台湾では、複数の事業者が協議により、互いの競争を回避し、市場力を獲得するために、共同行為を為すことを防ぐために、台湾公正取引法第14条をもって「カルテル行為」に規制をかけている。いわゆるカルテル行為の要件とは、簡潔にいえば、各事業の間に「水平的競争」があり、当該カルテル行為は「市場機能に影響を及ぼすに足りる」ものであることを指す。
最近、台湾最高行政裁判所(以下は、最高行という)は上記問題について、「最高行2018年度判字第489号行政判決」を始め、計九件の判決を作成し、その見解を述べた。
その事案で、台湾電力株式会社(以下は台電社という)は、9社の民間発電事業者(Independent Power Producer,以下はIPP事業者という)とそれぞれ売電契約を結び、各契約に定められた異なる料金によりIPP事業者は台電社に電力を提供した。後にコストが値上がり、9社のIPP事業者は台電社と料金の見直しについて談判していたが、物別れになってしまったため、9社とも、お互いの事業活動を拘束し,共同で台電社との談判を拒むことを取り決めた。台湾公平取引委員会(以下は、公平会という)は、この9社のIPP事業者が、特別な認可を得てこそ設立した事業であり、お互いに水平的競争関係があるため、この合意は正に「カルテル行為」に該当すると判断し、公正取引法により罰金に処した。IPP事業者はこれを不服とし、台湾の電力市場に市場メカニズムが働いておらず、IPP事業者は皆台電社の支配下における従屬的立場に過ぎず、発給された免許の営業地域内において営業するしかできないと主張し、訴願(行政不服申し立て)、乃至行政訴訟を提起した。
台北高等行政裁判所(以下は北高行という)はカルテル行為に該当すると認定したため、IPP事業者は更に上告した。最高行は、各IPP事業者は電力市場においては同じ取引地域に存するどうか、即ちその供給の代替性(即ち業者の間に水平的競争関係)があるかどうかは、もう一度調べ直す必要があると判示し、原審に差し戻した。再び審理を執り行った北高行は、異なる電力事業者の売電に、地理的な市場が各々分けられているため、お互いに代替性はないと述べた。更に、現時点で台湾はまだ電力非自由化の国であり、電力は、台電社が一手に買い集めることで優位に立ったため、劣位に立ったIPP事業者に果たして競争関係があるか否かは、厳格に認定すべきである。たとえ各IPP事業者が、電力市場に進出する競争入札の際に競争関係があったとしても,落札後、やはり台電社の統括に従わないといけない立場にいるため、当該拘束の合意当時は、お互いに競争関係ではないと判断した。公平会は不服とし、最高行に上告した。
最高行は下記の見解を述べた。まず、本件のIPP事業者は、「関連市場」(製品市場、地理的な市場の二種類に分ける)において水平的競争関係があるかどうかということから追究した。
「地理的な市場」につき、確かに各発電所の位置は全国に散りばめられているが、電力という製品の特殊性を鑑み、もし台電社が自由に取引相手を選び、どの配電地域へもその商品である電力を運用して送ることができ、即ち、いずれのIPP事業者からでも、発電不足の分を買い入れ、配電できるようにうまく統括運営することができれば、事業の位置する物理的な地域に拘ることなく、IPP事業者のいわゆる地理的な市場は、本当は「全国」に該当するかもしれない。もしそうであった場合、当該地理的な市場において、やはりIPP事業者の間に互いの競争関係がある可能性は否めない。
更に、「製品市場」において、各IPP事業者の取引相手は皆台電社であるため、事業者の間に製品である電力が料金の差異により代替性が生じるため、部分的な時間帯において台電社はいずれの事業者から購入するかを選択することはできるため、IPP事業者の間に競争関係があるように思われる。「価格」は本件において取引相手を決める重要な要素である以上、その競争関係が確かに存在することはやはり否めない―たとえその関係が潜在的であったとしても、台湾実務の一貫的な立場として、「潜在的競争」は競争としても認められている―そのため、直ちにIPP事業者の間の水平的競争関係の可能性を一概に否定することはできず、カルテル行為も「合意の当時」だけで判断すべきではないと判示した。
いわゆる「市場機能に影響を及ぼすに足りる」とは、事業の為した共同行為が、客観的に市場の供給需要の機能に影響を及ぼす危険性があれば十分であり、その合意の内容に法的拘束力があるか否か,合意後に実際に実行されたか否か、或は、事業が実際にカルテル行為により利益を獲得したかどうかは問わないと最高行は述べた。そのため、もしIPP事業者が、お互いに競争関係を有するにもかかわらず,各事業者と台電社が自由的に価格調整を拘束する合意に至った場合、カルテル行為の要件に該当する可能性があるように思われると述べた。最高行は本件を原審に差し戻し、IPP事業者の間に水平的競争関係があるかどうかについて、引き続き調査するように判示した。
本件からもわかるように,台湾の実務上、カルテル行為を為した業者の関連市場の解釈について、新たな形の製品が世に出るにつれ、その判断もすでに典型的で物理的な地域の制限を越えたと見えた。尚、事業者が互いに「潜在的な競争相手」でも競争相手に成り得る見解が再び強調され、事業がカルテル行為により実際に利益を獲得したかどうかを問わず、客観的な危険性だけで十分であると判示された。これは、とりもなおさず、事業者のカルテル行為について厳格的に審査する立場を採っているため、留意しなければならない。