台湾専利法第136条において、設計専利(意匠登録)の権利範囲は図面を基準とし、説明書を参酌することができると規定している。
一方、台湾専利審査基準では、設計専利の説明書における「設計の説明」欄について、“設計の説明とは、設計の形状・模様・色彩またはその組み合わせなどの記述を補足説明するものであり、設計の特徴や図面に開示された設計に関する事項を含み、当業者がその内容を理解し、実現できるようにするものである、と明確に規定している。
さらに、図面の開示内容に「設計専利として主張しない部分」が含まれる場合には、設計の説明欄にその旨を記載しなければならない。
したがって、図面及び設計の説明の記載の補足により、設計特許の権利範囲が決定されることになる。もし図面の内容が十分に明確でなく、設計の説明の記載が不明瞭である場合は、権利範囲の解釈に相違が生じ、権利に影響を及ぼす可能性がある。
最近のある設計専利の無効審判において、専利権者(原告)は、訴願委員会が下した[知的財産局による無効審判不成立の処分を取り消し、知的財産局に対して改めて適法な処分を行うよう命じた決定]を不服として、知的財産及び商事裁判所に行政訴訟を提起した。
本件の2025年度行専訴字第9号判決において、裁判所は、設計の説明書における「設計の説明」の記載について専利権者とは異なる解釈を示し、それに基づいて本件設計専利には創作性がないとの判断を下した。
係争専利は2022年3月10日に出願されたもので、図1に開示の「ラベル」の設計である。その特徴は、A部分として毛筆調で記載された「梅酒」・「ういすきー」並びに「WHISKY UMESHU」の文字、B部分として梅の実の図柄、C部分として大きく表記された「花の雨」と小さく二列で表記された「国產青梅1OO%で造ったウイスキーベースの梅酒」の文字、D部分としてピンク色の花びらの図柄、E部分として蒸留器の図柄の設計・配置にある。
そして、係争設計の設計の説明第2点には、「図面に開示の内容組成表示、酒類の種類、警告文、リサイクルマーク、及びバーコードは、設計専利として主張しない部分である」と記載されている。

証拠2は2021年12月7日に公開されたインターネット資料である。(https://shingroupcorp.com/products/shin-whisky-umeshu-plum-wine/)
その公開日は係争専利の出願日より前であるため、係争専利の先行技芸になり得る。その主な図面は、図2に表示されている。

証拠3は2021年4月13日「閒閒小魚出遊中」ブログ資料である。
(https://kellyrosie12.com/post-000000000/)又は(https://kellyrosie.com/post-000000000)
その公開日は係争専利の出願日より前であるため、係争専利の先行技芸になり得る。その主な図面は、図3に表示されている通りである。
図4のピンク色の花びらの図は、2013年10月21日に画像データベースで公開された画像データである。
(http://www.daimg.com/psd/201310/psd_37035.htm)
その公開日は係争専利の出願日より前であるため、係争専利の先行技芸になり得る。その設計内容は、係争専利のD部分のピンク色の花びらの図と比較することができる。

図5の蒸留器の図は、2018年3月29日に画像データベースで公開された画像データである。
(https://www.shutterstock.com/zh-Hant/image-vector/alembic-still-making-alcohol-inside-distillery-0000000000
その公開日は係争専利の出願日より前であるため、係争専利の先行技芸になり得る。その設計内容は、係争専利のE部分の蒸留器の図と比較することができる。

図6の「桜の花」とピンク色の花びらの図は、2017年3月27日に公開ウェブページ(https://www.sohu.com/a/000000000_121346)で公開されているの画像データである。(https://img.mp.sohu.com/upload/20170327/a53ed166b66a4cd4979a1e302591d418_th.jpeg),
その公開日は係争専利の出願日より前であるため、係争専利の先行技芸になり得る。その設計内容は、係争専利のD部分のピンク色の花びらの図と比較することができる。

新規性について、裁判所は、次のように認定した。
証拠2と証拠3のC部分の上方に、比較的大きな「信」の文字があり、係争専利のC部分上方には、比較的大きな文字で「花の雨」とあり、両者は異なっている。また、両証拠はいずれも係争専利の「D部分のピンク色の花びらの図」・「E部分の蒸留器の図」という設計の特徴が開示されていないため、両引例は係争専利が新規性を欠くことを証明するには不十分である。
創作性について、裁判所は、次のように認定した。
係争専利と証拠2・3を比較し、証拠2・3のA部分の「WHISKY UMESHU」は設置位置(「梅酒」の上方か下方か)の簡単な変更に過ぎない。また、係争専利と証拠3を比較すると、係争専利は、証拠3のB部分における梅の実の図柄の設置位置と数量を、簡単に変更したに過ぎない。また、係争専利と証拠2・3を比較すると、証拠2・3の大きな文字の「信」を係争専利の大きな文字の「花の雨」に簡単に変更したに過ぎない。
証拠2・3はいずれも係争専利のD部分におけるピンクの花びらの図柄と、E部分の蒸留器の図柄の設計配置を開示していないが、証拠4・5・6等のインターネット上で公開されている画像データベースには、D部分のピンクの花びらの図柄、E部分の蒸留器の図柄、「櫻の花(文字)」+D部分のピンクの花びらの図柄、が開示されている。これにより、当業者であれば、E部分の蒸留器の図柄を背景として淡く記載し、D部分のピンク色の花びらの図柄の位置を簡単に調整して証拠2・3に組み合わせて配置できる。このような単なる設置位置の変更という手法は、全体のデザインに特異な視覚効果を生じさせることができない。したがって、証拠2又は証拠3、或いは証拠2と3の組み合わせにより、係争専利が創作性を備えないことを証明できる。
専利権者は、次のように主張している。
[機能にのみ基づく特徴は設計専利の比較判断の範囲に含まれず、単なる商品の種類を記載したラベル正面の「梅酒」・「WHISKY」・「ういすきー」の文字は、当然ながら設計の審査の対象外である。係争専利公報の設計の説明第2点において、図面に開示された酒類の種類等については設計専利として主張しない旨を声明していることから、「ういすきー」・「WHISKY」・「UMESHU」は審査対象とすべきではない。]
しかし、裁判所は、次のように判断した。
[設計専利に係るこれらの設計特徴が、機能性と外観上の創作的装飾特徴を兼ねそろえ、かつ一定の視覚的効果を生じさせるものである場合には、機能にのみ基づく物品デザインや特徴に該当せず、全体設計の比較範囲に含めるべきである。
証拠2・3と係争専利のA部分に毛筆調で記載された「梅酒」・「ういすきー」並びに「WHISKY UMESHU」は、確かに商品表示の機能を有するものの、その大きさ・縦横比に差異があり、配列の仕方も完全に同一ではない。よって、「梅酒」・「ういすきー」・「WHISKY UMESHU」は、その大きさ・縦横比及び配列の仕方に造形上の創作変化を施す余地があり、「機能にのみ基づく特徴」とは言えない。
係争専利の参考図1は、適用する物品又は使用環境を説明するものに過ぎず、係争専利の設計の範囲を構成するものではない。よって、係争専利の設計の説明書における設計の説明第2点における「図面に開示の内容組成表示、酒類の種類、警告文、リサイクルマーク、及びバーコードは、設計専利として主張しない部分である」という記載について、設計の図面における参考図1に照らすと、そのうちの「内容組成表示・酒類の種類」は左側に小さく表示された「アルコール分:15%」・「主原料:梅酒原酒、ウイスキー、砂糖」および「製品種類:リキュール」等を指すものであり、係争専利の設計の範囲に含まれるものでないことがわかる。しかも、係争専利の正面図A部分において、毛筆調で表現された「梅酒」・「ういすきー」と、「WHISKY UMESHU」は、全体的に大きな字で表示されていることから、やはり係争専利の設計の範囲に含まれ、創作性判断の比較の対象であると言える。よって、専利権者の主張は採用できない。」
設計専利を出願する設計の図面に「設計専利として主張する部分」と「設計専利として主張しない部分」が含まれている場合には、両者を明確に区別できる表示方法で表現しなければならない。黒線図で表現するときは、「設計専利として主張しない部分」について破線又はその他の点線(一点鎖線、二点鎖線等)で示すか、あるいはグレースケールで色付けして表現する必要がある。コンピュータグラフィックスや写真で部分設計(部分意匠)を表現する場合、「設計専利として主張しない部分」は半透明に色付けして表現すべきである。これらの「設計専利として主張しない部分」の表示方法については、設計の説明欄において明示しなければならないことが台湾専利審査基準に明確に規定されている。
したがって、もし部分設計の出願をするための図面を作成するときには、上記規定に基づいて「設計専利として主張しない部分」を区別し、請求しようとする設計の範囲を明確にするよう考慮すべきである。
実務においては、商品に使用する予定のラベルや販売用の包装箱などを、そのまま出願用図面に用いる事例もある。このような出願用図面を提出する場合、ラベル上や包装箱上などに請求の範囲に含めたくない若しくは含むことができない文字や図柄(例えば材料の成分、警告文、標語、商標、説明等)が通常含まれている。これらの「設計専利として主張しない部分」は、破線による表現が難しく、設計の説明欄で文字によりその範囲を表現することが多々ある。その際には、これらの文字による記述がはっきりと明確であるかが極めて重要である。
例えば、本件では、「『図面』に開示された酒類の種類等については設計専利として主張しない」における『図面』がどの図を指しているかが明確に記載されていない。裁判所としては、「内容組成表示、酒類の種類、警告文、リサイクルマーク、及びバーコード」の前後の内容を踏まえ、設計の図面に照らし合わせて参考図1を判定し、それに基づいて権利の範囲を解釈せざるを得なかった。
このため、明確でない記載方式は、解釈や認定の仕方に差異を生じさせ、直接又は間接的に実質的な権利範囲に影響を及ぼすおそれがあるため、出願人は特に注意すべきである。