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他人の先使用商標を意図的に模倣したという権利瑕疵は、商標権譲受時に包括承継される

    台湾商標法の規定では、同一又は類似の商品もしくは役務において先に使用されている他人の商標と同一または類似であり、出願人が当該他人と契約、地縁、業務上の取引またはその他の関係により当該商標の存在を知っており、模倣を意図して登録出願をする場合、その登録は認められず、ただし、当該他人の同意を得ているときは、この限りでないとされている。

    最高行政裁判所91年度判字第1382号行政判決の見解では、商標が前述の「登録を受けることができない事由」を有するか否かは、その商標自体が当該条項の構成要件を満たすかどうかで判断されるとしている。

    商標権者が原出願人であるか、または譲受によって取得したものであるかは関係が無い上、商標の使用には継続性があり、当該商標のすべての権益及び瑕疵は、商標専用権の法的移転が完了後、自動的に商標専用権の譲受人が包括的に承継することになる。

    先般、知的財産及び商事裁判所(以下、知財商裁という)は、ある行政訴訟において同様の見解を維持し、商標の譲受人は商標権のすべての権益及び瑕疵を包括的に承継すべきであり、商標権者の契約紛争により、左右されるものではないと認めた。(知財商裁113年度行商訴字第19号行政判決、判決日2024年11月1日)。

    本文では、以下のようにその事案と判決の要約を説明する。

    訴外人「艾麗雅国際股份有限公司」(以下、艾麗雅社という)は、2016年8月12日に登録出願第01840068号「DT56a」商標(以下、係争商標という)を出願し、第5類の栄養補給品の使用を指定した。2019年、当該商標は「慕康生技醫藥股份有限公司」(以下、商標権者という)に譲渡されたが、2021年、イスラエル企業セキュア社(以下、無効審判請求人という)は、係争商標の出願人である艾麗雅社が、「DT56a」商標が無効審判請求人が先に使用している商標であると知っていたとして、係争商標に対し商標法第30条第1項第12号に基づき無効審判を請求した。そして、知的財産局が無効審判成立の処分を下したため、商標権者は処分を不服として訴願を提起したが、訴願決定機関は知的財産局の無効審判成立の処分を維持した。その後、商標権者は行政訴訟を提起した。

    本件の主な争点としては、①係争商標の出願人である艾麗雅社が係争商標の登録出願をした際に「DT56a」が無効審判請求人の先使用商標であることを知っていたか、②艾麗雅社が無効審判請求人の同意を得て係争商標の登録を受けていたか、及び③同意を得ていなかった場合、譲受人が係争商標の権益と瑕疵を包括承継するか、という三つがある。

    一つ目の争点について、知財商裁は、無効審判請求人が2012年に訴外人の大統貿易株式会社とFEMARELLEシリーズ商品(係争商標商品を含む)に関する独占販売契約を結び、艾麗雅社が2013年9月27日にその販売契約のすべての権利義務を承継したと認定した。

    これにより、無効審判請求人と艾麗雅社の間には販売取引関係があり、艾麗雅社が業務取引の関係で係争商標の存在を知っていたと認定された。

    二つ目の争点について、知財商裁は次のように述べている。

    「販売契約内容に基づくと、契約当事者は係争商標の出願権や権利帰属について約定していない。また、契約内容に記載されている通り、FEMARELLEシリーズ商品に関する知的財産権は、すべて無効審判請求人に帰属する。前述の契約内容で無効審判請求人が係争商標の登録に同意していると明確に判断することはできないが、係争商標の登録出願段階において、艾麗雅社が提出した知的財産局の拒絶理由通知書に対する意見書では、艾麗雅社が無効審判請求人の商標登録出願に協力し、後に無効審判請求人に商標権を譲渡する必要があったと主張している。しかし、艾麗雅社は解散となり、清算を完了させるまでに、約束をしていた無効審判請求人に商標権を譲渡せず、それどころか商標権者に譲渡したため、善意で模倣の意図がなかったとは認め難い。」

    つまり、知財商裁は、上述の理由を踏まえて、艾麗雅社が係争商標を登録出願した際に無効審判請求人の同意を得ていないと認定したのである。

    三つ目の争点について、艾麗雅社は係争商標を登録後に無効審判請求人に譲渡する必要があったと表明していたが、艾麗雅社が解散となり、その清算を完了させるまで、商標権の譲渡をしてはいなかった。商標権者は無効審判請求人との間に販売契約上の紛争があると述べていたが、商標権者は艾麗雅社の唯一の株主であり、係争商標を承継したのであるため、係争商標の権益及び瑕疵を包括的に承継すべきである。

    知財商裁は、上記を総合的に考慮し、係争商標の出願について引用する商標法の規定を適用すると、登録すべきではなかったと認定した。

    本件からわかるように、譲受人は商標権を譲受する場合、対価の有無にかかわらず、移転する商標が第三者の先使用したの商標を模倣した可能性が無いかについて、特に留意する必要があると思われる。

    本件のように、権利瑕疵のある商標権を譲受する場合は、善意であるかどうかを問わず、商標が取り消されるリスクがある。善意の譲受人は、事前にインターネットで検索して確認する他に、第三者が使用する同一または類似の商標があるかどうかを調査することもできる。もしそのような状況や商標があれば、商標権の無効審判を請求されないように、譲渡人に第三者の同意を得た商標登録である旨の書類の提出を求めることが望ましい。

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