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結晶形請求項の明確性と実施可能性に関する最近の最高裁判決の概要

    結晶形の発明は、全く新しい化合物の保護を求めるというものでないことから、一般的に、特許出願時における進歩性に対する疑義克服が難しいと言える。そして、特許を受けることができたとしても、権利主張時にやはり特許無効を申し立てられるリスクに立ち向かわなければならない可能性がある(弊所ウェブサイトにおける結晶形発明に関するレポートを参照されたい)。

    また、進歩性の他に、請求項を特定する明確性要件や、明細書の開示が実施可能性要件を満たすか等も、結晶形発明の特許明細書作成時に注意すべき議題である。

    2024年1月、台湾最高行政裁判所は、特許第I406661号に対し、請求項特定の明確性要件違反、並びに明細書開示の実施可能性要件違反と認定した(最高行政裁判所111年度上字897号判決)。

    この判決に関する争点の概要を、以下にて紹介したい。

請求項11における限定

    『少なくとも1つが7.2°、…、19.2°、…、27.0°(2θ度)から選ばれる最大値を有する粉末X線回折(XRPD)パターンを有することを特徴とする化合物Xの実質的に純粋な結晶形Bであって、

     ここで、実質的に純粋とは、50%を超える結晶X化合物が前記の結晶型に現れることを意味する。

    (※化合物Xの原名は長いため、本文においては省略する。)

請求項12における限定

    ※請求項11における「少なくとも1つ」を「少なくとも4」にする他は、請求項11と同じである。

特許明細書における開示

    ※この化合物Xの結晶形は、A、A'、A"、Bなど多くのタイプを含み、各結晶形について、明細書では以下で例示する結晶形Aに関する記載を含んでいる。

    「結晶形Aは少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つ…があり、最も好ましくはすべてが約…、19.2°、…から選択されるXRPDパターンによって特徴付けられる2θ度の最大値を示す。」

 係争明細書における結晶形Aに関する例示的記載から、該出願の明細書で開示された「いくつかの結晶形(例えば結晶形A)を特徴付ける少なくとも1つの2θ度の最大値(例えば19.2°)」が、「結晶型Bを特徴づけるための少なくとも1つの2θ度の最大値」と同一であることが分かる。

    このため、裁判所は、結晶形B、AまたはA"等は、単なる名称(コードネーム)に過ぎず、同じ2θ度の最大値で定義される結晶構造は同じであるはずで、請求項11と12において、結晶形Bをそれぞれ「少なくとも1つ」と「少なくとも4つ」の2θ度の最大値でこの結晶特徴を定義し、明細書に開示の他の結晶形(例えば結晶型A、A"等)も、同じく1つまたは4つの2θ度の最大値で結晶構造を特徴づけ、結晶形Bは、これらの他の結晶型の結晶構造と区別することができないため、請求項11及び12の発明が「実質的に純粋な結晶形B」であるか、あるいは「実質的に純粋な結晶形A、A"等」であるかを当業者が判読できないとして、請求項11と12が明瞭でないと判定した

    この他、係争特許明細書には、いくつかの特定の溶媒がいずれも結晶形A及びBの「混合結晶形」状態を生成できると開示されており、通常の知識を有する者は当然ながら結晶形Bがその他の結晶形と混合結晶形状態であってもよいと理解することができる。

    裁判所が上記のように結晶形Bがこのようなその他の結晶形の結晶構造と区別できないと認定した状況で、請求項11・12における「実質的に純粋な結晶形B」を解釈すると、そこに含まれるその他の成分は、「不純物」以外のその他の結晶形が混合されている可能性を排除することができない。しかし、係争特許明細書には、混合結晶形を呈する状態で、結晶形Bの含有率が50%を超えると判断するために、どのような技術手段が必要であるかが開示されていない

    これにより、裁判所はさらに、「請求項11・12に対応する明細書の内容が明確かつ充分に開示されておらず、当業者がその内容を理解しそれに基づき実施することができない」と判定した。

    以上をまとめると、この判決がもたらした重要な示唆には、結晶形で特許請求項を特定する場合に、請求された特定結晶形の結晶構造が明細書で開示のその他の結晶形と区別できるかを確認すべきであり、当該特定結晶形の結晶構造を定義するために、「より多くの」XRPD又はその他の測定値を要するか否かを十分に考量することで、請求項を明確にすることができるということである。

    本件において、出願人が十分なXRPD又はその他の測定値で「実質的に純粋な結晶形B」を特定していれば、この言葉が「不純物以外のその他の結晶形が混合されていない」と解釈されるので、実施可能性に関する争議は生じなかったように思われる。

 

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