1996年に公布・施行された台湾の「営業秘密法」には、2013年の法改正で営業秘密を侵害する際の刑事責任に関する規定が新設された。最近の動向として、2018年に立法院に提出された改正草案は2019年12月31日に可決された。
そして、今回の改正には二つの重要なポイントがあり、即ち国外にいる営業秘密の持ち主に対する保護の拡大、及び「刑事捜査内容秘密保持命令」(中国語名:刑事偵査内容保密令)の制度の新設である。
- 国外にいる営業秘密の持ち主に対する保護の拡大
(1) 改正後の規定によると、法人が台湾に設立されるものでなくても、訴訟の主体となることができ、即ち、民事訴訟、刑事告訴、又は自訴(犯罪被害者等が検察官の代わりに自ら原告として刑事訴訟を提起する制度。日本にはない。)を提起することが可能となる。
(2) 現行法の互恵主義の緩和
営業秘密法の第15条は互恵主義の規定であり、改正前は、「外国人の属する国と中華民国に営業秘密を保護する相互の条約若しくは協定がない場合、又はその国の法令により中華民国国民の営業秘密が保護されない場合、その営業秘密を保護しないことができる。」としていたが、複数国間条約がある場合はどのように対応するかは明文で規定されていなかった。したがって、改正後の第15条は、上記の規定は「外国人の属する国と中華民国がともに営業秘密を保護する国際条約に加盟しない場合、営業秘密を保護する相互の条約若しくは協定がない場合、又は中華民国国民の営業秘密が保護されない場合、その営業秘密を保護しないことができる。」としている。
- 「刑事捜査内容秘密保持命令」の新設
営業秘密侵害案件を取り調べる際、検察官は高度な技術に触れると同時に、被害者の営業秘密に対する保護に注意を払わなければならない。このため、「刑事捜査内容秘密保持命令」の新設により、検察官に迅速かつ円滑に取り調べを行わせるとともに営業秘密に対する保護を強化することを企図している。改正の主な内容は下記のとおりである。
(1) 検察官が営業秘密侵害事件に対する捜査のため、必要とする場合、その職権により刑事捜査内容秘密保持命令を下すことができる。
(2) 捜査の内容を容疑者、被告、被害者、告訴人、代理人、弁護人、鑑定人、証人、その他の関係者に提示しなければならない。
(3) 刑事捜査内容秘密保持命令を受けた者は、捜査の内容について下記の行為を行ってはならない。
■ 捜査手続以外の目的に使用すること
■ 刑事捜査内容秘密保持命令を受けていない者に開示すること
但し、刑事捜査内容秘密保持命令を受けた者が捜査前にその捜査の内容を取得、所持した場合、これを適用しない。

(4) 下記の事情のいずれかがある場合、検察官はその職権又は刑事捜査内容秘密保持命令を受けた者の申立により、その刑事捜査内容秘密保持命令を停止・変更することができる。
■ 秘密を保持すべき原因が消滅した場合
■ 裁判所が秘密保持命令を下した場合
■ 事件が起訴に至り、裁判所に係属した日から60日が経った場合
検察官が前記の停止・変更の処分を行う場合、刑事捜査内容秘密保持命令を受けた者又はその利害関係者に意見を陳述する機会を与えることができる。なお、刑事捜査内容秘密保持命令を受けた者又はその利害関係者は、検察官の停止・変更処分に不服を申し立てることができ、その手続きには刑事訴訟法を準用する。
(5) 刑事捜査内容秘密保持命令に違反した場合の刑事責任
刑事捜査内容秘密保持命令に違反した場合、3年以下の有期懲役、拘留に処し、若しくは100万台湾ドル以下の罰金を科し、又は併科する。台湾国外で刑事捜査内容秘密保持命令に違反した場合、犯罪地の法律に規定があるか否かを問わず、この規定を適用する。