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台湾におけるデッドコピーからの保護

    台湾公平交易法(以下は、公平法と称す)の趣旨は、「公正な競争」を確保することにある。その立法過程では、日本の「独占禁止法」と「不正競争防止法」(以下は、不競法と称す)にある不正競争の態様も参考にして制定されている。1991年当時の公平法の草創期において、不正競争の態様に関する規定がまだ不十分であるおそれがあったため、包括条項である第24条(今日の第25条)が制定された。要は、「この法律において別途規定がある場合を除き、事業者はまた他の取引秩序に影響を及ぼすに足りる欺罔又は著しく公正を欠く行為をしてはならない」というものである。

    日本の不競法にある「デッドコピー」の規定に照らし合わせて、台湾の公平法に「著名的」な商品の形態を保護するという規定こそ明記されているが、非著名的な商品の形態の保護については明文規定がない。そのため、台湾の実務において、上記の包括条項を以って、非著名的な商品の形態に対応するのが一般的である。実際、公平法の主務官庁である台湾「公平交易委員会」(以下は、「公平会」と称す)が制定した「公平交易委員會對於公平交易法第24条案件之処理原則」(日本語「公平交易委員会の公平交易法第24条に対する取締要綱」。今日は第25条に変更されている。以下は、「処理原則」と称す)において、数々の取り締まる態様が明確且つ具体的に挙げられていた。その中に、「著しく公正を欠く行為」について、「デッドコピー」も例として挙げられていた。その判断要素は、類似の度合、行為者が当該行為により競争優位を創出したかどうか、または模倣の対象となった他人の商品の独特性及び市場シェアなどである。しかし、2017年1月に改正された新たな「処理原則」において、上記の「デッドコピー」に関する規定が削除されている。この場合、非著名的な商品の形態にまつわるデッドコピーの問題について、いかに対応するのか。また、「処理原則」から削除されても、やはり公平法を以って請求できるのか。これに対し、「処理原則」にある規定が外された今日、公平会は、「デッドコピー」の対応はもっぱら民事裁判所の判断に委ねるという意向を示した。2019年、台湾最高裁判所(以下は、「最高裁」と称す)は、これについての判断基準をようやく明確に示した。それは最高裁107年度台上字第1967号民事判決である。後に今年の7月,知的財産裁判所は、108年度民著上更(一)字第2号判決において、直ちに最高裁の判断基準を判決に取り入れた。これらの判決は、将来の、非著名的な商品の形態に纏わる「デッドコピー」の議題において、かなり参考になるといえる。

    最高裁は、(商品の形態の模倣により)公平法に違反するか否かに対し、その行為が、条文自体の構成要件である「取引秩序に影響を及ぼすに足りる欺罔又は著しく公正を欠く行為」に該当するかどうかにより判断すべきであると判示した。いわゆる取引秩序とは、需要者等との垂直的取引関係、及び業界自身の水平的関係も指す。「取引秩序に影響を及ぼすに足りる」と判断する際に、以下の要件を斟酌しなければならない。

  1. 当該業界の「業界特性」。
  2. 当該業界の「商習慣」。
  3. 取引相手の取引する決定要因。
  4. 取引相手に、商品の出所について混同誤認を生じさせるか否か。
  5. 当該行為が、如何に市場の取引秩序に影響を及ぼすか。
  6. 当該行為の採る手段、頻度または規模
  7. 被害者の人数、または損害の程度。
  8. 当該行為者が、取引相手に対して何かの欺罔行為または著しく公正を欠く行為をし、その行為が、取引相手の取引決定に影響を及ぼすか。

    最高裁は、特に「業界特性」」及び「商習慣」に重きを置き、商品の形態が類似している場合は、まず当該業界の競争関係、業界特性により、当該商品の形態自体が、取引相手/需要者の取引決定に影響を及ぼし、または混同誤認を引き起こしているかどうかを判断すると判示した。

    日本不競法と比較すると,上記の、公正な競争を阻害するかどうかを判断する基本的な条理(例えば同じ競争範囲にあること、模倣される商品の形態に市場価値がある)は、原則的に同じである。ただし、日本法にデッドコピーが明文規定されている代わりに、台湾法はあくまでも実務から構築してきた判断基準であるため、日本法にある「日本国内において最初に販売された日から起算して三年以内」(不競法第19条第1項第5号イ)という商品保護期間の制限が設けられていない。このため、たとえ販売された日から起算して三年を経過していても、企業は、公平法第25条により、自社の商品形態を保護することができる。

    なお、不競法により明文規定された、デッドコピーを判断する際に、「当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除くべきである(不競法第2条第1項第3号)」とする要件は、即ち公平会の旧「処理原則」の所謂商品形態の「独特性」という要件に相当するが、「処理原則」からデッドコピーが削除された今日、最高裁判所は当該要件に言及していなかった。しかし、商品の不可欠な形態を除いてからの独特性というものは、正に類似性を判断する際のキーポイントの一つでもあるため、これについて、台湾の実務界が更に入念な検討をする蓄積は、これから行われていくであろう。

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