台湾専利法では、「物品の全て又は一部の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせる創作で、産業上利用可能なものは、設計専利を出願することができ、設計専利出願は、一設計ごとに出願しなければならず、同じ類別に属し、かつ慣習上組物として販売若しくは使用される二つ以上の物品は、一設計として出願することができる」と規定し、このような組物の設計(以下、『組物設計』という)を保護している。
一方で、組物設計は組物のセット販売や併用といった市場のニーズに応えるため、組物全体に視覚的創作を施している。この為、登録を受けようとする設計を解釈する際には、出願する組物を一の全体設計とみなし、それを分解してその中の一つ又は複数の物品を、登録を受けようとする設計として単独で解釈することができない。
このような状況下で、組物の外観設計について、いかに十分な保護を得るかが重要な課題となっている。
上記のテーマについて、最近の専利権侵害に関する財産権紛争の民事訴訟で観察することができる。
本件の係争設計専利は、「建築物の室内及び室外で用いる壁面装飾材」の設計で、磁器タイルセットの組物設計である。5つの部材からなり、各部材はいずれも長方形のシート状で、各シートの表面中央には長尺の溝が設けられ、さらに各部材の正面図から見ると、各部材の設計内容は、以下の通りである。
1. 部材1: 該溝の上方左側表面には、約3/4の長さに不規則な擬石彫刻の凸模様が施され、該溝の上方及び下方のその他の表面は平面模様となっている。
2. 部材2: 該溝の上方右側表面には、約1/4の長さに不規則な擬石彫刻の凸模様が施され、該溝の下方表面全ての長さに不規則な擬石彫刻の凸模様が施され、該溝の上方及びその他の表面は平面模様となっている。
3. 部材3: 該溝の下方表面全ての長さに不規則な擬石彫刻の凸模様が施され、該溝の上方表面全ての長さは平面模様となっている。
4. 部材4: 該溝の上方右側表面には、約1/4の長さに不規則な擬石彫刻の凸模様が施され、該溝の下方右側表面には、約3/4の長さに不規則な擬石彫刻の凸模様が施され、該溝の上方及び下方のその他の表面は平面模様となっている。
5. 部材5: 該溝の下方左側表面には、約1/4の長さに不規則な擬石彫刻の凸模様が施され、該溝の上方及び下方のその他の表面は平面模様となっている。

係争の権利侵害で訴えられた製品(以下、「イ号製品」)には6箱と3枚の磁器タイルがあり、これらの磁器タイルには1番から26番の番号が振られ、1・10・18・19・22・25番の正面外観が同じで、2・15・21番の正面外観が同じで、3・8・14番の正面外観が同じで、4・6・11番の正面外観が同じで、5・7・9・24・26番の正面外観が同じで、12・13・17番の正面外観が同じで、16・20・23番はそれぞれ異なり、上記のいずれかのグループに加えることができない。その内の、1・2・3・4・5・12・16・20・23番が、上記の各グループの正面外観となっている。

知的財産及び商事裁判所(以下、「知財商裁」)は、係争専利とイ号製品はいずれも建築壁面又は壁に用いる「磁器タイルセット」であり、両者の用途が同じであるので、係争専利とイ号製品は同一の物品であると認めた。そして、外観の同一又は近似を判断する際、知財商裁は次のように認定した。
① 4・6・11番の磁器タイルと係争専利の部材2は近似である。
② 2・5・21番の磁器タイルと係争専利の部材3は近似である。
③ 5・7・9・24・26番の磁器タイルと係争専利の部材4は近似である。
④ 12・13・17番の磁器タイルと係争専利の部材5は近似である。
⑤ 1・10・18・19・22・25番の磁器タイルと係争専利の部材1は近似でない。
⑥ 16・20・23番の磁器タイルの外観はそれぞれ同一でなく、係争専利の各部材と近似ではない。
上記の比較結果により、係争専利の一部の部材とイ号製品の一部の部材のみが近似であり、また組物設計は全体的な部材の組合せからなる全体的な外観を基準とすべきであるため、模様の配列や位置分布及び大きさの比率等の関係から、「1・10・18・19・22・25番」、「16番」、「20番」及び「23番」等の部材は、いずれも各部材が表す全体的な視覚効果において、係争専利の「部材1」及び「その他の部材」と明らかな差異がある。イ号製品は複数の26枚計9種の異なる外観の部材である磁器タイルからなる配列の組合せという全体外観であり、比べて係争専利は複数の5枚からなる配列の組合せという全体外観であり、両者は番号順に配列された組合せという全体外観において、明らかに異なる視覚効果をもたらしている。まして、イ号製品のうちの「1・10・18・19・22・25番」という部材は、一箱当たりの数量が非常に多く、該部材の表面模様が全体外観の配列の組合せ変化に与える影響が非常に大きいと言える。全体的に観察し、総合的に判断すると、イ号製品は係争専利と混同する全体的視覚印象があると認定するには不十分であるため、両者の外観は近似でないと認定できる。
知財商裁はまた、次のようにも認めている。
原告即ち専利権者は、壁面を敷設する際は随意に配列するだけであり、表されるものは一般的な石の不規則な紋様の特性に類似し、それが係争専利が求めているポイントであるため、イ号製品は専利範囲に含まれていると主張している。
しかし、係争専利は各部材で特定の面積比率の擬石彫刻凸模様を表した上で、改めて組み合わせて出願し係争専利権を取得していることから、その専利を受けようとする範囲は元々各部材からなる全体外観を基準としなければならず、当然ながら、全部または一部の石材模様のみでその専利権範囲を特定することはできない。まして、「1・10・18・19・22・25番」、「16番」、「20番」、「23番」等の部材は、いずれも係争専利の「部材1」及び「その他の部材」が表すものと明らかに異なる全体的視覚効果をもたらし、一箱当たりの「1・10・18・19・22・25番」の部材の数量から言えば、やはりイ号製品の各部材からなる全体外観が係争専利と混同する全体的視覚印象をもたらすと認定するには不十分である。
両者は異なる設計であり、イ号製品は係争専利の専利権範囲に含まれない。
上記内容から明らかなように、組物設計専利において、各部材間に多種の異なる配列の組合せ方があるとしても、本願のように一般的な石材模様の不規則な紋様特性を5つの部材の組合せだけで表すことは、実際には不可能である。けれども、一般的な石の不規則な紋様特性そのものが権利範囲であるといった主張をすることもできない。
イ号製品の部材の種類が多い場合、若しくは部材における一つの特定の部材の数量が他の部材と比べて多い場合、それが表す視覚印象と組物設計専利に相違が有ると判断され、権利侵害が成立しにくい状況に陥るかもしれない。
たとえ、イ号製品の一部の磁器タイルの外観が係争専利の一部の部材の外観に近似であったとしても、当該部分のみが近似しているイ号製品の単体若しくは配列の組合せを、係争専利におけるそれに対応する部材の単体若しくは配列の組合せと比較して、権利範囲に含まれると判断することはない。
この為、本願のような状況で、限定した部材の組合せで保護したい全ての状況を表すことができないとき、又は組物の部材のうちの単体若しくは複数の部材が特異な外観設計を有する場合、それらの部材を一緒に組物設計として出願すると同時に、全ての部材若しくは当該特異な外観設計を有する一部の部材を、別途独立した設計として出願すれば、さらに十分な保護を得ることができると言えよう。