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法令検索サイトの著作権に関する刑事判決

    2025年6月24日、台湾の新北地方裁判所は、リーガルテックサービスを提供するベンチャー企業のLawsnote社が、「法源」という法令検索サイトが作成・編集した法令の沿革を無断複製し、著作権侵害をしたとして、その責任者に実刑判決(111年度智訴字第8号。以下、本件判決と称する)を下した。

    Lawsnote社は台湾の弁護士資格を持っている郭氏が2016年に設立した会社であり、「Lawsnote」という台湾の法令検索サイトを運営している。その事業目的は、法律業界に革新的な検索サービスを提供することであるという。一方、1986年に開設された「法源」は、その豊富な法令データにより台湾において最も著名な法令検索サイトの一つとして知られている。本件判決によると、2018年から2019年の間、郭氏と共にLawsnote社を設立した謝氏は、六つのWebクローラーを開発・利用して、自動的に「法源」のデータベースから法令、添付資料、法令沿革を抽出していた。Lawsnote社による無断複製に気付いたあと、「法源」の運営会社の法源社は2021年に刑事告訴を提起した。この事件には主な争点が二つある。(1) 「法源」が編集した法令の沿革が著作権の保護対象になるか(即ち、法令の沿革に著作物性があるか)。(2) Lawsnote社はフェアユース(公正利用)を主張できるか。裁判所はこの二つの争点のいずれについてもLawsnote社に不利な判断を下した。

    法令の沿革の著作物性について、Lawsnote社は、「法源」から抽出された法令の沿革(そのファイルの総数が98,068件に及ぶ)について、著作権の保護対象ではなく、たとえ著作権の保護対象であるとしても、「マージ理論」(doctrine of merger)によりLawsnote社は侵害責任を負わないと主張した。しかし、裁判所は、著作物が最低限の創意のひらめきがあれば著作権の保護対象になる上に、「法源」によるデータの選択、配列、表示方法に著作権の保護対象になるための最低限の創意のひらめきがあるとして、「法源」から抽出された法令の沿革が著作権の保護対象ではないというLawsnote社の主張を否定した。そして、裁判所は「マージ理論」による抗弁も否定し、他の法令データベースが異なる方法で法令の沿革を表示しているため、法令の沿革を表現するには特定の限られた表現方法しかないわけではないとした。

    フェアユースの成否に関して、裁判所は、利用の目的及び性質、著作物の性質、利用の質と量、及びそれが著作物の全体に占める割合、利用の結果が著作物の潜在的な市場と現在の価値に及ぼす影響について考慮した。そして、フェアユースに関する米国のThomson Reuters v. ROSS Intelligence判決を引用したところ、裁判所は、Lawsnote社による「法源」のデータの利用は本質的に商業的利用である上、「法源」から大量のデータを抽出・ダウンロードしたことで、Lawsnote社が「法源」が編集した法令の沿革を丸ごと複製したと認定した。

    これに対し、Lawsnote社は、法令の内容への公衆のアクセスを容易にすべきであったり、「法源」と異なって「Lawsnote」が研究向けのプラットフォームであったりすると弁解した。しかし、裁判所は、Lawsnote社が法源社のようにデータ収集に必要な長期の努力や出費をかけることを回避するという不正手段によって競争優位をもつことで、法源社が提供する商品の市場に危害を与えたとその弁解を一蹴し、フェアユースが成立せず、郭氏、謝氏及びLawsnote社が著作権侵害責任を負うべきであると判断した。

    本件判決は未だ確定しておらず、今後裁判の行方がどうなるかは予断できないが、本件判決は下記の教訓を示唆してくれる。先ずは、コンテンツを利用しようとする場合、必ずその出所を確認すること。利用許諾付きのコンテンツを利用することは時間的コストがかかるが、法的リスクを回避することは可能である。次に、何ら創意工夫もせずにただ他人の著作物を丸ごと複製するだけの場合、フェアユースが認められる可能性が低いということ。最後に、この事件は、著作物をAIトレーニングに利用することと関わらないが、今後データスクレイピングで紛争が生じる場合、裁判所がどう扱うかを示唆し、裁判所にとって著作物利用の目的や性質、市場に与えられる影響がやはり最重要な判断要素になるかと思われる。

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