近頃、台湾で最初の「ディープフェイク技術濫用による権利侵害事件」に対し、新北地方裁判所が2022年12月8日付111年度訴字第2500号判決を下した。同判決で、裁判所は、共同被告である2名のユーチューバー(以下、被告と言う)が、ディープフェイク技術を用いて他人の肖像を剽窃し、自ら編集したポルノ動画に貼り付けたことで、他人の名誉と肖像権を侵害し、損害賠償責任を負うべきであると認めた。
同判決によれば、被告はまず2020年7月頃からインターネットで特定の知名度の高い人物のデジタル映像を大量にダウンロードし、その後ディープフェイク技術でそれらの映像を合成してポルノ動画のコンテンツに転用し、登録会員に有料ダウンロードサービスを提供した。資料によると、被告は2020年7月から2021年10月までの間に、この動画ダウンロードサービスで1300万新台湾ドルに達する収益を上げている。
裁判所は、被告の上記行為が被害者である原告側の性的自己決定権、名誉権及び肖像権の侵害に関与すると認めた。
- 本件で、原告側は主に民法第195条に基づいて請求(訴訟)を提出している。そして、民法第195条は、「人の身体、健康、名誉、自由、名声、プライバシー、貞節を違法に侵害し、またはその他の人格的法益を違法に侵害し、その侵害の情状が重大である場合、被害者は、その財産権が侵害されなかった場合においても、相当な損害賠償金を請求できる。」と定めている。
- 裁判所は、被告が原告のデジタル映像を剽窃し、ポルノ動画と合成してから第三者にダウンロードさせたことで、原告の名誉権を侵害しただけでなく、肖像権と性的自己決定権も侵害したと判じた。そしてその肖像権と性的自己決定権はいずれも民法第195条における「その他の人格的法益」に当てはまり、保護すべきであると認めた
それに対して、被告は、本件動画をダウンロードできるウェブサイトにおいて、それらの動画がいずれも「挖面台湾網紅(注:動画のグループ名)」に属すると明記されていたため、動画をダウンロードしたユーザーが、それらのポルノ動画に出てくる人物を原告本人と誤認するには至らないはずであり、ポルノ動画コンテンツを原告に結び付けて、名誉を侵害する状況にはならないと抗弁した。
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しかしながら、裁判所は、ネット動画が短時間で大量にさらされて転載されやすい上に、ディープフェイク技術に馴染みのない人々にとって、それらのポルノ動画に惑わされて、原告の評価に誤解や悪影響を及ぼし易くもあるため、被告の答弁は採用できないと判じた。また、被告がこの種のディープフェイク技術を利用してデジタルコンテンツを合成したことに加え、インターネットの非遠隔的かつ高速転送といった特徴により、本件原告が受けた人格権損害は、これまでの実体的な流通と比べて実に何千百倍以上という酷い状況となっており、ほとんど埋め合わせられる可能性が無いと判断した。
- これにより裁判所は、被告が侵害行為を行った故意、侵害動画を生成した技術の特性、侵害行為による損害の重大さ、そして今後の類似行為の防止などの状況を総合的に考慮し、被告が原告に対して100万台湾ドルの損害賠償金を支払わなければならないと認定した。
本件は、台湾の司法実務において、ディープフェイク技術で他人の肖像や名誉を侵害したと判断された初めての事案であり、裁判所がこういった新しい技術やそれに伴うリスクについて慎重な姿勢をとることも見て取れた。ディープフェイク技術の応用が日々普及していくにつれて、この技術を使用する際に、他人の肖像権や名誉権を侵害する潜在的リスクが有ることに注意すべきである。
この他、ディープフェイク技術を利用して作られたデジタル成果は、一般的にインターネット上にアップロードされて流通するため、被害者が具体的な金銭的損失を証明することが容易でないが、裁判所が民法第195条の規定に基づいて、この行為のタイプを非財産的損害賠償責任を加重する一つの要因としている点について、留意すべきである。
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