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作為や不作為を命ずることは、仮執行の対象となるか

    仮執行宣言を付与するにあたり、台湾法においては、裁判所が職権を持って発すること(給付を命じる金額が台湾ドル50万元を超えない場合等)、または、財産権上の請求権により当事者の申立て及び担保を立てる場合もある。後者の場合、裁判所は、相応な担保額を定め、仮執行宣言を発すべきである。

    財産権上の請求権事件で、作為又は不作為を請求の趣旨とする訴訟目的物の場合に、原告が事實審で勝ち取る際に、仮執行を付することができるかどうかについては、台湾実務上において肯定説も否定説もある。

    地方裁判所の判例では、肯定説を採用したものとして、例えば、建物の明渡し事件で、裁判所が建物の資産価値を参考にして担保額を定め、建物の明渡しを仮執行に付することができると判示したものがある[1]。一方、否定説を採用した見解もある。台湾強制執行法には、意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決が確定したとき、債務者は、その確定の時に意思表示をしたものとみなす旨の規定があるため、もし作為の意思表示を仮執行に付する場合は、意思表示の効力を判決確定前に前倒ししてしまうとのことで、法文の規定と齟齬があるため、仮執行宣言を付与することはできないという理由である[2]

    知的財産裁判所の判例を見ると、作為や不作為を命ずることに対して仮執行宣言を付することは極めて珍しい。しかしながら近年、権利侵害事件において、侵害を認めた後に、不行為の請求について仮執行宣告を付与することが数件ある。例えば、去年、知的財産裁判所において審理が行われた商標権権利侵害の民事事件の第一審(107年度民商訴字第 19 号)において、X商標の商標権者であるH社は、侵害する側であるD社等に対し、商標権侵害の訴えを提起し、被告であるD社等に、同一又は類似の商品又は役務に、X商標と同一または類似の商標を使用してはならないと請求した。更に、担保を立てて仮執行を付与するように申し立てもした。ちなみに当該事件において、原告である商標権者は、損害賠償を請求していなかった。知的財産裁判所の一審は、権利侵害に理由があると認めた後、当該不行為の請求に対し、仮執行を認め、判決の主文において、担保金を定め、仮執行宣告を付与した(被告も同額の担保で仮執行免脱宣言とも付与した)。

    本件は、知的財産裁判所の二審に控訴された後、近日判決が下された(107年度民商上字第19号判決)。商標権侵害の判断は変わらないが、仮執行宣言について、二審の裁判官は、当該宣言は侵害差し止めを命じることであり、即ちD社等に決まった行為を命じるため、当該仮執行の申し立てを認めた場合は本執行と変わらないこととなる。而して判決が確定していない段階において、このような効果を付与するのは適切ではないと判示した。そして、二審は当該仮執行宣告を破棄した。

    目下、知的財産裁判所の不行為の請求を命じる判決において、仮執行宣告を付する案件は、前記の判決のほか、民事一審・二審のいずれの事件もある。例えば107年民専訴11号、107年度民専訴字第10号判決、107年度民営上字第5号判決…等、その件数はさほど多くないが、特定の裁判官の数名は肯定説を採用していることがわかる。今年の八月に言い渡しされた、106年民専訴字第34号という注目されている意匠権権利侵害事件の一審において、権利侵害が認められ、更に当該意匠を実施することができないという仮執行宣告が付与された。なお、裁判官により定めされた、原告及び被告の担保額はそれぞれ台湾ドル3000万元、6000万元もある(当該仮執行宣告が当該業界の市場シェアーに深くかかわり、その影響もまた小さくないためである)。

    作為・不作為を命ずることが、仮執行の対象となるか否かについて、現時点では知的財産裁判所の裁判官の間でまだ見解が割れており、各担当裁判官が事件ごとに判断していくことになる。今後もまた見守っていかなければならないであろう。


[1] 台湾新北地方法院94年度訴字第557号判決
[2] 台湾嘉義地方法院101年度重訴字第8号判決

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