通常、医薬品の製造・販売に必要な許可の取得には、相当の時間がかかっている。この為、医薬品、又はその製造方法が専利権に保護されるにもかかわらず、許可の取得に長い年月を費やした場合、実質的に専利権存続期間の短縮になってしまう。専利権者の利益を補うために、諸外国の立法と同じく、台湾の専利法では、医薬品に係る専利権存続期間の延長に関する規定が設けられている。
台湾専利法によると、医薬品に係る専利の専利権者は、一回に限り専利権存続期間の延長(最長5年間)を出願することができる。そして、台湾の「専利権期間延長許可規則」(中国語:專利權期間延長核定辦法)の第4条では、医薬品について専利権存続期間の延長を出願できる期間が国内外における臨床試験の期間を含むと規定している。また、台湾知財局が公布した「専利審査基準」(以下、審査基準と称する)の規定によると、台湾における臨床試験の開始日は、衛生福利部が臨床試験の実施に同意する日であり、試験の終了日は衛生福利部がその試験の報告書を認可する認可書の日付である。これについて、台湾の裁判所も上記の期間の計算方法に同意している。しかし、外国における臨床試験期間に対する認定について、審査基準に規定があるものの、台湾の行政官庁と裁判所は異なる見解を持っている。
近頃、外国における臨床試験期間に対する認定が不当であるとして、原審(知的財産裁判所)に差し戻された最高裁判所の判決があった(106年度台上字第1904号判決)。この案件において、出願日が1994年5月14日の292971号発明専利(以下、本件専利と称する)に、どのように「専利権期間延長許可規則」の第4条に規定の“外国における臨床試験期間の計算方法”を適用すべきかについて、台湾の知的財産局・知的財産裁判所・最高裁判所は、各々異なる見解を示している。下記にてそれらの見解を整理する。
1. 知的財産局
年の専利権期間延長許可規則の第4条は、「医薬品又はその製造方法について、専利権存続期間の延長を出願できる期間は下記を含む…三、外国における臨床試験の期間において専利権存続期間の延長を出願する場合、その生産国において販売の許可を得るための臨床試験の期間」と規定している。これによって、外国当局が認可した臨床試験報告書の先頭ページに記載された日付を以て外国における臨床試験の開始日及び終了日とし、台湾における臨床試験の期間に合わせて本件専利に2年の専利権存続期間の延長を許可した。
2. 知的財産裁判所
知的財産裁判所審理法の第16条により、知的財産裁判所は知的財産局が許可した専利権存続期間の延長が不当でないかどうかについて審査し、不当であると判断した場合、その延長を取り消す権限がある。そして、外国における臨床試験の期間について、1999年の専利権期間延長許可規則の文言を解釈すれば、臨床試験の開始日から完成日までを指すべきであり、臨床試験前の準備期間又は臨床試験後の報告書の作成時間を含まない。したがって、臨床試験の期間は最初の患者に投薬した日から最終の患者に投薬した日までである。このため、知的財産局による専利権存続期間の延長許可は取り消すべきである。
3. 最高裁判所
どのように臨床試験の期間を計算するかについては、専利法の立法目的に基づいて検討しなければならない。1992年12月30日の専利法改正案の説明によると、主務官庁が医薬品の許可証を発行する前に、臨床試験の結果を記載する報告書を審査しなければならない。医薬品の臨床試験においては、試験データを比較・解読してから初めて試験結果を示したり臨床試験に意味付けたりすることができるということから、臨床試験の期間は、臨床試験の開始日から試験結果が示される日までの期間を指すべきである。一方、試験結果が示される日が試験報告書の日付であるのか、それともその他の日であるかについては、原審が審査をしなければならない。
2018年4月11日に知的財産局が公布した改正後の審査基準第2篇第11章「専利権期間延長の審査基準」によると、国外における臨床試験の開始日は、医薬品規制調和国際会議(ICH)が規定する試験開始日(study initiation date)と試験終了日(study completion date)に合致しなければならない。しかし、医薬品規制調和国際会議の規定では、試験開始日は最初の患者が臨床試験に登録される日、又はその他の検証できる日(first patient enrolled, or any other verifiable definition)であり、試験終了日は最終の患者に対する試験が終了する日である。これは、上記の台湾最高裁判所の見解と異なる。上記の判決等は私人間の民事訴訟の判決であり、知的財産裁判所を拘束する効果がない。したがって、目下、知的財産局の審査を受けている専利権存続期間の延長の出願は、知的財産局が公布した審査基準によらなければならない。一方、最高裁判所は上記の案件を2018年の6月に知的財産裁判所に差し戻したので、この案件の後続の経過について観察していく必要がある。
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