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専利が無効化された後でも雇用者の報酬支給義務は免除されない

台湾の専利法第7条によると、被雇用者が職務において完成した発明、考案又は意匠について、雇用者と被雇用者の間に特段の約定がなければ、その専利を出願する権利及び専利権は雇用者に帰属し、雇用者は被雇用者に適切な報酬を与えなければならない。この規定に関する実務上の動向について、当サイトの他の記事で紹介している。

しかし、専利性が欠如するため(例えば無効審判において)その専利が無効化された場合はどうであろう。この場合、未だ専利法第7条により報酬を支給する義務を果たしていない雇用者はその支給義務から解放されることとなるのか。この論題について、台湾の知的財産裁判所は、2019年12月のある民事訴訟の二審判決(108年度民専上字16号判決)を通して否定的な見解を示した。

この訴訟の原告は、被告(某会社)の元従業員である。原告の主張によると、被告に就職している期間に、(単独で又は他の発明者とともに)被告のために電子商取引に用いられる認証システムを開発したにもかかわらず、被告は、原告を発明者とせずにその認証システムの専利を出願した。これに対し、被告は、訴訟の争点の一つとして、その専利は第三者により提起された無効審判において無効にされ、且つその法的効果は遡及的無効と見做されるべきであるため、専利法第7条の支給義務を負わないと主張した。

しかし、被告の主張に対し、裁判所は下記のように指摘した。

雇用とは、労働そのものを提供することを目的とする契約である。契約の当事者の義務について、被雇用者側は、雇用者に対し一定の労働を提供することに止まり、労働を提供する目的が何かを問わない。雇用者側は、被雇用者が一定の労働を提供した後、報酬を支給すべきである。たとえ被用者が提供した労働が予期した結果を生じさせなくても、報酬を支給する義務を免れることができない。

・・・専利法第7条第1項の文言を読むと、雇用者の支給義務の発生は、問題の焦点となる専利が無効にされていないケースに限らないことがわかる。なお、雇用者の支給義務は専利を取得する前に既に発生し、その後無効にされたか否かの影響は受けない。さもなければ、被雇用者の報酬請求権は、その努力又は貢献を問わず、個別の専利の存続期間の長短で不安定な状態に置かれてしまい、専利法の趣旨に合致するとはいいがたい。

上記の見解に基づき、裁判所は、被雇用者が雇用者に一定の労働を提供した後、雇用者は自ずと報酬を支給すべきであり、たとえ被雇用者が提供した労働が予期した結果を生じさせなくても、雇用者は報酬を支給する義務を免れることができないとした。

もう一つ注意を払うべき点は、この訴訟の両当事者はいずれも、被告がどれぐらいの金額を支給すべきか、そして、その金額が適切であるかについて明確に主張していない。このような展開は、もともと原告に不利であるはずであった。なぜなら、原告がどれぐらいの金額が適切となるかについて立証責任を尽くさないことで、敗訴に導かれた裁判例があるためである(当サイトの他の記事をご参照ください)。

しかし、この訴訟では、一審裁判所も二審裁判所も多少原告の立証責任を軽減した。台湾の民事訴訟法第222条第2項は、「当事者が既に損害を受けたことを証明したにもかかわらずその金額を証明できず、又は証明に重大な困難がある場合、裁判所は一切の情状を斟酌し、その得た心証によりその金額を定めなければならない」と規定している。裁判所は、この民事訴訟法第222条第2項を引用することで、自ら進んで被告が原告に20万台湾ドルの報酬(原告が被告に就職していた頃の月給の5倍に相当)を支給すべきであると判断した。ちなみに、訴訟の対象となった専利は、他の専利の出願から分割出願されたものであり、この二つの専利は、いずれも最終的に知的財産局により無効化されたほか、裁判所も原告がそれらの専利の共同発明者であると認定した。これらの事実は、多少原告の主張を弱めながらも、裁判所が前記の金額を定めた際の判断要素ともなった。

ちなみに、判決によると、被告が原告を雇用した当時、当事者間には発明の報酬に関する約定が存在していなかった。さらに、この紛争が発生する前に、被告は、職務発明の専利性、又はその経済上の価値に係る社内規則を規定していなかったようである。

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