自然法則を利用した技術的思想の創作であって、物品の形状、構造又は組合せに係り、産業上利用することができるものは、法により新型専利(実用新案登録)を受けることができる。そして、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、出願前の先行技術に基づいて容易に考案をすることができたときは、新型専利を受けることができない、と専利法で明文規定されている。
専利権が上記の状況にあるときは、何人も専利主務官庁に無効審判請求をすることができる。また、当業者が出願前の関連引例と出願時の通常の知識を参照して容易に考案をすることができるかについては、「技術分野の関連性」・「解決しようとする課題の共通性」・「機能、作用の共通性」・「示唆又は建議」を総合的に考慮して、複数の引例を組み合わせる動機付けになり得るかを判断しなければならない。
先般、ある新型専利に関連する行政訴訟があった。
この新型専利は「整理箱のフレーム組合せ構造」に係るものであり、経済部訴願委員会が下した“知的財産局による一部の請求項に対する無効審判請求の棄却”を取消す処分を不服として、原告(新型専利権者)が知的財産裁判所に提訴したものである。
本審において、知的財産裁判所の裁判官は次のように判示した。
「裁判において提出された証拠2は『置物棚のアセンブリ』に係り、証拠3は『置物箱のフレームの改良』に係り、証拠4は『プラスチック成型物組立に用いられるインサートパーツ』に係るものである。
証拠2・3はいずれも組合せ式の置物棚で、技術分野の関連性があり、且ついずれも複数の支柱を用いて係止方式により上下フレーム又は蓋体を結合させて、置物棚を組み合わせるものである。両者は機能又は作用に共通性があり、その組合せは係争専利に進歩性がないことを証明するに足るので、証拠2乃至4の組合せも当然ながら係争専利が進歩性を有しないことを証明するに足る。」
原告はこれを不服として、最高行政裁判所に上訴した。その際、次のように主張した。
「証拠2・3・4の国際特許分類はそれぞれA47B47/00、B65D5/00、F16L55/11*注であり、異なる技術分野に属し、解決しようとする課題も、機能又は作用の関連性も同一でない。発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって、これらの証拠を相互に組み合わせる動機付けがなく、係争専利の技術的特徴に関する示唆又は建議もなされていない。」
しかし、最高行政裁判所は、判決の中で次のように闡明した。
「いわゆる“属する技術の分野”とは、専利が利用される具体的な技術分野のことであり、具体的な技術分野は通常、専利の国際特許分類で指定された最も低い階層における分類と関係がある。
しかし、“属する技術の分野”が国際特許分類上で同一でなくても、該技術が応用される物・原理・メカニズム・作用等を考慮した上で、専利の発明が類似又は相似のものであると認めるときは、関連技術分野であると認定すべきである。
証拠2・3と係争専利はいずれも〈支柱・ブラケットを用いて係止方式により上蓋と台座を結合させて、該置物容器の組み合わせ構造を成す〉というものであり、利用する技術手段及び作用が近似であるので、類似又は近似の技術分野であると言える。
したがって、原判決が証拠2・3・4の組み合わせについて係争専利の一部の請求項が進歩性を有しないと認めたことは、合理的でないとは言えないため、上告を棄却する。」
上記の最高行政裁判所の見解からわかることは、国際特許分類が具体的な技術の分野と関連があり、属する技術の分野に関連があるかどうかを判断できる要素の一つであるとはいえ、属する技術の分野が国際特許分類上で同一でなくても、該技術が応用される物・原理・メカニズム・作用等を考慮した上で、関連技術分野であるかを判断すべきということである。そして、技術分野の関連性は、進歩性を否定する際に、複数の引例を組み合わせる動機を有するかを判断する要素の一つに過ぎない。もし、複数の引例の技術の分野に関連性があっても、通常は当業者がこれらの引例を組み合わせる動機を有すると直接認定することは難しい。原則的に、更に「解決しようとする課題の共通性」・「機能、作用の共通性」・「示唆又は建議」等のうちの一つ以上を考量して、これらの引例の技術内容を組み合わせる動機を有するかを総合的に判断しなければならない。その中の一つの事項を欠いているからといって、組み合わせる動機がないと判断してはならない。
*注:引例2~4にはそれぞれ1つずつ国際特許分類が付与されている。
A47B47/00:各要素からの組立てまたは分解が可能な形状を特徴とするキャビネット, ラックまたはシェルフユニット
B65D5/00:一以上の紙製のブランクを折り曲げたり,組立てたりして形成する多角形断面の剛性または準剛性容器、例、箱.カートンまたはトレー
F16L55/11:管又は管系における使用者及び管又は管系に関する設備及び備品