国際優先権に関する規定である台湾専利法第28条によると、出願人は同一の発明につき台湾で専利出願を行う場合、外国での出願を基礎出願とすることができ、その外国での出願とは、台湾と相互に優先権を承認しあう国、又は世界貿易機関の加盟国における最初の出願を指す。また、同法第29条によると、国際優先権を主張する出願人は、台湾で出願するときに基礎出願の最初の出願日、出願番号、出願を受理した国と地域を示した上、優先日後16か月以内に基礎出願を受理した国又は世界貿易機関加盟国による出願の受理を証明する書類(即ち、優先権を証明する書類)を提出しなければならない。もし出願時に出願人がこの規定に違反すれば、優先権を主張しないものと見なす。しかし、専利法と専利法施行細則では、優先権を証明する書類とは何かが明確に規定されていないため、実務上、どのような書類が優先権を証明する書類になるかについてしばしば紛争が生じている。この論題について、台湾の最高行政裁判所は、2019年11月13日に下した3つの判決(108年度判字516号、517号、518号)で本格的かつ詳細に論じている。
この三つの判決は、その事実関係が類似し、同一の専利の出願人(以下、原告と称する)を原告とするものである。原告はもとより経済部知的財産局(即ち台湾特許庁。以下、知的財産局と称する)に三つの発明専利(特許)を出願したが、各々の米国出願を優先権の基礎とした上、米国出願を証明するための書類として、米国出願の出願受領書(Filing Receipt)と原告が自らプリントアウトした明細書の写しを提出した。しかし、知的財産局は、原告が提出した書類は米国特許商標庁(USPTO)が作成した、優先権を証明するための従来の書類(出願日、出願番号、米国特許商標庁の署名と印鑑が印刷されたカバー、及び米国出願の明細書、図面等の資料)と異なるため、原告が提出した書類では優先権を証明できないとして、三つの出願全てにおいて原告が優先権を主張していないと見なす行政処分をなした。
出願人は、上記の行政処分を不服として、三つの行政訴訟を提起した。それに対し、知的財産裁判所は、同一の論理に基づいてそれぞれ判決(106年度行専訴字第68号、107年度行専訴字第15号、106年度行専訴字第78号)を下した。それらの判決によると、優先権を証明する書類とは何かは専利法と専利法施行細則に規定されていないほか、専利審査基準に「16か月以内に先に優先権を証明する書類の最初のページの写しを提出し、後ほど正本を補充提出することができる」と明文規定されているので、基礎出願に出願日が付与されたことを証明できるかどうかは、優先権を証明する書類であるかどうかに対する判断のポイントとなる。なお、知的財産裁判所はもう一歩踏み込み、出願者が提出した出願受領書は、米国特許商標庁に発行され、且つ出願国、出願日、出願番号が記載されたものであり、出願日を付与するための最低限の条件を満たさなければ発行されないものであるので、原告が提出した出願受領書は形式上、知的財産局が求める、優先権を証明する書類の最初のページに記載されるべき情報に合致するとした。そのため、知的財産裁判所はこの事実により、原告が提出した出願受領書が優先権を証明する書類の最初のページの写しに相当するものと見なせるとし、合理的な補充提出期間内に優先権を証明する書類の正本を補充提出して優先権を主張できると判断した。
上記の知的財産裁判所の判決に対し、被告である知的財産局は、その審査に重大な影響を与えかねないとして、台湾の最高行政裁判所に上告を提起して積極的に原審判決を覆させようとした。そして、最高行政裁判所は、最終的に上記の三つの判決を下すことで下級審の判決を覆した。最高行政裁判所の判断では、専利法は優先権を証明する書類の内容を明確に規定していないが、出願人が当該書類を提出する目的は、国際優先権の要件(即ち、「基礎出願の出願国での出願で国際優先権を主張できるか」、「台湾出願が期間の規定に符合するか」、及び「基礎出願と台湾出願が同一の発明であるか」)を満たすかどうかを知的財産局に判断させることである。さらに、専利法に規定される「出願の受理を証明する書類」とは、基礎出願の出願国が発行した証明書類であり、その内容は基礎出願の出願日、出願番号を証明できる必要があるほか、その出願国の専利主務機関の認証を受けた、基礎出願の出願書類の原本に合致する出願書類の謄本(明細書、専利請求の範囲、図式を含む)を添えなければならない。換言すれば、最高行政裁判所の判断では、出願人が提出した優先権を証明する書類は、当該国の専利主務機関の認証を受けた、基礎出願の内容を確認できるものでなければならない。従って、原告が提出した出願受領書等の書類は優先権を証明するために用いられる米国特許商標局の書類ではないため、原告は優先権を主張することができない。
現行の専利審査基準(2018年11月1日版)の第1篇第7章1.5節は、既に優先権を証明する書類についてより具体的な説明を行い、優先権を証明する書類に発行日、出願の出願日、出願番号が記載されなければならないほか、出願日に開示された技術的内容(即ち明細書と図式)を添えなければならないとしている。なお、今後出願人が法令の許容しない書類を優先権を証明する書類であるとして紛争が起こることを避けるために、専利審査基準は、出願受領書、電子受領書、受理通知書、専利証書、許可通知、専利公報、関連書類の写し等は優先権を証明する書類ではなく、裁判所又は他の官庁の公認証を受けた優先権を証明する書類の写しで代替することもできないと明記している。そのため、踏むべき手続きを忽せにし、又は法定期間を過ぎることで権利を失うことを避けるべく、専利の出願人は出願手続に係る規定を正しく理解、順守する必要がある。
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