専利出願の過程において、出願人は特許ポートフォリオの構築のため、または審査における単一性にかかる指摘を解決するため、出願を分割する必要がある場合がある。このため、分割出願を行うタイミングや注意事項を把握することは、出願人にとって、非常に重要である。
台湾の専利は、発明専利(以下、特許)、新型専利(以下、実用新案)、設計専利(以下、意匠)に分かれており、それぞれの分割可能時期が異なっている。以下、概要を説明する。
1. 特許出願
台湾の特許分割出願に係る規定は、比較的に緩和されたものとなっており、分割出願の基礎となる出願が、分割の可能な期間にありさえすれば、分割が既に行われたものであるか否かにかかわらず、分割出願の基礎出願とすることができる。つまり、最初の出願(親出願ともいう)が一旦提出されたならば、出願人は自身の必要、または知財局の単一性に係る指摘への対応のため、分割出願を行うことができ、既に分割出願(いわゆる子出願)が行われていたとしても、その子出願を原出願として、更に分割出願(いわゆる孫出願)を行うことが可能となっている。
特許出願の分割可能時期としては、分割出願の基礎となる原出願が知財局に係属している間、または、特許査定通知を受け取ってから3か月以内とされている。ただし、拒絶査定を受けた場合、知財局による審査が既に完了している(即ち、係属関係がなくなった)ため、拒絶査定を受けた出願をもとにして分割出願を行うことはできないこととなっている。
また、専利法第34条第5項では、「分割出願は、原出願の明細書又は図面に開示の発明であって、特許査定を受けた請求項と『同一の発明でないもの』を分割出願するものでなければならない。分割出願は、原出願の特許査定される前の審査段階を続行する。」と規定されている。このため、分割出願を行う場合において、分割された請求項の差別化、および、審査段階に留意する必要がある。
既に特許査定を受けた出願を基礎出願(親出願)として分割出願を行う場合、分割出願の請求項は、当該基礎出願の請求項とは異なるものでなければならない。専利法第43条および審査基準には、分割出願に係る審査意見と原出願の発行済みの審査意見が同じである場合、例えば、分割出願の請求項が、親出願にて審査完了した請求項と全く同じものである場合、審査官は分割出願に対し、直接、最後の通知を発行することができ、一旦最後の通知を受けると、出願人は、①請求項の削除、②特許請求の範囲の減縮、③誤記の訂正、④明瞭でない記載の釈明、の4つの条件に沿った補正しか行えないことが、規定されている。
審査プロセスにおいて、分割出願は、基礎出願の審査段階を受け継ぐこととなるため、分割が、基礎出願の初審段階で行われた場合、分割出願の審査は、初審段階から始まることとなる。一方、再審査段階に入ってから分割が行われた場合、分割出願の審査も直接、再審査段階から始まることになる。
初審段階からの審査と再審査段階からの審査の主な違いは、出願人が審査意見に対して応答できる回数が異なる点にある。分割出願が初審段階で行われた場合、同分割出願には少なくとも3回の応答機会があり、即ち、初審段階の審査意見通知、拒絶査定、及び再審段階の審査意見通知に対して応答することができる。一方、分割出願が再審段階で行われた場合、応答機会は1回しか与えられない可能性があり、すなわち、再審査段階の審査意見通知に対する応答で拒絶理由を解消することができなかった場合、そのまま再審査拒絶査定書を受ける可能性がある。再審査にて拒絶査定が確定されたならば、分割することはできないこととなる。
以下の図は、台湾の特許における分割出願の可能な時期を示すものである。特許戦略に合わせた、適切なタイミングでの分割出願の計画の参考とされたい。

2. 実用新案登録出願
台湾の実用新案登録出願は方式審査制度を採用しており、審査官による実体審査を経ずに設定登録を行うものであるため、明細書、請求の範囲の記載が方式的要件を満たさないことがない限り、通常、方式審査の結果に関する処分書が迅速に発行されることとなる。処分書に記載の方式審査の結果が登録許可である場合、分割出願ができるが、方式審査の結果が登録却下の場合は、分割出願ができなくなる。

3. 意匠登録出願
台湾では、いわゆる「一意匠一出願制度」を採用しているため、一つの出願案に複数の意匠が含まれている場合、意匠ごとにそれぞれ出願するか、複数の意匠を含んだまま出願した後、分割出願を用いることで一つ一つの意匠を保護することとなる。台湾の意匠は、特許と同様に実体審査制度を採用しており、審査プロセスも特許と同様に、初審段階で拒絶査定を受けたとしても、再審査を請求することが可能となっている。意匠登録出願は、知財局に係属している状態である限り、いつでも分割出願を行うことができるが、登録査定通知を受け取った時点で分割出願ができなくなる点において、特許出願と異なっている(特許出願では、査定通知を受け取った時点から3か月以内であれば分割出願が可能)。登録査定通知の発行が事前に通知されることはないため、審査意見通知の発行なしにて直接登録査定を受けた場合には、分割出願ができなくなることに留意する必要がある。このため、意匠登録出願につき分割出願を検討している場合は、分割する機会を逃すことのないよう、早めに分割出願しておくことが望ましい。
