台湾商標法30条1項11号は、「他人の著名商標と同一又は類似し、関連する公衆に混同、誤認を生じさせるおそれがあるもの又は著名商標の識別力、信用又は名誉を損なうおそれがある商標は、商標登録を受けることができない。」と規定している。
これに関し、2023年3月17日、台湾最高行政裁判所の大法廷は、111年大字第1号裁定を下し、商標法30条1項11号後段の「著名商標の識別力、信用又は名誉を損なうおそれ」における「著名商標」とは、客観的証拠により関連する事業者又は消費者に広く認知されていると認定するに足りる商標を指し、一般公衆にまで広く認知されている必要は無いとの統一的法的解釈を示した。これにより、前記「著名商標」とは、著名の程度が関連消費者に留まらず、一般公衆に広く認知されている必要があるとする従来の実務上の解釈が変更された。
背景となる事実
2017年5月3日、訴外英国籍の個人アナベラ・バレンチノは、「GIOVANNI VALENTINO」商標を第24類の「布地、薄絹、織物製タペストリー」などの商品を指定して出願し、その後、審査を経て登録された。これに対し、イタリア企業ヴァレンティノは、当該商標が商標法30条1項11号前段に規定する「他人の著名商標と同一又は類似し、関連する公衆に混同、誤認を生じさせるおそれがあるもの」及び同号後段に規定する「著名商標の識別力、信用又は名誉を損なうおそれがあるもの」に該当するとして、同社の「VALENTINO」、「VALENTINO及び図」、「VALENTINO GARAVANI及び図」などの著名商標に基づいて、異議を申し立てたが、知的財産局は異議の成立を認めず、訴願委員会に対する訴願も棄却された。同社は、知財商事裁判所に対し訴訟を提起したが、請求が棄却されたため、最高行政裁判所に上訴した。
最高行政裁判所は、商標法30条1項11号後段に規定する「著名商標」の著名の程度について、一般公衆に広く認知されている必要があるか、又は関連消費者に広く知られていれば足りるかという点において、異なる解釈があることから、この法的論争について決着をつけるべく、大法廷にて裁判することとなった。
最高行政裁判所大法廷による統一的法的解釈
- WIPOが1999年9月に発表した著名商標の保護に関する規定についての共同決議によれば、著名商標の減損又は希釈化に関連して、その著名の程度が一般公衆に広く認知されている必要があるかどうかは、加盟国が自ら決定することができるとされている。
- 商標法30条1項11号前段に規定する「他人の著名商標と同一又は類似」することは、同号後段に規定する「著名商標の識別力、信用又は名誉を損なうおそれがあるもの」の成立要件でもあるが、同一の用語は同一の内容を持つとの法理からすれば、商標法30条1項11号前段及び後段にいう「著名商標」は、同一の定義を用いるべきである。
- 商標法施行細則31条では、「本法に規定する著名とは、客観的証拠により関連する事業者又は消費者に広く認知されていることを認めるに足りるものをいう。」と規定されているが、商標法30条1項11号前段と後段にいう著名商標について、特に区別して定められてはいない。
- 「商標法30条1項11号の著名商標保護審査基準」の3.2でも、商標法30条1項11号後段にいう著名商標について、著名の程度が関連消費者に留まらず、一般公衆に広く認知されている必要があるとまでは要求されていない。
以上より、商標法30条1項11号後段の「著名商標の識別力、信用又は名誉を損なうおそれがあるもの」にいう著名商標とは、客観的証拠により関連する事業者又は消費者に広く認知されていることを認めるに足りる商標をいい、一般公衆に広く知られている必要はない。
結論
前述の最高行政裁判所大法廷の判断は、これまでの実務上の解釈を変更したが、著名商標の識別力、信用又は名誉を損なうおそれがあるかどうかについては、商標の類似度、商標のほかの商品/役務における使用の広範さの程度、著名商標の先天的または後天的な識別力の程度、被異議申立人が自らの商標を著名商標と関連付けさせる意図があるかどうかなど、その他の要因をなおも総合的に判断する必要がある。
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