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専利訴訟における不当利得の適用

 台湾法において、権利が侵害された者がどのように不法行為(中国語名;侵権行為。故意又は過失により不法に他人の権利を侵害すること)と不当利得(中国語名:不当得利。法律上の原因なしに利益を受けることにより他人に損失を蒙らせること)の規定を適用するか(即ちいわゆる不法行為による損害賠償の請求権と不当利得返還請求権の競合)はよく議論される議題である。これについて、近頃、専利訴訟における損害賠償の請求権と不当利得返還請求権の競合関係を論じる台湾の最高裁判所(以下、最高裁と称する)の意味深い判決(106年台上字第2467号)があった。

 当判決において、最高裁は以前の判例を引用した上、台湾専利法の第96条、第97条の規定により専利権者が専利権の侵害者に侵害の故意又は過失があることを証明して始めて損害賠償を証明できるものの、専利法は民法上の不当利得の規定の適用を排除していないため、専利権者は当然不当利得の規定により専利権の侵害者に権利を主張することができると表明した。

 しかし、最高裁も下記の見解を示した。つまり、不当利得という制度の目的は、損害の填補になく、取得すべきではなかった利益の返還にある。そのため、不当利得の返還を請求する場合、受益者が受けた利益を限度とすべきであり、請求者が受けた損害の額に基づくべきではない。従って、専利権者が専利権の侵害者に対し不当利得の返還を主張する場合、侵害者がその専利権を実施することで客観的に得られる実際の利益を計算の基準とすべきであり、専利権者が失った利益に基づくべきではない。

 一方、最高裁はなお、権利者が不当利得返還請求権を主張する場合、裁判所は権利者に権利の行使を怠って信義誠実の原則に反することで権利失効を生じさせるべきである事情があるかどうか留意しなければならないと述べた。即ち、もし権利者が相当期間内に権利を行使せず、権利者が既に権利を行使しようとしないと義務者に信じさせるに足りる正当な特別の事情がある場合、たとえ権利者が以後その権利を主張しても、信義誠実の原則に反して権利が失効してしまうと判断しなければならない。また、裁判所がこのような判断をする場合、権利の性質、法律行為の種類、当事者間の関係、社会経済の状況、及びその他一切の事情を判断の根拠としなければならない。(最高裁は、このような権利の失効は信義誠実の原則に基づくものであり、権利者の請求権が時効消滅していないことに影響されないと強調した。)

 当判決の案件において、専利権者(即ち被上告人)は、早くも2003年に被疑侵害者(即ち上告人)が被疑侵害品を製造していることを知った。そして、専利権者は2004年に、被疑侵害者がイタリア対応専利を侵害したとして、イタリアの裁判所に対し侵害訴訟を提起したが、イタリアの裁判所は、権利侵害が成立しないとして訴えを棄却した。このような事情があるため、被疑侵害者がこの台湾における訴訟において、「専利権者は、相当期間に権利の行使を怠ったことが明らかであり、被疑侵害者は正当な信頼に基づいて長期に渡って本件専利を使用して被疑侵害品を製造してきたので、専利権者が再び不当利得に基づいて権利を行使することは、信義誠実の原則に反し、その権利は失効させられなければならない」と主張した。これについて、最高裁は、被疑侵害者が主張した信義誠実の原則による権利失効を直接肯定していないが、全く取るに足りない主張でもないと認めた。最後に、最高裁は、原審がこの点について詳しく判断を加えていないとし、本件を原審に差し戻した。

 結論として、当判決において、最高裁は専利権者が専利訴訟で不当利得を主張するフィージビリティを肯定した。従って、侵害者に侵害の故意又は故意がないため、又は時効消滅のため専利権者が専利法により損害賠償請求権を主張できない場合、専利権者は尚も不当利得の規定により専利を実施したことで得た利益を返還するよう侵害者に請求することができる。一方、裁判所は不当利得返還請求権が信義誠実の原則により消滅する可能性を仄めかし、不当利得返還請求権を主張された当事者に抗弁の方法を提示した。当判決は、専利権者にも被疑侵害者にも参考に値する訴訟の攻防戦略を提示しているといえよう。

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