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非侵害保証条項についての新たな判例

    今日、非侵害保証条項はビジネス契約においてよく見られる条項である。また、付帯として紛争解決条項(製品につき、第三者との間で知的財産権侵害を理由とする紛争が生じた場合、売主が協力して解決すること)もよく盛り込まれている。当該条項の法律効果が如何なるものか、参考すべき判例として、近日台湾の知的財産裁判所が詳しい判断を下した。

    当該事案において、香港企業X社は、買主である台湾企業Y社にチップ(以下は係争製品という)を販売したことで110万米ドルの売買代金を請求するために訴訟を提起した。Y社は、係争製品が米国特許を侵害するとして現地で第三者から権利侵害訴訟を起こされ、Y社は現地の弁護士を依頼する費用が112万米ドルであるので、それを代金と相殺すべきであると主張した。

    Y社は、X社と売買契約を締結した際に、X社に「知的財産保証レター」にサインをしてもらったことを理由としていた。その保証レターには、一、「Xは、係争製品が、デザイン、工程、製造または使用において、いずれの第三者の知的財産権を侵害・剽窃しないことを保証する…」。二、「Xが上記の声明を守らない場合により生じたまたは関連する主張(assert claims)、訴訟、差止命令(injunction)、催告(demand)、訴訟行為、費用、損失または損害は…Yが蒙らないようにXは防御、賠償または確実に保証する…」と記載されていた。

    実際、Y社は権利侵害を訴えられた際にX社に連絡を入れて協力するよう要請したがX社は断っていた。そこでY社は、X社が上記の条項に違反するとして、米国で特許権侵害紛争に要した弁護士報酬をY社が負担すべきであると主張した。当該訴訟は結局和解で片づけられたため最終的に特許権との抵触の有無についての判断はなく、自社の製品が権利侵害をしていない以上、保証レターにある義務を負うこともないとX社は抗弁した。

    一審である新北地方裁判所は下記のように判示した。

    確かに上記の非侵害保証条項は、損害賠償の前提が第三者の知的財産権を確かに侵害した場合か、若しくは第三者より権利主張されたら直ちにX社が責任を負うのかが不明確であるが、権利侵害訴訟が和解で解決し、結局権利侵害の有無の確認が取れなかったものの、X社がY社からの通知を受けた以上、保証レターに規定された訴訟における協力義務があるので、それに違反している。

    そして、Y社の弁護士費用について賠償責任を負うべきであるとした。

    二審である知的財産裁判所もまた第三者の特許との抵触の有無について判断しなかった。非侵害保証条項が不明確だからこそよく考察する必要があると、裁判官はまず当該契約を考察した。台湾において、契約条項の意味が不明瞭である場合、実務の通説では、当事者の契約締結に当たる真意をよりどころとし、内容の文言に拘泥せず、その真意を探求すべきであるとされている。また、両方当事者の取引上の地位が明らかにかけ離れているかどうか等の要因も合わせて総合的に判断する。実際に考察してみると、差止命令等の訴訟前或いは確定判決ではない事項も含まれているため、本件においてX社の義務発生の時点はY社が訴えられる際とすべきであり、X社はY社のために防御し、損失を被らせない義務がある。

    なお、裁判所は以下についても判示した。

    知的財産権関係の訴訟争議は複雑であるため、司法機関も相当な時間及び労力をかけて初めて終局判決が下すことができるが、ある製品がその知的財産権を侵害すると第三者が主張した時点から、一連の法的なアクション、例えば弁護士書簡の送付、差止命令の申し立て、権利侵害訴訟の提起等がなされ、これらの行動は、被疑侵害者の取引活動や法的な地位に対して直ちに影響を及ぼすので、Y社はすぐに必要な応酬や答弁をしなければならなかった。係争製品は、X社が生産したので、その技術内容を一番よく理解しているはずであり、協力をすべきであったにもかかわらず、実際X社は技術上の協力や答弁を一切しなかった。もしその義務が、確定判決後初めて派生するのであれば、明らかに当初Y社がX社に保証レターを出してもらった目的に悖る。したがって、保証レターの一項にあるフレーズは、その製品が確かに他人の知的財産権を“侵害した”必要があると解さず、その知財権侵害に係る場合においても、X社はY社のために防御を手助けする義務が付けられていると解すべきである。百歩譲って、たとえX社が保証レター担保義務に違反していないとしても、当該売買契約の付随義務に違反し、債務不履行に該当し、信義誠実の原則にも背いている。

    上記により裁判所は、Y社が訴訟で費やした金額は全額相殺できると判示した。

    日本知財高等裁判所平成27年(2015)(ネ)10069号判決も、非侵害保証条項の効力に対し判断を下した。その事案において、知財高裁は、売主が提供した製品について、第三者の特許権との抵触の有無を斟酌し、権利を侵害しないと判断したことから、売主は非侵害保証条項に違反しないと認定した。一方、本件の台湾裁判所は、実際の侵害を必要としないとしている。そのポイントはもしかすると、日本の事案では売主が転売業者でしかなかったのと異なり、本件では売主が直接の生産者であったことにあるのかもしれない。台湾の事案において、X社は係争製品の生産者であり、Y社も技術内容が分からないことからメーカーに保証レターを出してもらったとはっきり供述した。訴訟を起こされた際に、Y社はX社に説明及び協力を要請したにもかかわらず、X社は一貫して断り、権利に抵触しないという説明を出すことも拒否した。そのためY社は独自で現地の弁護士に依頼して戦うことになってしまった。これらのことも、裁判所の考慮に入れられたため、たとえ保証レターに違反していないとしても契約の付随義務と信義則に違反したと判示したのかもしれない。もし異なる経緯であれば、裁判所の判断もまた異なるかもしれない。

    敗訴したX社が上告したかどうか、現時点では不明であるが、「非侵害保証条項」の今後の実務進展はまさに引き続き注目すべきである。

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