2018年12月7日に、台湾の立法院(国会)により、裁判所組織法及び行政裁判所組織法(中国語:「法院組織法」、「行政裁判所組織法)の一部の条文改正案が可決、成立された。新法は、公布の六ヶ月後に施行される予定である。この新法に基づき、今後最高裁判所の民事部・刑事部、または最高行政裁判所に、大法廷(中国語「大法庭」)が設けられるようになる。
日本法において、いわゆる「大法廷」は、主に違憲審査の権限を持っている。即ち、法律・命令・規則、乃至裁判所の各係で裁判された案件に係る法令や処分などが憲法に適合したかどうかについて判断を下すものである。しかしながら、台湾において、上記の違憲審査の権限は、「司法院大法官会議」に専属することになっている。
この度、設立する予定である、いわゆる「大法廷」制度は、文字は日本の裁判所大法廷とほぼ同じであるが、その内実は日本とかなり異なっている。というのは、その制度設立の目的は、台湾における、中国語の所謂“判例”と“決議”(裁判官会議)制度を撤廃するための補完措置である。今まで、台湾最高裁判所/行政裁判所により、極めて重要な判決における特定の段落の文字が切り取りされ、中国語の所謂“判例”が作られてきた。それは、日本語における広義的な“判例”(単に裁判例と指す)とは異なり、特別に選ばれた特定な段落の文字自体だけが“判例”といい、その効力と言えば、何と各下級裁判所の裁判を拘束できるため、事実上もうすでに抽象的な法令に等しい。裁判官は、その“判例”の内容に基づき、判決を下さなければならない。法令解釈の統一を図るという前提として、今までずっと、この “判例”制度と、裁判官会議を以って、台湾最高裁判所/行政裁判所が法的見解の足並みを揃えてきた。しかしながら、特定な切り取りされた文字で判決理由の依拠とした場合、いざそれぞれ異なる事案の内容に無理に当てはめようとすると、「足を削けずりて履に適せしむ」という傾向はやはりある程度免れない。
今回の法改正で、上記の制度が撤廃することになるとともに、引き続き法令解釈の統一を図り、各裁判官の法的判断の齟齬を防ぎ、全体的な法的安定性及び予測可能性を保つために、補完措置として「大法廷」が設立される。最高裁判所民事大法廷、刑事大法廷、最高行政裁判所のメンバーはそれぞれ11人、11人、9人である。
大法廷が審理につく提案につき、各裁判係、若しくは当事者が書狀を以って案件の法的判断の齟齬につき申し立てることもできる。大法廷は、上記の案件に対し法的見解を示した場合は、当該事案に拘束力があり、提案の各裁判係も、大法廷の判示した見解に従い、終局裁判を下さなければならない。このため、大法廷制度は、最終審裁判所の法的見解を取りまとめる重要なシステムと言えよう。手続き上において、大法廷は、口頭弁論を行うべきであり、また、専門的な法律問題について専門家と学者の意見を聴取することもできる。
台湾において、知的財産権案件の最終審裁判所とは、最高裁判所と、最高行政裁判所に当たるため、知的財産権関係の民事、刑事、行政訴訟において、異なる裁判官による法的見解の齟齬について、大法廷で法解釈が取りまとめられることも、近い将来可能になるであろう。
參考リンク:
http://jirs.judicial.gov.tw/GNNWS/NNWSS002.asp?id=392683