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拡大先願における「直接置換」の判断基準

    「拡大先願」につき、専利法第23条では次のように規定されている。「発明専利(以下、特許)出願に係る発明が、当該特許出願日の前に出願され、当該特許出願後に公開又は公告された出願の願書に添付された明細書、クレーム、又は図面に記載された内容と同一である場合、特許を受けることができない。ただし、当該出願人と先に出願された特許出願又は実用新案出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない。」

    ここで、「内容が同一」とは如何に解釈されるべきか。専利審査基準によると、以下の四つの場合が挙げられている。

  1. 完全に同一である場合
  2. 文字の記載形式または直接的且つ疑義なく知り得る技術的特徴にしか差異がない場合
  3. 対応する技術的特徴の上・下位概念にしか差異がない場合
  4. 通常の知識により「直接置換」可能な技術的特徴にしか差異がない場合

    上記1~3は、新規性の判断基準にも見られるものである。しかし、上記4の点は、含まれておらず、そのキーワードとなる「直接置換」には、特に注意が必要である。

    「直接置換」とは、如何なるものであろうか。この点につき、知的財産及び商事裁判所(以下、知財商裁)は、113年度(2024年)行専訴字第33号判決にて以下のような解釈を示している。

  • 「直接置換」と判断する趣旨は、極めて近似し、差異の少ない後願が特許を取得することで、先願と後願が互いの均等範囲に入り込んで互いに制約し合い、双方の出願人が特許法による排他的地位を得られなくなることを回避する点にある。
  • 「直接置換」の判断においては、差異となる技術的特徴そのものの機能を考慮すべきである。すなわち、互いの均等範囲への抵触を回避するという制度趣旨に沿って、置換前後の「技術的特徴そのもの」が同じ「機能」を有しているか否かの判断を行う必要がある。
  • 言い換えれば、置換前後の「発明全体としての技術手段」により生ずる効果が同じか否かは要件とはならない。すなわち、置換後の発明全体の技術手段による効果の差異を考慮する必要はない。

    知財商裁は同判決において、上記要点に基づき、知的財産局の判断を維持し、後願が専利法第23条に規定された発明に該当し、拡大先願により、特許を受けることができないと判断した。当該訴訟における、先願と後願の相違点は組成物における架橋剤の含有量のみであったが、知財商裁は、先願と後願の架橋剤の含有量は、いずれも組成物の樹脂に架橋反応を生じさせるとの同じ機能を備えていることに基づき、「直接置換可能な技術的特徴」に該当すると認定した。

    以上の判決から、拡大先願の「直接置換」にかかる判断は、「差異となる技術的特徴そのもの」の「機能」の同一性のみに重点が置かれ、置換後の「発明全体」の「効果」の同一性は判断要素とはならなかったことがわかる。したがって、<直接置換>を理由とした拡大先願との拒絶通知・異議申立理由に直面した際には、「差異となる技術的特徴そのもの」における「機能」の違いを際立たせることにより、対応することが望ましい。

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