特許の無効申立又はその訴訟の過程において、特許を受けようとする発明が、「当業者にとって関連先行技術に開示の内容及び出願時の通常の知識を参酌して容易になし得るものである」として、進歩性を有しないと認められることがある。
その場合、特許権者は当該発明の商品が商業上の成功を収めていることを証明する補足資料を添えて、進歩性を有することをアピールすることができる。
しかし、特許権者が係争特許のライセンス料の明細や、ライセンス契約、高い市場占有率を誇るニュース記事、販売金額リスト、年間収益等によりその発明が手にした商業上の成功を証明しようとする場合、多くの判例において、裁判官が、それらの証拠が販売テクニックや宣伝広告、市場需給状況、社会経済全体の景気などの要素に関連すると考え、特許権者が改めてその発明品の商業上の成功が特許技術によりもたらされたことを証明する必要が出てきている。
2018年の知的財産裁判所107年度行専訴字第75号判決の例で、原告は証拠2と2件の専利権を有していた。
裁判所は、証拠2のものが第1世代製品で、係争専利のものが第2世代製品であり、技術の相違点は第2世代製品の保温カバーが折畳可能なことであると認定した。
証拠2の公告後から係争専利の出願又は公告までの間、その折畳できない第1世代製品が模倣されることはなかった。しかし、第2世代製品がインターネット上で販売されて露出度が上がると、多くの模倣品が世に現れるようになった。それはつまり第2世代製品の市場における独占的地位は、‟折畳可能”という技術的特徴に由来することを意味している。
裁判所はこの点に基づき、専利権者の商業上の成功が係争専利の技術的特徴に由来することを認め、係争専利が確かに商業上の成功をおさめて、進歩性を肯定する要素となっていると認定した。
一方、最近の実務見解において、「商業上の成功」の証拠の関連性をどのように認定するかについて、最高裁判所(以下、最高裁)と知的財産及び商事裁判所(以下、知財商裁)が異なる見方を示している。
例えば、2022年の最高裁111年度台上字第186号の判決において、最高裁は特許の進歩性を審査する際に、先代製品から変わったことで商業上の成功を収めたという要素を考慮することができるとした。この例で、特許権者は係争特許の実施権者に多くの上場企業が含まれ、係争特許技術を用いた集積回路の輸出数が10億に上ることで、係争特許が長きにわたって存在した課題を解決し、商業上の成功を収めたと認めることができると述べた。そして、最高裁は総合的に判断した上で、特許権者の上訴が道理に適うとして、知財商裁に差戻す判決を下した。
ところが、その後知財商裁は111年度民専上更一字第11号判決で、実施権者が係争特許技術による貢献を認めたことで、ライセンス契約が結ばれたのだと直接推論することはできないと認定した。そして、係争特許は引用文献と比べて明らかに進歩性を有しないと言えるため、係争特許が商業上の成功を収めたかどうかという争点から切り離して考えるべきであるとした。
台湾の実務を観察すると、商業上の成功を収めたかを証明して進歩性を肯定しようとしたとしても、各案件の状況も異なるため、かなりの不確実性が残されることになる。
上述の知的財産裁判所107年度行専訴字第75号判決で、専利権者は商業上の成功が発明の技術的特徴によって直接引き起こされ、宣伝広告等の他の要因によるものでないことを証明したが、その他に「市場に特許製品を模倣した第三者がいる」という要素も裁判官の心証に影響を及ぼした可能性がある。