾人に馴染みのない言語は、たとえ審査時に商品又は役務の普通名称又は関連する説明であると発見されず、登録査定されたとしても、その外国語に前掲の不登録事由があれば、異議申立、無効審判を経て、商標登録が取り消される可能性がある。
拒絶事例
- 香水商品を指定する「Parfum」商標…フランス語で香水の意味があり、商品自体の普通名称であるため、識別力を有しない。
- コーヒー商品及びコーヒーショップ役務等を指定する「Kaffee」商標…ドイツ語でコーヒーの意味があり、商品自体の普通名称又は役務内容の関連する説明であるため、識別力を有しない。
今回改訂の審査基準では、第4.1.3項に以下のとおり新たな関連規定が追加された。
外国語に意味があるとしても、当該文字自体又は他の要素と組み合わせた後の文字が、指定商品又は役務において、業者間で慣用的に使用されるものではないか、又は不正確な語法の創作用語である場合、需要者にとって、商品又は役務に関連する説明ではないため、識別力を有する。このほか、2つの説明文字を合成して一つの文字とした場合に、識別力を有するか否かは、必ず形成された一つの文字の全体像をもって考察しなければならない。2つの文字が、合成され、記号により分割され、又は同じ文字を反復して形成された複合文字又は反復文字であり、本来の個別の文字の説明的意味を脱却しており、需要者に本来の商品又は役務の説明とは全く異なる印象を与え、その他の出所と区別するに足る場合、識別力を有する。
許可事例
- 表面加熱器及び投入ヒーター、貯液槽加熱器を指定する「BRISK HEAT」商標…「brisk」は心地よいという意味があり、「brisk heat」のように組み合わせた文字は、見る者に真新しい印象を与え、さらに同業者が商品の特性の説明に用いる必要も無いから、暗示的標識にあたり、識別力を有する。
- 電池、充電器商品を指定する「ZEROBURN」商標…「ZERO(零、全く無い)」と「BURN(燃焼、発熱)」を組み合わせてできた文字であるが、その組合せは見る者に真新しい印象を与えるため、暗示的標識にあたり、識別力を有する。
3 商品自体又は役務に関連する図形
審査基準の第4.4.3項によれば、商品自体の形状又はその重要な特徴の図形は、商品自体の説明にあたり、一般的に、たとえ長期にわたり使用したとしても、後天的識別力を取得することはないが、仮に特殊なデザインが施され、純粋な商品の説明機能から脱却し、出所を指示・区別する機能を有する場合は、識別力を有する。
今回の改定後の審査基準では、第4.4.3項に以下のとおり新たな規定が追加された。
商品自体の輪郭又は商品の原理・機能を描画した商品の説明図は、当該図形と商品自体又は提供される役務に関連する写実的な形状がそれほど異ならない場合は、需要者は通常、当該説明図を出所を指示・区別する標識であるとは認識しないため、識別力を有しない。ただし、抽象的概念を描画した説明図は、図形の描画デザインの与える印象が実物の外観に関する説明を脱却している場合は、識別力を有する。
拒絶事例
学生鞄を指定する「
」商標…商品自体の形状を表示する図形に過ぎず、商品の説明にあたるため、識別力を有しない。
許可事例
マイクロフォン、ラウドスピーカーを指定する「
」商標…商標のデザインと指定商品の実物の形状に顕著な差異があり、出所を指示・区別する標識とすることができるため、識別力を有する。
4 標語
改訂前は、高度な創作性のある標語(キャッチコピーやスローガン)を除いて、一般的に、出願人が標語を商標として出願する場合、証拠を挙げて当該標語が広範な使用により既に後天的識別力を取得していることを証明して、はじめて登録が可能であった。
修正後の審査基準第4.11.1項では、以下のとおり新たな規定が追加された。
「標語」は、簡潔で力強い訴求力があり、高度な創作性のある標語又は高度な識別力のある商標を含む標語は、その文字の組み合わせが真新しく又は深い印象を与え、第一印象としてこれを出所を区別するための標識とすることができる場合は、識別力を有する。審査では、標語全体に指定商品又は役務の直接的な説明の意味が無く、さらに、よく見られたり、流行の広告宣伝用語ではない場合、同業者の公平な競争に影響しない状況下では、その識別力は以下の要素をもとに判断する。
(1) 文字の組み合わせ全体が創作性を有するか又は暗示的商標にあたること。
(2) 文字の組み合わせが直接的に指定商品又は役務の品質、機能又はその他の特性の説明の意味を表すものではないこと。
(3) よく見られる広告用語及び同業者が必ず使用する文字の組み合わせではないこと。
(4) 出願人の商標の世界的な展開における実際の登録及び使用の状況。
許可事例
宝飾品、衣服商品を指定する「
」商標…商標は「open it.」と「Open it.Open Eat.」により構成されるが、不正確な語法及び韻を踏む英語フレーズがあり、簡潔かつ記憶に残りやすく、開けてすぐに食べられるという意味を暗に含んでおり、識別力を有する。
最後に
識別力は、商標の登録可能性、権利範囲及び執行において、重要な意味を有する。上記の事例は、改訂のポイントにおける適用事例の例示にすぎないが、仮に台湾における商標識別力の審査実務に興味がある場合、弊所まで連絡されたい。