知的財産権契約においては、契約当事者の債務不履行時における違約金条項を設けることが一般的である。台湾の実務上において、違約金条項は二種類に分けられる。一つは、損害賠償予定条項、もう一つは、違約罰(ペナルティ)である。両者の相違は、後者の場合、約定で定められた違約金のほか、他にも損害があった場合、さらに損害賠償を請求することが可能な点である。つまり、後者のほうが債務不履行をされた側をより強く保護する性格のものと言える。
しかし、どのような違約金条項であれ、際限なく違約金の金額を定められるわけではない。台湾民法第252条には、約定の違約金が高すぎる場合、裁判所は相当の金額にまで減額できると規定されている。今年8月、最高裁判所は、著作権授権契約における違約罰を減額する判決を下した(2018年台上字776号)。その概要は以下の通りである。
<事件の争点>
原告は被告にA、Bという二つのテレビドラマの制作を委託した。契約には、被告はドラマの制作をする前に原著作権者の許諾を得ること、及び、国内外での当該ドラマの放送権あるいは再放送権を原告に許諾し、又、ほかの著作権者からも許諾を取得しておくことが規定され、契約に反した場合、違約罰としてNTD 300万(以下、300万元と表記)を支払うべき旨が定められていた。10年後、原告は完成したドラマAにつき、第三者に放送権を再許諾したが、被告から、原著作権者からは10年間のドラマ化の翻案権しか同意を得ていないと知らされ、前記再許諾は取消しを余儀なくされた。そこで原告は被告に再許諾金の損失及び違約罰300万元を支払うよう訴えを提起した。被告は違約金が高すぎると主張し、裁判所に違約金の減額を求めた。
<知的財産裁判所の見解>
知的財産裁判所(日本の知財高裁に相当)は、違約罰の減額について、当該違約罰の金額はドラマAの製作費用のわずか4.8%を占めるに過ぎず、また、原告は被告による契約違反により、ドラマAの放送権の再許諾による授権金取得の機会を何回も失ったとして、当該違約罰の金額は妥当であり、減額の余地はないと判断した。
<最高裁判所の見解>
最高裁判所は知的財産裁判所の判決を破棄し、過去の判決における違約罰減額が認められる要件を総括し、判決において次のように述べた。
債務が一部履行された場合、裁判所は債権者が一部の履行により受けた利益を考慮し、違約金を減額することができる。これは民法251条に明文化されていることである。殊に当事者が違約罰を約定した者である場合、債務者の債務不履行時に、債権者は債務者に違約罰の支払いを請求するほか、債務履行の請求あるいは債務不履行による損害賠償をも請求できるため、損害はある程度填補される以上、当該違約罰の金額の当否につき、裁判所は職権をもって慎重に参酌すべきである。本件の場合、違約部分はドラマAのみであり、ドラマBは含まれていない。原告はドラマAにつき10年間のドラマ化の翻案権を得た以上、その履行により原告がどのくらい利益を受けたか、また、損失が軽減されたか否かにつき、知的財産裁判所が参酌したかどうかは不明である。よって、原判決を破棄し、本件を知的財産裁判所に差し戻す。(知的財産裁判所は、)一部履行により違約金がどれほど減額可能であるかを調査し認定すること。
実務上、違約金の減額が認められなかった判決はさほどに多くはなく、今回の知的財産裁判所の判決も最高裁判所により疑問視された。今回の最高裁判所の判決から知り得るのは、知的財産権契約において、契約の対象物は、複数の特許権、商標権又は著作権等、複数あることもあり、その中の一つの権利の対象について債務だけが履行されず違約となり、かつ、契約時から相当の時間内、契約が履行されており、その後やはり訴訟に至った場合、裁判所が違約罰の減額を認めないとすれば、判決理由において、債務の一部履行により受けた利益及び損失の軽減につき、明確に説明しなければならないということである。
また、契約当事者も複数の知的財産権について契約を締結し違約金条項を入れる場合、上記の要件を考慮し適切な約定を結ぶことで、争議を避けるよう努めることが必要であろう。
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