台湾では、専利権と商標権の国際消尽の原則が認められている。この為、非正規ルートから市場に流入した製品、具体的に言えば並行輸入品は、変質・損傷が発生するおそれがある場合はさておき、基本的に専利権違反又は商標法違反とならない。しかし、権利者は他の法的根拠に基づいて、並行輸入業者に対し権利を行使することが可能である。
模倣品のラベルに誤記が頻出することと同じように、商標権者又はその正規代理店が著作権を所有するオンラインの商品写真を、並行輸入業者が無断使用することもよく見られる。このような無断使用が起こった際、著作権の行使は、並行輸入品の販売を抑止し、又は遅延させる有効な手段(ときに唯一の合法的な手段)になり得る。それには、下記の理由がある。
先ず、台湾では、著作権の侵害に刑事責任が生じるため、権利者は刑事告訴の提起(又は取り下げ)を交渉の武器とすることができる。また、他の多くの国と同じように、著作物がその著作者自らが創作したものであり、かつ最低限の創意のひらめき(minimal creative spark)がある場合、その著作物のオリジナリティが認められるため、人間が撮影した写真のほとんどが著作権の保護対象となれる。
さらによいことに、デジタルカメラの普及に対応すべく、台湾の知的財産裁判所に、写真著作物のオリジナリティ、創作性の有無を認定する際の基準を下げる向きがある。このような発展は、並行輸入業者に法的措置を取る権利者に有利となる。
例えば、当裁判所は、2019年11月29日に下したある判決(108年度民著訴字第98号。以下、当判決と称する)で、かなり限られた写真技術しか施されていない原告の写真が著作権の保護対象となり、且つその写真を無断使用した並行輸入業者(被告)が著作権侵害の責任を負わなければならないと認定した。

原告が自社のウェブサイトに掲載した、商標付きの写真
(出典:知的財産裁判所の判決)
当判決の内容によると、原告は写真の著作権を所有し、オーストラリアの健康食品業者であるネイチャーライフ社の台湾代理店である。一方、被告は長年にわたってオーストラリアに在住する購入代行者である。
購入代行者とは、例えば、自国若しくは第三国で入手できない、又は関税が課されて高額となる商品を、自国又は第三国にいる友人若しくはクライアントのために旅行し、多くの場合は免税店などで買い物を行う個人を指す。
そもそも購入代行サービスは昔から存在していたものであるが、この十年間のオンラインショップの飛躍的な発展で、購入代行者と購入者のつながりが広がり、購入代行者の数が爆発的に増えている。そして、購入代行者から小規模の並行輸入業者や再販売業者に移行した者も数多いる。被告は、SHOPEE(本社がシンガポールに置かれる、中国語圏の人々に多用されている電子商取引プラットフォームで、“蝦皮”とも称される。)を通してプロポリスを販売していた。
下図のとおり、原告の写真は被告のSHOPEEにおける販売ページに複製表示されていた。これは明白な著作権侵害に見えるが、そもそもこの写真は著作権で保護されるものであろうか。

被告のSHOPEEにおける販売ページのスクリーンショット
(出典:知的財産裁判所の判決)
これについて、知的財産裁判所は下記の見解を示した。
|
科学技術の進展に伴い、スマートフォンにさえも利用者のニーズに応じる各種の撮影モードが搭載されている。従って、写真著作物に「創作性」があるかどうかを評価する際、従来のように写真を撮った者が「絞り、被写界深度、光の量、シャッタースピード」等の撮影テクニックによる調整をなしたかどうかで判断すべきではない。写真を撮った者が、撮影時に思い浮かんだオリジナリティにより、撮影の途中で、撮影のテーマ、撮影の対象、撮影の角度、構図等に対し取捨・調整し、客観的に創作者の思想・感情を表現できさえすれば、著作権の保護を付与すべきである。
係争写真は、係争商品に対する静物撮影を行ったものであり、係争商品の包装箱と内容物が並べられ、包装箱が若干斜めに配置され、内容物が正面に向くように配置されている。また、背景消し、商標付け等の加工が行われており、その表現方法は、著作権法が求める最低限の創作性基準に合致すると認めるべきである。
|
実際、過去の4年間に、知的財産裁判所と幾つかの地方裁判所は、写真が著作権の保護の対象となるかを判断するに当たり、シャッタースピード(shutter speed)、絞り(aperture)、光の量(intensity of light)、被写界深度(depth of field)等(合わせてSAIDと略称される)のテクニックよりも、今日のデジタル撮影の普及に更に対応できるような撮影者の技量がそれほど必要とされない判断基準を採用してきた。このような見解を採用した判決は凡そ10件あるが、それでも当判決が特別であるといえる。何故なら、筆者の知る限り、紛争の対象が写真であり、且つその写真が判決とともに裁判所のウェブサイトに公開されたのは、本件が最初である。一方、このような新たな見解が今後台湾最高裁に採用されるかどうかは不明である。この記事で紹介したとおり、最高裁は、以前、著作権に係る重要な判決で、創作性認定の下限がどこにあるかを判断する際、上記のSAID要素を考慮しているからである。