専利法第59条では、専利権の効力が及ばない7つの具体的な事由を明文規定している。その内の3つ目である「出願前に、国内で実施、又は実施に必要な準備を完了したもの」は、学説上でいうところの先使用権に関する規定であり、専利侵害の抗弁事由の1つである。
そして、‟国内で実施”とは、国内ですでに同じ物品を製造し始め、又は同じ方法を使用し始めていることを指し、それには同じ物品や同じ方法で直接製造された物品を販売、使用若しくは輸入し、自身による実施のみならず、他人に委託して実施することにもこの規定が適用される。
また、上記規定は実用新案や意匠登録にも準用され、それぞれ同法第120条及び第142条で明文化されている。
先使用権に基づき抗弁した専利侵害事件の中には、代理店に対して送信された「係争製品の写真・規格・希望販売価格・新製品発売日等が明記された電子メールや航空貨物輸送書」などを提出して、係争製品を国内で販売する申出が行われたことや、販売目的で係争製品を輸入したこと、さらにプロモーションを実施したことを証明するものがあった(知的財産裁判所2020年度民專訴字第25号民事判決)。
また、他にも係争製品の製品図面確認書や半加工品の委託製造を請け負った訴外企業の声明書等を提出して、係争製品と半加工品の外観や構造が同じであることを証明し、出願日より前に国内で実施していたことや実施に必要な準備を完了していたとして、専利権の効力が及ばないことを主張したものもあった(知的財産裁判所2019年度民專訴字第81号民事判決)。
このような先使用権の抗弁は特許や実用新案に関する事件で多く見られていたが、近頃、専利権侵害の財産権に関する民事訴訟において、意匠権について先使用権を主張した事件があった。以下にて、該事件の先使用権の抗弁に関する内容を紹介する。
係争台湾意匠公告第D208862号「枠材」の意匠権者は、被疑侵害者が製造販売した「電動窓の枠材」(以下、係争製品)が上記意匠登録を侵害しているとして、権利侵害民事訴訟を提起した。

訴訟において、被疑侵害者は係争専利出願日より前に係争技芸が公開実施されていたことを証明するため、係争専利の出願日より前に訴外人A社に係争製品の金型作りや板型制作を依頼したことを示す製図確認票(以下、係争設計図)及び出荷明細書を提出して、係争製品に係争専利の專利権効力が及ばないことを主張し、抗弁理由とした。
被疑侵害者の先使用権の抗弁に関し、知的財産及び商事裁判所は審理を経て、次のように認定した。
「係争設計図はアルミ窓サッシに関する設計図であり、係争専利で適用されている物品と同一である。係争設計図は各部位の間隔・幅・厚み及び形状等の関連パラメーターを断面図で表したものである。
該設計図に示されているものに基づき、係争設計図の全体設計外観と係争専利の正面図・背面図で表される全体外観を互いに比較すると、係争設計図には係争専利の「翼部」・「板体」・「底板」及びそれぞれの間の対応関係及び相対位置等の主な識別特徴が開示されており、両者の全体外観が同一又は高度に近似であることが分かる。

係争設計図の右下に記載の日付が係争専利出願日より早いことや、出荷表の内容とA社職員による証言をまとめると、被疑侵害者が係争専利出願日以前にA社に係争製品の金型作りを依頼し、A社もすでに契約に基づいて納品していたと認めることができる。被疑侵害者が専利法の規定を援用し、係争製品が先に実施されており、係争専利の専利権の効力が及ばないと主張することは、理由がある。」
本件の判決から、先使用権の主張が裁判所に受け入れられるか否かは、提出した証拠が、出願日より前に、国内で実施、又は実施に必要な準備を完了したことを証明するのに十分であるかにかかるが、特徴が部材の組成にある特許や実用新案と異なり、意匠は物品の全部または一部の形状、模様、もしくは色彩又はその結合を指すことから、意匠のポイントが物品の内部の形状、模様、もしくは色彩にあるとき、及び画像意匠(GUI・ICON)の場合は、本判決で挙げられている設計図の他、このような意匠の特徴を具体的に示すことができる関連資料(カタログや写真、出展写真等)及び資料作成日を保存し、互いに結び付けておくことが望ましい。
証拠固めと保存については、本件のように被疑侵害者が業務取引をしている民間第三者からの資料や証言の他に、例えば標準化団体等の公正な第三者が制定する制度(ISO制度)や、資料の公証手続き等により保存することもできる。更には、海外の法律で規定された電子データ保存方法(例えば、日本のe-文書法:電子文書法、データ上にタイムスタンプを付す等の規則が定められている)により重要データをデジタル保存することもできる。
これは製品を国内で実施する関連業者がデータを取得・固める上で、最初に考慮し注意していくべき事項である。