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敗訴側に弁護士費用を肩代わりさせることができるかどうか

    台湾の民事訴訟法78条により、訴訟費用は敗訴側が負担することとなっている。いわゆる訴訟費用とは、一般的に言うと訴訟のための「必要費用」に当たり、例えば裁判所の手数料、証人の旅費日当、鑑定費用等が含まれており、これは敗訴側に負担させることができる。

    「弁護士費用」の場合、敗訴側に肩代わりさせることができるかどうかは、当事者の関心事でもある。日本の場合は、現時点でアメリカ流の敗訴者負担制度を導入していないが、「日本最高裁判所昭和44年(オ)第280号同44年11月25日第三小法廷」判決により、「不法行為」の場合は例外としてある程度の請求が可能である。台湾の場合は、主流の実務見解の固着観念として、原則的に事実審(一審及び控訴審)の弁護士費用は、必要費用や訴訟費用として見なされていないために、敗訴側が負担することはめったに容認されない。但し、民事事件の上告審(法律審)は弁護士に依頼することを義務付けられるので、上告審の弁護士費用は例外的に訴訟費用とされるが、訴訟目的物の価額3%以下で最高は台湾ドル50万元を超えてはならず、案件の内容、訴訟の結果を参酌して、裁判所が敗訴側の負担額を算出することになっている。

    しかしながら、一部の専利権関係事件等は複雑であるため、弁護士費用も高騰しており、極めて僅少であるが、一部の実務見解も少し違う動きを見せている。2013年に、ある実用新案権侵害事件控訴審判決において、原告の弁護士費用の一部を損害賠償金として被告に負担させることが認められた。さらに、2017年のある特許権侵害事件の判決でも、知的財産侵害訴訟の専門性を考慮し、勝訴側の合理的範囲内の弁護士費用は、敗訴側が負担すべきであると判示した1

    近日、台湾最高裁判所は、107年度台上字第1837号判決で、この議題についてその見解を判示した。当該案件は、交通事故による不法行為に基づく損害賠償請求事件であり、被害者である原告はその事故により脳に損傷を受けてしまったので、自ら開廷期日に出頭できず、事実審では弁護士に依頼し、その弁護士費用を損害賠償額に含めて請求した。最高裁判所は、以下の見解を判示した。

    台湾の民事訴訟法において、確かに事実審では弁護士強制主義こそ採用していないが、もし当事者がどうしても自ら開廷に臨むことができず、代理人を委任しなければならない場合、当事者の支払った弁護士費用は、権利主張及び防御のために必要であると認められる場合、必要な限度において相手側に負担させることができないものでもない。本件の場合、原審ではすでに被害者の脳損傷で、成年被後見人となった事実が確認されているため、もし被害者とその後見人が自ら訴訟行為を為すことができず、弁護士に依頼しなければならなかった場合は、権利主張及び防御のための必要な範囲内で、敗訴側に請求することができる。したがって、最高裁は本件を差し戻した。

    つまるところ、事実審において弁護士費用を敗訴側に肩代わりさせることができるかどうかについて、通説はやはり否定説を採用しているが、決して一枚岩ではなく、少し変化の動きを見せつつあるので、これについて注視する必要がある。


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知的財産裁判所105年度民専訴字第71号判決について、下記のリンクを参照ください。http://www.saint-island.com.tw/JP/Knowledge/Knowledge_Info.aspx?IT=Know_1_4&CID=257&ID=579

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