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商標権維持のための継続使用に関する新たな判例

 台湾にも日本にも、商標が三年間使用されていない場合、不使用取消審判により登録商標を取消すことができるという規定がある。台湾では、台湾商標法第63条1項2号で、「商標の登録後…商標主務官庁は職権又は請求によりその登録を取り消さなければならない。二、正当な事由無しに継続して三年間使用していないとき」と規定されており、日本商標法第50条1項における「各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用」のような明文記載がない。このため、不使用取消審判において、商標権者が、「類似」の商品または役務に使用することも当該商標の使用に該当すると主張するケースもよく見られる。しかしながら、台湾最高行政裁判所は近頃、「商標権者・使用権者」による登録商標の「使用」(台湾法における「商標権維持のための継続使用」)につき、厳格的な見解を示している。

 仏系企業「アンジェリーナ」社は、「七味の友」社の所有する登録第650036号「Angelina」商標(以下は、係争商標という。フルーツの蜜漬け、砂糖菓子、クッキー、クラッカー、パン、ケーキを指定商品とする)に対し、不使用取消審判を請求した。知的財産局は、取り消す旨の審決を下し、その不服申し立てを審査する審査庁である経済部訴願委員会も同じ結論を下した。そして、七味の友社は審決取消訴訟を提起した。知的財産裁判所は、もし商標権者により提示された使用証拠が、一部の具体的な商品または役務しかない場合、同じ「性質」の商品または役務の分野における使用証拠に該当する可能性はやはりあると指摘した。本件において、ケーキについての使用証拠は認めたが、それ以外の「フルーツの蜜漬け、砂糖菓子、クッキー、クラッカー、パン」について、使用証拠こそないものの、これらの指定商品とケーキは、よくセットになって販売されており、製造者も販路も重なっていることが多いため、性質が同じまたは極めて類似している商品とはいえるため、係争商標のすべての使用商品に関する使用証拠として十分であると認め、審決と訴願委員会の審議決定を取消すべきであるとの判決を下した。

 同じ性質の商品または役務に該当するかどうかを判断する際に、知的財産裁判所の採った判断基準は、類似商品または役務のそれとは共通しているものがある。しかしながら、このような意見は、上告審である最高行政裁判所に採用されなかった。

 最高行政裁判所は、108年判字第133号判決をもって、かなり重要な判示を下した。台湾商標実務における「商標権維持のための継続使用(以下、“継続使用”という。)」は、「商標権侵害における商標的使用(以下、“商標的使用”という。)」のように法律要件として「類似」の商品又は役務を含むと明文規定しているわけではない。このため、たとえ“商標的使用”において、万全な保護を図るために商標の権利範囲が拡張されたとしても、“継続使用”の同一性に該当するかを判断する際に、法文の根拠なしに無闇に拡張してはならず、それはとりもなおさず、登録商標の指定商品の枠外で自由競争する権利が不当に制限されることになりかねないと指摘した。そのため、最高行政裁判所は、「類似」商品又は「類似」役務についての使用までも「商標権者・使用権者」の商標の使用行為と認めるのは相当ではないと判示した。

 したがって、果たして指定商品又は役務を“継続使用”しているか否かについては、実際の使用における商品又は役務の内容、専門技術、用途、機能などが同じであるか否か、または商業取引の一般的慣習において、需要者の認識において「同じ」商品又は役務であるか否かにより決められる。尚、最高行政裁判所もまた、具体的な下位概念商品(例えばパウダーファンデーション)における使用は、上位概念商品(例えば化粧品)における使用に該当はするが、その逆は成立しないと指摘した。本件において、「ケーキ」と「フルーツの蜜漬け、砂糖菓子、クッキー、クラッカー、パン」は、社会通念上において上下位関係がなく、同一商品でもない上、需要者も簡単にその違いが分かるため、「ケーキ」についての使用を「フルーツの蜜漬け、砂糖菓子、クッキー、クラッカー、パン」についての使用とすることは認めがたいと判示し、「ケーキ」以外の部分を廃棄し、知的財産裁判所に差し戻した。

 本年、台湾最高行政裁判所は、別件の不使用取消審判の審決取消訴訟において、商標が表示されている「客観的に存在する」証拠物のほかに、「主観的」に商標権者が商標を使用する意図があるか否かも含めて判断する必要があると判示した。本件も含み、最高行政裁判所は、近頃不使用取消審判の審決取消訴訟において厳格的な解釈を採っている傾向が伺えるため、商標権者は、“継続使用”に際して、特に配慮することが望ましい。

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