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税関が模倣品の買主に課する過料

    台湾の税関に押収された輸入品が模倣品である場合、知的財産権の侵害が生じることとなり、侵害が商標権、又は著作権に係った場合、刑事訴訟に発展する可能性もある。これに関し、台湾の「税関密輸取締条例」(中国語:海関緝私条例)の第39条の1は、下記のように規定している。

「申告された輸出入貨物が並行輸入された真正品ではく、専利権、商標権、著作権を侵害した場合、貨物の値段の三倍以下の過料を課する他、その貨物を没入する。ただし、他の法律に特段の定めがある場合、その定めに従う。」

    税関と裁判所がともに採用してきた見解によると、上記の規定における違法行為の主体は、荷受人、荷渡指図書の所持人、又は貨物の所持者とされる。一方、商標法、又は著作権法における刑事責任の成立に必要とされる侵害の意図、故意の有無を問わず、これらの主体に過失があれば、当局は、上記の「税関密輸取締条例」の規定により過料を課することができる。

    この場合、過失で台湾に輸入された模倣品を注文した者には、刑事責任がないものの、「税関密輸取締条例」の第39条の1により過料を課されることもあり得る。ここで問うべきは、「税関密輸取締条例」の規定に照らして、自分が購入しようとする物が模倣品であるかどうかについて、買主はどの程度の確認義務を負うべきか、そして、注文した物が輸入品であることを知らない場合どうなるか、ということである。

    これについて、台湾の知的財産裁判所の行政法廷は、その2020年の「109年度行他訴字第1号判決」(以下、当判決と称する)で、自分が注文した物が輸入品であることを知らない者は「税関密輸取締条例」の第39条の1の責任を負わないとしている。

    この事件の発端は、台北税関による定期的な貨物検査にあった。税関は、中国より輸入された貨物から、誤って靴下と申告された15箱のフェイスパックを発見した。フェイスパックの包装に表示された商標の商標権者に確認したところ、そのフェイスパックが模倣品であることが判明したので、税関はフェイスパックを押収した。そして、フェイスパックを台湾に輸送した輸送会社、及びフェイスパックの買主(以下、買主と称する)に送ろうとする宅配会社が作成した書類によれば、買主はある小さな店舗の所有者であった。また、買主は、警察が自分のドアを叩くまで、そのフェイスパックが輸入品であったり模倣品であったりすることを知らなかったと述べた。

    しかし、税関の見解は、ネットショッピングをする者は、商品の出所と合法性について注意義務を負わなければならないというものであった。買主は最初、フェイスパックが輸入品であることを知らなかったという弁解でこの事件を調査した地方検察署から不起訴処分を得て刑事責任を免れたが、税関は後ほど、買主が注意義務を払っていないとし、「税関密輸取締条例」の第39条の1によりフェイスパックを没収し、買主に過料を課したため、買主は行政法上の責任を免れなかった。

    しかし、知的財産裁判所は下記の理由に基づき、税関の決定を覆した。

  • フェイスパックの売主はあるネットショップの出品者であり、買主と取引を行った際、その身分を一度も開示していない。売主の言動から、フェイスパックが元々台湾以外の国に所在していたことは読み取れない。
     
  • 売主は、販売用のウェブページでしか自らの存在を示していないのみならず、そのウェブページで非常に低い価格でフェイスパックを販売し、「台湾であれば大量に出荷することができる・・・所在地:台湾―桃園、新竹、苗栗・・・中国に郵送することができる・・」というような曖昧な文言をそのウェブサイトに記載していた。
     
  • 売主は、「.tw」で締めくくるメールアドレス、及びLINE(台湾では人気であるが、中国では使用不能である)とWeChatのアカウントで売主に連絡することを取引相手に推奨していた。
  • 以前買主が同一の売主からフェイスパックを購入した際、買主は台湾国内の宅配会社からフェイスパックを受領した。そのフェイスパックの包装又は箱には、輸入品であることを認識させる情報が皆無であるのみならず、このような開示を要請する法令もない。

    その模倣品の輸入は、台湾と中国を跨ぐ犯罪集団の所業であるかもしれないが、裁判所は、上記の理由に基づいて、買主が自分と取引をした相手が北台湾に所在する業者と信じるに足る正当な理由があると判断した。以下は、当判決から抜粋した裁判所の論理の要点である。

被告(税関)の主張は、われわれの日常生活の経験則と遥かにかけ離れている。例えば、消費者がわが国における実店舗で買い物しようとするときに、その店舗に現物がなく他所から調達する必要があり、調達された物を直接消費者に送ると伝えられた場合、消費者はただ宛先の氏名と住所を書くだけで後ほど商品を取得することができる。この場合、その商品が国外から送られてくるのか、それとも国内から送られてくるのかを気にする必要はない。もし消費者がこの場合もある種の注意義務を果たさなければならないのであれば、商品が国外から輸入されて税関密輸取締条例の違反行為となる可能性があることを意識し、「この商品が国外から私に送られるか」を売り手に確認してはじめて、過失がないことを認定できることとなる。しかし、これは明らかにわれわれの日常生活における消費の経験とかけ離れている。本題をこの事件に戻すと、インターネットで商品を注文する場合、原告は確かに商品の出所がどこかに注意を払わなければならない。しかし、本件のネットショップのウェブページには、商品の所在が台湾の桃園、新竹、苗栗であると記載されているほか、売り手はヤフー台湾のメールアドレス(中国人は中国でヤフー台湾のメールアドレスを使用することができない)を使っており、「中国に出荷することができる」という文言もはっきりと表示されているので、これらの情報からすれば、原告にしてその注文した商品が台湾から出荷されるという信用を生じさせても無理はない。この場合、商品が国外から輸入されるものでないことを確認する義務を原告に課すことは、厳格すぎると言えるほか、われわれの日常生活の経験則と合致しないので、認めるべきではない。被告の見解を採用すれば、今後消費者がネットショッピングをして郵送の方式で商品を受領した場合、誰でも税関密輸取締条例に違反する可能性があるので、道理に合わない。

    本件は、模倣品を取り締まる当局が直面している困難、とりわけどのように模倣品の密輸ルートを遮断できるかを具現化する点では、面白いと思われる。本件が示すとおり、模倣品の密輸に係る犯罪組織は自分の正体と商品の出所を隠し、自由貿易の下で、国境を跨ぐ貨物を追跡することの困難さを巧みに利用する。これは、自由貿易と模倣品に対するより強力な取締りの両立の難しさというジレンマを物語っている。

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