知的財産局(以下「知財局」という。)は、数度の公聴会を経て、2022年4月、商標法改正草案を公表した。当該改正草案は、現在、行政院にて審査中である。
今回の改正草案は、商標案件の審理、救済制度について大幅な変革を行う内容となっている。以下、改正の概要を紹介する。
1 商標にかかる不服申立事件を専門的に審理する独立の機関を設置(草案56条の1~2)
日本の審判部等、国外の立法例を参考に、知財局において、商標の査定系審判(中国語「複審」)及び当事者系審判(中国語「争議」)を専門的に審議する「複審及び争議審議会」(以下「審判部」という。)を設置する。審判部での審議は、3人又は5人の審査官の合議体により行われる。
査定系審判は、(1)拒絶査定に対する不服申立、(2)商標登録出願関係のその他の処分・決定(例えば、不受理決定、優先権を主張しないものとみなす決定など)又は商標権異動手続(例えば、変更、ライセンス、譲渡、質権の設定、更新または放棄など)に対する不服申立のことをいう。また、当事者系審判は、無効審判及び取消審判のことをいう。
2 異議申立制度を廃止
現行の異議申立及び無効審判における不登録事由が重複していること、さらに、実務上異議申立のうち約97%が相対的不登録事由をもって申し立てられたものであり、請求人を「利害関係者」に限るとしている無効審判と重複する部分が大きいことから、異議申立制度を廃止するとともに、併せて商標の絶対的不登録事由について、「何人も」無効審判を請求できるよう変更する。また、商標審査をより正確に行い、異議申立に対する需要を減らすため、知財局は、商標出願の段階で、第三者による情報提供を受け付けることとする(ただし、提供された情報の利用状況について情報提供者にフィードバックされることはない。)。
3 査定系審判は原則的に書面審理を採用(草案56条の10)
査定系審判は、原則的に書面審理される。ただし、申立により又は職権で口頭審理を行うこともできる。
4 当事者系審判は原則として口頭審理を採用(草案58条の2~58条の3、67条)
当事者系審判(無効審判及び取消審判)は、現行法の書面審理から、審判部による口頭審理に変更される。双方当事者が対審制により主張を尽くし、審判部が審決を下すことができる程度まで達したと判断した場合は、審理終結通知を出し、当該通知から1ヶ月以内に審決が下される。口頭審理の効果を高めるため、審判部は、必要と認める時は、準備手続を行い、争点の整理や簡略化の協議並びに心証の開示を行うことができる。
5 審判の対象商標についての商標権の分割、図案の実質的でない変更、指定商品/役務の減縮及びディスクレームは、審判部が審決を下す前に行わなければならない(改正草案38条、56条の11)。
6 救済手続を簡略化し、民事訴訟化(草案67条の3~67条の8)
TRIPS協定及び国外の立法例を参考に、審判部の審決に不服がある者は、訴願手続を経ることなく、直接「知的財産及び商事裁判所」に対し訴訟を提起することができる。また、当事者系事件については、民事訴訟の当事者対立構造を採用し、実質的な紛争の当事者を原告及び被告とする。すなわち、現在の知財局を被告とする行政訴訟とは異なり、実質的な利害関係を有する双方当事者が直接攻撃防御を行い、弁論することとなる。前記訴訟の判決に不服がある者は、最高裁判所に上告又は抗告することができる。