他人の商標をハッシュタグで表示することが、商標の「使用」、または商標権侵害に該当するか否かについて、近年よく議題に上がっている。台湾の裁判所により、いくつかの判決が下されたが、商標権侵害をめぐっては見解が割れている。そのキーとなるのはやはり各案件における実際の使用態様により、需要者に混同誤認を生じさせるおそれがあるかどうか、並びに客観的に見て需要者に商標として認定させるかどうかで判断するようである。
この議題につき、知的財産及び商事裁判所(以下は、知財商事裁判所と称す)は、2021年民商訴字第18号判決を以て、ハッシュタグの使用を巡る商標権侵害及び不正競争について、参考に値する見解を示した。
原告X社は、ヨーロッパで製造された自転車及びその部品の代理販売を行い、ドイツ系のタイヤメーカーであるC社の台湾における総代理店であり、C社の”Lightweight”タイヤの独占販売権を持ち、台湾での”LW図”の商標権を獲得している(ドイツC社於は欧州連合知的財産庁で、LW図及び”Lightweight”を一つの商標として登録を受けている)。
X社の主張としては、Y社はフェイスブックでタイヤにLW図が表示された自転車の写真を使用し、投稿に「#lighweight」、「#lightweightwheels」などのハッシュタグを用いることにより、”Lightweight”のタイヤを販売代理しているように見せかけ、商標権侵害・不正競争に該当するというものであった。
一方、被告であるY社は、以下のように抗弁した。
あのフェイスブックでの投稿は、訴外人のA社の特別仕様車を販売するための広告であり、そのタイヤは正にC社の製造した”Lightweight”シリーズであるので、商品の品質・機能・特性を説明するために、ハッシュタグで表示したに過ぎない。さらに、これらのハッシュタグはあくまで一連のハッシュタグの中にあり、当該特別仕様車の部品のメーカー及び材質の紹介情報の中に織り込まれているので、需要者が取り立ててこの一部の表示によってミスリードされたりすることはなく、Y社がそのタイヤの代理販売権を有していると誤解することもないはずである。
これに対する知財商事裁判所の認定は、次の通りである。
フェイスブックの文面に基づいて被告Y社の投稿を追求したところ、内容は当該特別仕様車の各部品のメーカー及び規格を示すためのものであり、各部品(それぞれメーカーにより商標表示されている)の写真を掲載したのも、需要者側に当該自転車を十分に理解させるためである。そして、文脈からすると、宣伝広告の対象はあくまでも当該特別仕様車であるので、「#lightweight」のハッシュタグも、単にC社のタイヤを搭載してると、「自己の商品若しくは役務の名称、形状、品質、性質、特性、用途、産地又はその他の関連商品若しくは役務自体の説明を表示するもの」(台湾商標法36条1項1号)であり、これは単なる商品の説明であるために、他人の商標で出所表示するわけでもないので、商標としては使用していない。
また、裁判所は、「ハッシュタグというものは、ユーザーがこれにより、同じプラットフォームにおける同じキーワードでの投稿を瞬時に共有・閲覧できるものであり、これはSNSにおけるユーザーの間の常識とも言える。ハッシュタグを使用しても、客観的に需要者はそれを商標として認識するに足りるわけではないので、被告であるY社の本件におけるハッシュタグを使う行為は、商標としての使用に該当しないため、当然商標権侵害に当たらない。」と示した。
裁判所は、また下記の通り指摘した。
「#lighweight」、「#lightweightwheels」、…等の文字は、文章の最後に小さく記した一連のハッシュタグに中にあるので、ユーザーがフェイスブックで投稿を閲覧する際に、Y社が即ちドイツ系C社の台湾での総代理店であると誤認することはなく、現に実際に当該投稿にこのように匂わせるセンテンスもないので、台湾の公平交易法21条である「虚偽、不実であり又は錯誤を招く表示又は表徴をなす」ことには当たらない。
更に、原告であるX社が主張した、公平交易法25条である不正競争の包括条項にかかわる、「他人の努力成果を搾取」につき、もし他人の表徴を使用する行為自身が、自己の運営宣伝のために他人の商誉をフリーライドし、同じ出所若しくは何らかの関係性を有するように混同誤認させ、自己の商品または役務をアピールした場合は、当該条項に当たるが、本件につき、被告のY社の投稿はあくまでも特別仕様車の販売にあり、文面を確認してみたところ、Y社がドイツ系のC社の代理店であるとする内容も記載されていないため、公平交易法25条に違反していないと判示した。
この判決で分かる通り、知財商事裁判所は、ハッシュタグの使用目的について、同じプラットフォームにおける同じキーワードでの投稿を瞬時に共有・閲覧できるものであり、それはSNSの使用者にも分かることなので、使用行為及び具体的な文面からするとあくまでも説明的であり、需要者に混同誤認させることがなく、他人の商誉をフリーライドすることもなかった場合、他人の商標の文字を表示することだけで、直ちに商標の「使用」として認定することはしない。
この見解が、今後の主流見解になるかどうか、引き続き見守っていく必要がある。