SAINT ISLAND INTELLECTUAL PROPERTY GROUP

　当事務所は、2018年第一期季報に「台湾薬事法におけるパテントリンケージ制度の紹介」を掲載し、台湾で導入されるパテントリンケージ制度、とりわけ、新薬と後発医薬品との間に予想される特許係争を早期に解決するための一連の仕組みについて紹介した。

　前文にもあるように、医薬品特許係争の早期解決を可能とし、台湾医薬品業界の発展に寄与すると言われるパテントリンケージ制度を導入した台湾薬事法改正法が2017年12月29日、立法院の可決により成立した。現時点(2018年12月)において施行日は決定されていないが、2019年初頭には施行されると予想されている。

　中央衛生主務官庁(衛生福利部)は、パテントリンケージ制度の実施に向け、2018年9月11日付で、特許情報に係るリストの登載及び管理について規定した「パテントリンケージ施行規則」の草案を公示した。以下、上記薬事法の改正法及びパテントリンケージ施行規則における特許リストの登載について、要点をまとめて紹介する。

1. この制度を活用するためには、やはり特許情報の提出・報告が何より重要である。下図に示すように、新薬の許可証所有者（又は、特許権者の同意を得た者）は、当該新薬の許可証の受領日の翌日から45日以内に、当該新薬の許可証に係る特許リストを提出し、パテントリンケージ登載システムに登載しなければならない。また、上記施行規則の草案によると、以下(1)～(3)の発明に係る特許しかリストに登載できない。
   
   　（1）物質：新薬製剤の有効成分そのもの
   　（2）組成物又は処方：新薬製剤の有効成分の組合せ又は処方(formulation)
   　（3）医薬的用途：新薬の許可証に記載されている適応症の全て又は一部
    
2. 登載のためにパテントリンケージ登載システムに提出すべき情報には、関連特許権の特許証番号、特許権の期間満了日、特許権者・専用実施権者及びその代理人の情報が含まれる。また、医薬品の用途に係る発明である場合は、当該医薬品の許可証に記載された適応症に対応する請求項の項番号も併せて注記しなければならない。
    
3. パテントリンケージ制度を順調に実施させるために、薬事法の改正法には、経過規定について定めた条項が設けられている。すなわち、パテントリンケージ制度の施行日に於いて既に特許リスト登載可能期間(受領日の翌日から45日)を過ぎた新薬の許可証について、当該新薬の許可証所有者がパテントリンケージ制度を利用することを希望する場合は、当該改正法の施行日から3ヶ月以内であれば、特許リストを提出することができる。
    
4. 特許権存続期間の延長登録、請求項の訂正、特許権取消決定の確定、特許権の消滅、特許権者又はその代理人の情報変更等を含め、パテントリンケージ登載システムに登載した特許権に係る情報に変更があった場合、新薬の許可証所有者は、上記変更が生じた日の翌日から45日以内に、関連情報の更新又は削除手続きをしなければならない。
    
5. 新薬の許可証所有者による特許リスト不正登載を防ぐため、パテントリンケージ登載システムに登載された特許権に係る情報は、公衆の閲覧に付されることになる。登載された特許権の情報に疑義が生じた場合、例えば、①リストされた特許権に係る発明が許可証に記載した新薬と無関係である、②リストされた特許権に係る発明が上記物質、組成物又は処方、医薬的用途のカテゴリーに該当しない、③登載された特許権に係る情報に誤りがある、④上記4.に記載された情報の変更があったにもかかわらず、関連情報の更新又は削除が行われていない、等の場合、何人も書面に理由を明記し証拠を添えて、中央衛生主務官庁にその旨を申し立てることができる。中央衛生主務官庁は、当該書面を受領した日の翌日から20日以内に当該書面を新薬の許可証所有者に転送する。新薬の許可証所有者は、当該書面を受領した日の翌日から45日以内に、理由が明記されている書面を以って中央衛生主務官庁に応答しなければならず、状況に応じ、登載した特許権に係る情報の更新又は削除手続きをすることもできる。
    
6. パテントリンケージ登載システムに登載した特許権に係る情報につき、刑事責任が問われる程の詐欺又は虚偽不実の手口にて登載を行った者は、司法機関において責任を追及されることになる。また、新薬医薬品メーカーが後発医薬品の販売を妨害するために、虚偽の特許リストを登載した場合、公正取引法における競争制限行為と見なされる可能性もある。自らの権益を守るためにも、新薬の許可証所有者は、関連法規を順守し、特許リストにて特許権に係る情報を詳しく、且つ、確実に登載すべきである。