台湾の所得税法第24条第1号の前段によると、営利事業の所得を計算する際、当年度の総収入から、あらゆる費用・損失・税金の額を差し引いて得られた純利益の額が所得金額とされる。そして、どのように所得を計算するかは、法人税額の多寡に直接影響を与えることとなる。ハイテク企業は高額の研究開発費を投入することがよくあるので、どのように研究開発費を損金算入できるかという議題に留意すべきである。
どのように研究開発費を計上すべきであるかについて、台湾の最高行政裁判所は、その2021年に下した108年度度上字第1130号判決(以下、本判決という)で、原判決(台北高等行政裁判所の107年度訴字第1374号判決。以下、原判決という)の見解を覆したとともに、基本的な判断基準を示した。以下では本判決の要旨を説明する。
事件の経緯は以下のとおりである。台湾法人のA社(以下、上訴人という)は、2011年に192,882,190台湾ドルの「技術情報提供費」を当年度の費用として計上した。その技術情報提供費は、上訴人が祖父会社である日本のC社(以下、祖父会社という)に支払ったものである[1]。但し、台湾の國税局は、上訴人が既に当年度に親会社のB社(以下、親会社という)に「技術報酬金」を支払った上、「技術情報提供費」の支払いが上訴人に対しどのように具体的な貢献をもたらしたかを説明できていないとして、上訴人が費用として計上した「技術情報提供費」を損金として認めなかった。上訴人はこの処分に不服があったので、訴願と行政訴訟を提起したところ、台北高等行政裁判所にて敗訴判決(原判決)を受けた。そこで、上訴人がこれに対し上訴した結果、最高行政裁判所は本判決を下した次第である。

まず、原判決の要旨は下記のとおりである。
- 上訴人の貸借対照表に「技術情報提供費」の支払いから得た無形資産又は専利権が表記されていないので、「技術情報提供費」は上訴人の「製造費用」に属するものであり、上訴人の資産ではなく、「仕入れ費用」や「販売費」でもない。
- 上訴人の2011年度の営業収入の80.78%は、売買から生じたものであり、製造から生じた営業収入は総収入の19.22%である。
- 上訴人の2011年度の営業収入のうち、製造から生じた部分は19.22%のみであり、且つ「技術情報提供費」が「製造費用」に属する以上、上訴人から祖父会社に支払われた「技術情報提供費」の192,882,190台湾ドルのうち、19.22%のみ、即ち37,071,956台湾ドルが損金として算入されるべきである。
一方、本判決は以下の見解を示した。
- 上訴人が顧客にカスタマイズ製品を提供しようとしたにもかかわらず、祖父会社しかカスタマイズ製品の研究開発を進める能力を持たないため、上訴人は、祖父会社に研究開発を依頼した後に、収入の比例により研究開発費を祖父会社と分担する必要がある。これはすなわち「技術情報提供費」であり、研究開発というサービスに対する対価でもある。
- 上訴人が祖父会社にカスタマイズ製品の研究開発を依頼したことの存否について、上訴人とその顧客の間の研究開発プロジェクト明細書や電子メールのやりとりがあるので、証拠として採用できる。原審は、上記の証拠が「技術情報提供費」と「技術報酬金」が重複計上されていないかどうかを証明できるかを判斷した上で、「技術情報提供費」を損金として算入できるかどうかを判断すべきである。
- 台湾の所得税法施行細則の第3条が各業種(販売業・製造業)の費用の名称を例示しているが、特定した名称を使わない支出が損金算入できないとは限らない。要するに、営利事業が特別な技術に対し支払った対価が「真実性」、「合理性」と「必要性」があれば、損金算入されることができる。
本判決から分かるように、研究開発のために生じた支出について、たとえ会社による専利出願がなく、貸借対照表に無形資産として計上されることもない場合でも、真実性、合理性、必要性があれば、損金算入することができる。なお、損金算入は、勘定科目名、又は当年度の営業収入に売買・販売が占める比例とは関係がない。
最後に、当局に研究開発費に疑問を持たれた際に、研究開発費の真実性、合理性、必要性の存在を証明できる証拠を提出できるようにするために、会社としては、研究開発の過程を詳細に記録する(例えば、会社と顧客の間の研究開発に関する電子メールのやりとりを保存し、サンプルの変更や検収の具合を記録するなど)ことが望ましい。
[1] 本件の技術情報提供費は、祖父会社の研究開発費の一部を負担するためのものである。即ち、祖父会社は、企業グループの傘下の各親会社の各製品で得られた収入の比例により、祖父会社の当年度の研究開発費から、各親会社の分担すべき研究開発費を計算する。その後、各親会社、及び各親会社にコントロールされる子会社の各製品による収入により、親会社と子会社が負担すべき研究開発費を計算する。このような分担は、OECDの移転価格算定に関する指針に係るものであり、知的財産権の帰属、各法人の研究開発費用、及び各自のリスクを勘案した結果により、他社の研究開発費用を分担する必要があるかどうかを判断することとなる。
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