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公平交易法における商品の「表徴」に関する知的財産及び商事裁判所の見解

    台湾の公平交易法第22条第1項第1号によると、事業者は、他人の商品を表す表徴を以て、同一又は類似の商品に同一又は類似の利用を行い、他人の商品と混同させてはならない。そして、台湾の裁判所は数多の判例で、商品の外観が上記の条項における「表徴」に該当するかどうかについて見解を示している。

    最近、台湾の最高裁と知的財産及び商事裁判所が更にあるスーツケースの外観のデザインに関する事件の判決で、消費者がどのようにその注意を引き寄せる諸般の要因(例えば商標、商品の機能など)から商品の表徴を識別するか、類似のデザインが消費者に混同させる具体的な危険性があるかどうかについて見解を示した。本文は、以下のように前述の最高裁と知的財産及び商事裁判所の判決の概要を紹介する。

    この事件では、原告(ドイツ法人のR社)の起訴内容によると、原告が生産・販売するスーツケース製品に「RIMOWA」という商標の表示があるほか、当製品の表面には関連事業者と消費者の間で熟知され、且つ製品の出所を識別させるに足りる凹凸模様のグルーヴデザインがある。そして、本件の被告(某台湾法人)はかつて、自社のスーツケースにおける表示が原告(R社)の商標権を侵害したと2014年のある別事件の確定判決で認定された経緯があるにもかかわらず、また原告のスーツケースのグルーヴデザインに高度に近似する外観を持つ商品の販促・販売を継続し、消費者を混同させた。よって、公平交易法第22条第1項第1号で保護されている原告の著名な表徴が被告により侵害された。加えて、被告による営業上の名誉への便乗、及び努力の成果に対する搾取などの不正競争行為も同法の第25条に違反するとして、原告は同法の第30条、第31条により、侵害の除去、侵害の防止及び損害賠償を請求した。

    それに対し、被告は、市場に存在する30社余りの業者が類似するデザインを持つスーツケースを販売しており、原告のグルーヴデザインは商品の出所を表すことができず、公平交易法における「表徴」に該当せず、かつ、被告のスーツケースの外観と原告のそれとは完全に同じに見えるわけではなく、関連事業者及び消費者に両社の商品を混同する事情があることを原告が証明していないため、公平交易法第22条第1項第1号に違反するとは言い難いと抗弁した。

    そして、両社の主張に対し、一審裁判所も二審裁判所も(ともに知的財産及び商事裁判所)公平交易法第22条第1項第1号により原告に勝訴判決を下したが、被告は最高裁まで争っていった。

    その結果として、最高裁はその109年度台上字第2369号判決で下記の見解を示し、本件を原審に差し戻して更なる調査を命じた。

  1. 公平交易法第22条第1項第1号における「表徴」は、識別力、又は二次的意味(secondary meaning)を有する、関連事業者又は消費者に異なる商品の出所を識別させる特徴を指す。本件で、原告はもとより自社が行ってきた販促活動について数多の証拠を提出したが、その販促活動を通じて商品の出所を識別させる機能を発揮したのは、一体原告の商標なのか、そのグルーヴデザインなのか。それとも、原告が製品の色、軽さ、耐用性の度合い等の機能上の要素のみについて宣伝したのか。もし、商標と商品機能を取り除いても、そのグルーヴデザインが尚も商品の出所を識別させ得るか。即ち、関連事業者及び消費者がグルーヴデザインのみで商品の出所を識別し、それによって購入できるか。これらの問題点について引き続き調査する必要がある。
  2. 公平交易法第22条第1項第1号における「他人の商品と混同」は、現実に発生したことを必要としない。ただし、一般的な消費者が平均的な注意力及び記憶力を発揮しても混同を発生させる具体的な危険性があれば、はじめて該当する一方、抽象的な危険性、想像上の危険性があるのみである場合は該当しない。被告の抗弁によると、被告が販売した8種類のスーツケースの外観はいずれも異なり、消費者が普通の注意を施した場合商品を識別することができるはずであり、さらに、両社の商品の単価に十倍の差があり、販売ルートも異なるため、混同は発生しない。この点について、原審は調査を行って混同させる具体的な危険性があるかどうかを総合的に判断することをせず、直ちに混同するおそれがあるという抽象的な危険性があると認定したことには、不当に法律を適用する間違いがある。
  3. また、公平交易法第22条の適用がない場合、被告の行為が同法の25条における「取引秩序に影響を及ぼすに足りる欺罔又は著しく公正を欠く行為」に該当するかどうかについても、引き続き事実を調査する上で認定する必要がある。

    対するに、事件が差し戻された知的財産及び商事裁判所は、以下のように最高裁の指摘に答えた形でその110年度民公上更(一)字第2号民事判決を下した。

  1. 公平交易法第25条の補充的な包括条項である。被告の8種類のスーツケースのうち、3種類が原告の有名なグルーヴデザインという表徴を侵害し、第22条第1項第1号の違反となると裁判所が判断した以上、さらに第25条に該当するかどうかを検討する必要がなくなった。
  2. 関連事業者及び消費者は、原告のスーツケースのグルーヴデザインのみで商品の出所を識別することができ、他の要素に影響されない。何故なら

    (1) 事業者が販促活動を行う場合、必然的に商標、商品の機能上の要素とともに、商品の表徴に販促活動の焦点を当てる。よって、販促活動の効果は、商標のみに及ぶわけでなく、必ず商品の表徴にも及ぶ

    (2) 原告も膨大な費用をかけて、そのグルーヴデザインという有名な商品の表徴に焦点を当てて販促活動を行っており、マスコミの報道にもその商品の表徴を取り立てて報道されたことがある。

    (3) 原告が本件において提出した二部の市場調査報告書によると、原告の商標を覆ってグルーヴデザインのみで判断した場合、35%~45%の消費者が、その表徴を使うスーツケースが原告のものであることを判断できた。よって、たとえ市場に他の筋状の凹凸模様をもつスーツケースが存在しているとしても、グルーヴデザインが表す識別力と信頼性が関連事業者又は消費者に熟知されている事実を否定できない。

  3. 価格の差があっても本件における混同誤認に対する認定に影響が及ばない

    (1) 市場の広さと深さを開拓するために、ブランド業界が比較的に単価が低くて販売ルートが異なるサブブランドを世に出すことは、世界中の消費者に熟知されるマーケティング手段である。なお、インターネットが世界的に普及している事実からみると、各販売ルート間の隔たりが次第に曖昧になっている。消費者が異なるレベルの商品の市場の間で行き来し、大量の情報流通も常態化している。よって、真正品(真正のブランド品又はサブブランド品)は、その単価と販売ルートが異なっても、低単価の模倣品が市場に出回ることは、模倣品を真正のサブブランド品に消費者に混同誤認させ、真正品(ブランド品又はサブブランド品)が購入される機会が奪われるリスクがある。さらに、模倣品の販売による便乗行為も、真正品の市場における利益に大きな損害を与えることとなる。

    (2)「購買後の混同」(post-sale confusion)も公平交易法第22条における「他人の商品と混同」の態様のうちの一つ

    A.  公平交易法第22条第1項第1号の「関連事業者又は消費者」は、商品を購入する者、又は関連商品を使用することに慣れた者を指すのみならず、従来の判決によると、「潜在的消費者」も「消費者」の文言の意味に含まれる。よって、「消費者が購入する当時」に両社の商品の価格差で混同誤認が起こる可能性があるかどうかは別として、直接に取引をしていない潜在的消費者が両社の商品の表徴が高度に類似しているのを見るとき、その価格差を知るわけがないので、両社の商品の表徴が高度に近似することで被告商品が原告のスーツケースであることを誤認する具体的なリスクがある。

    B.  本件の著名な表徴と高度に類似する格安品と低品質の模倣品が市場に出回ると、真正品ではないかと潜在的消費者に混同させるおそれがあるのみならず、原告のグルーヴデザインという表徴の独特性を希薄化、弱体化するおそれもある。

    知的財産及び商事裁判所は、本件の判決で、市場調査報告書における調査方法を採用し、3.5割~4.5割の台湾の一般市民がグルーヴデザインから商品の出所を識別できるとし、識別力のある著名表徴であると認定した。

    また、当判決では、ブランドを経営する業者が同時にサブブランドを経営する市場実態、他人の表徴と混同する具体的な危険性があるかどうかを判断する際の要素として「購買後の混同」を取り入れることを明記したので、今後の関連性のある事件の審理において重要な参考となりそうである。但し、本判決が再度上告されるか、最高裁が当判決の見解を維持するかどうかは、今後の注目を要する。

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