より優れた商標制度の確立及び商標に関する各種問題の解決を期して、中国国家知識産権局は、この度、商標法改正草案を公表し、一般に向け意見を公募した(2023年2月27日に受付終了)。今回の改正内容は、多岐にわたるため、以下、本稿では、法改正の方向性を素早く把握できるよう、ポイントのみをかいつまんで説明することとする。
1. 悪意による商標出願の防止措置
中国では、商標出願の件数が膨大であり、悪意による冒認出願が深刻化していることを踏まえ、法制度の側面から悪意による大量出願を規制するため、悪意による出願にあたる5つの事由を列挙することとした(22条)。このほか、悪意による出願をした出願人又は商標権者に対し罰金を含む行政罰を処すこととし(67条)、また、悪意による出願をした出願人又は商標権者は真の権利者に対して民事上の賠償責任を負うことを明文化した(83条)。
2. 重複登録の禁止
商標権者には、登録商標の使用義務があり、これを怠れば、登録から3年を経過したときに不使用取消審判を請求されるリスクがある。これを避けるため、3年ごとに商標を重複出願することが一部で行われているが、審査のリソースの浪費であり、また、登録商標の適切な管理に支障が出ている。そこで、同一の商品又は役務を指定して同一の商標を重複出願したり、商標が失効した後に直ちに再出願するなどの不正行為を禁止することとした(21条)。
3. 商標の使用義務の強化
中国では、現在有効な登録商標が4200万件あまり存在するが、多くの商標が実際には使用されておらず、市場において商品の出所を表す機能を発揮できていない。そこで、商標権者の登録商標の使用を促し、未使用登録商標を一掃するため、商標権者は商標登録から5年ごとに、登録商標の指定商品上での使用状況又は不使用の正当な理由を説明しなければならないこととした(61条)。説明がなされない場合には、商標を放棄したとみなされ、商標の登録が取り消されることとなる。
4. インターネット上の使用の明文化
現行商標法では、インターネット上の使用が商標の使用に含まれるか否かが規定されていないが、これを明文化し、インターネット上の使用も商標の使用にあたると規定した(59条2項)。
5. 企業名及び社会的組織名が先行権利又は利益にあたることを明文化
現行の商標法では、新たに出願された商標は、他人の有する先行権利を侵害してはならないとされている(現行法32条前段)。これを受け、商標審査審理指南(2022年1月1日発効)では、先行権利には商号権、著作権、氏名権、意匠権、肖像権、地理的表示などが含まれると規定している。今回の改正草案では、先行権利のほかに、先行利益も保護すべきものとして規定した。また、既に登録・使用されており、一定の影響力を持つ企業名(略称、商号、グループ名などを含む。)及び社会的組織名は先行権利又は利益にあたるとした(23条2項)。
6. 異議申立制度の改革
商標審査手続と紛争手続の効率化のため、異議申立期間を元の3か月から2か月に短縮することとした(36条)。また、異議申立に対し登録拒絶の決定がなされた場合、現行の規定では、先に商標評審委員会に再審査を申し立てる必要があるが、行政救済制度の簡素化のため、直接人民法院に訴訟を提起することができることとした(39条3項)。
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