中国の国家知的財産局商標局(以下、商標局)の統計によると、2022年の商標出願総数は750万件に達し、受理した審判件数も42万件を数え、中国の商標出願件数は世界のトップに位置する。上記のデータから、中国の商標案件の審理件数は膨大であることがうかがえる。
これら審理の遅延を回避するため、中国商標法では、各種出願案件のタイプに応じて9箇月又は12箇月の審理期限を定めている。
また、審判案件の審理効率を上げるために、たとえ審理を中止する事由が有ったとしても、そして中国商標法第35条第4項及び第45条第3項、商標法実施条例第11条第5項、商標評審規則第31条で、審理を中止することができると規定されているとしても、商標局は大半について中止事由の確認結果を待つことなく職権により審理を継続してきた。
このような実務運営は違法ではないが、紛争を一度に解決することができない。
この問題について、商標局は、2023年6月13日に「『評審案件中止状況の規範』解説書(中国語:「『評審案件中止情形規範』解讀」)」を公布し、各種の異議決定不服審判、拒絶査定不服審判、及び無効審判の審理について、中止すべき事由又は中止してもよい事由を列挙し、商標審判官及び案件当事者の利用に供している。
本文では、以下にて、解説書の要点を記載する。
一、審理を中止できる審判案件のタイプ
『商標法』と『商標評審規則』によると、商標審判案件は五種に分類されるが、それらすべての審判案件の審理を中止にできるわけではなく、以下の三種についてのみ、中止の申請が可能である。
- 商標登録出願の拒絶査定を不服として請求した拒絶査定不服審判案件。
- 異議申立成立に対して請求された異議決定不服審判案件。
- 相対的不登録事由に該当するとして請求された無効審判案件。
二、審理の中止には必要性が求められる。つまり案件の審理において、先の権利が確定するなどの状況が審理の結果に実質的な影響を及ぼす場合に限り、審理を中止することができる。
三、審理中止の事由
(一) 審理を中止すべき事由
- 係争商標若しくは引例商標が名称変更、移転登記の手続きを行い、かつ名称変更又は移転登記の完了後に抵触が構成されないとき。
- 引例商標が更新申請中である、または6箇月の更新猶予期間満了前であるとき。
- 引例商標が取消または取下げを請求中であるとき。
- 中国商標法第50条の規定により拒絶されて審判を請求する場合は、先の登録商標が取り消されること、無効宣告を受けること、又はその更新期限から1年が経つことを待たなければならない。
- 引例商標に関する案件に処分が下されている等、処分の発効または裁判所の判決に基づく新たな処分を待っているとき。
- 関連する先の権利又は引例商標が、裁判所若しくは行政機関が審理中の別の案件の結果を根拠としなければならないとき。
(二) 審理を中止してもよい事由
- 拒絶査定不服審判案件に関する引例商標が無効宣告を受け、且つ引例商標権者がほかの案件において商標法第4条、第19条第4項、第44条第1項などに基づく悪意の権利者であると認定されているとき。
- 同様の状況の案件または関連する案件に、先に裁定若しくは判決が下されることを待つとき。
- その他、審理を中止してもよい状況であるとき。
四、審理中止の発動と解除
原則として、異議決定不服審判、拒絶査定不服審判、又は無効審判の案件が、上記の審理中止事由に該当する場合、当事者が申請する必要はなく、商標局も職権に依り審理を中止することができる。
また、審理の中止を申請する際は、関連する案件番号、審理の状態、事由、審判案件との関係性などを詳しく記載し、書面により提出しなければならない。
審理中止事由が終了した場合、審理中止の申請者は中止解除の申請をして、審判案件の審理を継続させなければならない。
五、評論分析
上述したように、これまでは、たとえ法的根拠と審理中止の事由があったとしても、商標局が実際に審判案件の審理を行う際には、その結果を待つことなく直接審理を行ってきた。
この度の「『評審案件中止状況の規範』解説書」の公布は、商標局に審理中止をより多く実践させて、紛争を一度に解決し、当事者に別の新規出願をさせる労力と経済的負担を負わせないようにすることを推し進めるものになるだろう。
上記の解説書に基づけば、中止事由が発生した場合、多くは商標局が職権により審理中止にするべきである。しかし、受理される審判案件の数が膨大であり、実際に商標局の審判官が各中止事由を精査することは困難である。
この為、審理を中止することができる何らかの事由がある場合、審判請求人側も自発的に関連情報や証拠を調べて審理中止を申請することが望ましく、そうすることで、無駄な労力や費用を減らすだけでなく、行政サービスの効率化も図ることができると言える。