ご存知のとおり、特許請求の範囲(以下、クレーム)は、特許審査の核となる部分であり、特許審査の過程において、クレームの補正は、頻繁に見られるものである。しかし、出願人が法に定められた形式又は主務機関の要求に従っって提出しない場合には、審査対象として採用されない可能性がある。一方、知的財産局は、クレームが通常とは異なる形にて補正された場合、出願人のクレームの補正に係る真意を理解するよう、十分な注意を払う必要がある。2022年に知的財産及び商事裁判所が下した判決(行専訴字第32号判決)は、この問題に触れており、その概要を以下に紹介する。
本件の特許出願の手続きに係るフローチャートは、以下の通りである。

2021年12月3日に提起された訴願では、台湾知的財産局が2021年7月22日に、再審査拒絶査定(1st)を自主的に取消し、2021年8月4日付にて発せられた2度目の再審査意見通知書(2nd)に対し、出願人が何の応答もしなかったとの状況において、実質的な審査が、以下のどの補正クレームに基づき行われるべきかという点が争点となった。
提出された補正クレームのバージョン:
(1) 2020年2月 4日提出:再審査提出時の補正書(法定形式)
(2) 2021年5月18日提出:再審査意見通知・面接後の、補正内容を記載した応答意見書(補正書の添付なし。法定外の形式)
(3) 2021年7月 2日提出:訴願提起における訴願理由書に添付された補正書(法定外の形式)
訴願審査委員会は、上述再審査意見通知書(2nd)に対しての応答が提出されておらず、また、上記(2)、(3)の補正クレームは、専利法(特許法)及びその施行細則に定められた形式に沿っていないため、2020年2月4日(上記(1))の補正クレームに基づき審査を行った再審査拒絶査定(2nd)に不当性はないとし、訴願を棄却した。
その結果を受けて、出願人は知的財産及び商事裁判所に行政訴訟を提起した。同裁判所は、判決の中で、行政手続法によれば、行政主務官庁は、所轄する行政手続きにおいて、当事者に有利・不利な事情につき一律注意を払うべきであることを強調している。同裁判所は、出願人により提出された複数の補正クレームは、その一部においてクレームの補正にかかる形式的要件を満たしていなかったとしても、知的財産局は、再審査拒絶査定(1st)を取消した後、行政手続法の規定に基づき、職権により、審査されるべき補正クレームのバージョンにつき、出願人の真意を確認すべきであったとの見解を示した。知的財産及び商事裁判所は、台湾知的財産局の主張を不当と判断し、出願人の真意を究明するための行動をとらなかったことを理由に、同財産局の主張を退ける一方、審査対象となるクレームは、2021年7月2日付け訴願理由に添付された補正クレームに基づくべきであることを前提とした上で、当該補正クレームが、依然として産業上の利用可能性などの特許要件を満たしていないことから、最終的に、出願人の行政訴訟を棄却した。
この判決から、以下の2点の教示を得ることができる。
- 上述のフローチャートに示されているように、本特許の出願手続きは、非常に時間がかかり、複雑さを極めたことがわかる。これは、主に、出願人が直接自身で特許出願を行ったこと、出願手続きにおいて、出願人自身が認識していなかった形式的な問題が多数存在していたほか、特に、クレームの補正において、形式的な要件を満たす形にて行うことができなかったことに起因する。これは、専門の弁理士のサポートを得ることで、問題の大幅な軽減や、回避が可能であった点。
- 知的財産及び商事裁判所は、出願人が複数の補正クレームを提出し、補正されたクレームが形式要件を満たしていない場合であっても、台湾知的財産局が権限により、提出されたクレームのうちどれに基づき審査を行うかを確認し、出願人が実質的に保護を望む範囲に基づき、審査すべきとの見解を示している点。
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