先行技術を組み合わせることにより専利の進歩性を争うことは、台湾の専利民事訴訟や行政訴訟でしばしば攻防の焦点となる。この点について、当所は以前、2024年第4四半期の記事と2025年第1四半期の記事で、台湾最高裁判所の111年度第台上字第186号判決と113年度台上字第459号判決、並びに最高行政裁判所の110年度上字第597号判決と113年度上字第132号判決を取り上げた。これらの判決は、進歩性を判断する際、まず当業者の技術レベルを調査し、多数の引例のうちから、どれが主要引例であるかを明確にし、その専利が長期間存在した課題を解決したかどうか、そして他者に専利の実施許諾をするといった商業上の成功等の副次的な判断要因を総合的に考慮する必要があることを強調している。そのうち、最高裁の113年度台上字第459号判決は、当業者が先行技術に基づいて発明を容易に完成できるかどうかについて、「明らかに試みる意思がある」と「明らかに実行する意思がある」という「could-wouldアプローチ」で検討する必要もあると指摘している。これは、進歩性の判断において、単に理論上実施可能かどうかだけでなく、個々の事案において、研究開発を促し、成功に導くほどの誘因、事実的な裏付け、又は後押しがあるかどうかも考慮する必要があることを意味している。
台湾最高裁の113年度台上字第459号判決は、台湾の司法最高機関が進歩性の判断に「could-wouldアプローチ」の適用を初めて明文で認めた事例と言える。その後、最高裁は113年度台上字第453号判決で、(「明らかに試みる意思がある」又は「明らかに実行する意思がある」のどちらかに該当するか否かを区別するために)外部証拠で当業者の主観的な考えを認定しやすくするために、引例と専利の技術分野との関連性、解決しようとする課題の共通性、機能又は作用の共通性、教示又は提案等の要素を考慮すべきであると示した。これらの要素が多いほど、進歩性を否定するに足るほどに組み合わせる動機付けがあることになる。
最高裁判所による前述の2つの民事判決に引き続き、知的財産及び商事裁判所も2025年8月25日に下された113年度行専訴字第49号の行政判決において、「could-wouldアプローチ」を適用した。この事件の専利発明は、両刃カッターと四刃カッターの両方を取り付け可能なスパイラルカッターヘッドに関するものである。知的財産及び商事裁判所はまず、複数の引用文献、及び本件の専利明細書に記載された先行技術に基づき、当業者の技術レベルを認定した。さらに、知的財産及び商事裁判所は、スパイラルカッターヘッドに四刃カッター又は両刃カッターを取り付けた後、当業者が「どのように他のカッターを取り付けるか」という技術的課題に直面すると判断した。このとき、そのうちの一部の先行技術を参照した場合、客観的な視点から見れば、当業者が他の先行技術が示した解決策を試みることは合理的である。知的財産及び商事裁判所は、これらの先行技術の関連性、解決しようとする課題の共通性、機能又は効果の共通性、そして教示又は提案を判断基準とした。したがって、知的財産及び商事裁判所は、それらの引例を根拠とする場合、当業者が先行技術を組み合わせる動機付けを有することは明らかであり、本件の専利の技術的特徴を実現するために先行技術を組み合わせる意図を持つことも明らかであり、ただ単に後知恵をもって先行技術の組み合わせを試みただけではないと判断した。
前述の最高裁判所、及び知的財産及び商事裁判所における「could-wouldアプローチ」に関する判決を参照すると、裁判所は、組み合わせる動機付けの有無を判断する際、技術分野の関連性、解決しようとする課題、機能又は効果の共通性、教示又は提案等の本来の要素を考慮するほかに、さらに「明らかに試みる意思がある」のか、または「明らかに実行する意思がある」のかを見極めるように見受けられる。台湾の専利審査基準に「could-wouldアプローチ」に関する明文の規定がないため、知的財産及び商事裁判所、又は最高裁判所や最高行政裁判所のような司法最高機関が、後続の民事訴訟又は行政訴訟においてこのアプローチをどのように適用していくかは、注視に値する。さらに、前述の判決を受け、行政訴訟の審理において、引例を組み合わせる動機付けについて知的財産及び商事裁判所が無効審判の請求人に対しより有力な説明を求めることも見られるようになった。
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