2022年6月30日、台湾の知的財産及び商事裁判所は、正当な許諾なしにプロ写真家(原告)の写真を利用してその著作権を侵害したとして、台北のAホテルを経営するB社に敗訴判決(111年度民著訴字第22号)を下した。
事件の発端は、Aホテルの中で撮影された、犬猫と人間(飼い主)の交流をテーマとする原告の写真をB社が利用したことであった。原告がその写真をフェイスブックやインスタグラムに公開した後、それに気付いたB社のフェイスブックの管理者は、インスタグラムを通して原告に連絡し、写真をAホテルのフェイスブックに掲載することを許諾するよう要請した。なお、B社のフェイスブックの管理者は、B社のフェイスブックを閲覧するネットユーザーが、その写真が原告の作品であるとわかるよう、原告の写真を掲載する際に原告にタグを付けることを承諾した。しかし、B社は原告の写真を自社のフェイスブックに掲載した他、アゴダやブッキングドットコムのようなホテル予約サイトにも掲載していた。そればかりか、ホテル予約サイトに掲載された原告の写真にB社の商標が表示されていたが、原告が写真の作者であることについては全く示されていなかった。結局、それに気付いた原告は著作権侵害訴訟を提起し、B社による写真の利用が許諾の範囲を超えて原告の著作権を侵害したと主張した。
それに対し、自社が原告の写真を複製・編集してからアゴダやブッキングドットコムに掲載したことをB社は否定していないが、反論の理由の一つとして、自社の一連の行為は原告から同意を得たものであると主張した。つまり、B社のフェイスブックの管理者に対し原告が写真の利用に同意する意思を伝えた際、原告とB社の間で、B社がマーケティングの目的で原告の写真を利用することと引き換えに、B社のフェイスブックに原告の写真を掲載する際に原告にタグを付けるという内容の契約が成立しているとした。だが、裁判所は、原告とB社のフェイスブックの管理者のやりとりからすれば、原告はAホテルのフェイスブックに掲載することに同意したものの、商業上の利用の目的でアゴダやブッキングドットコムに掲載することに同意したわけではないと、B社の論理を否定した。また、写真の出所にタグを付けることが同意の条件となっていたが、アゴダやブッキングドットコムに写真を掲載した際にB社はこれを履行していないと認定した。そして、裁判所は、アゴダやブッキングドットコムに原告の写真を掲載することに原告が同意したというB社の主張を支える根拠がなく、B社が無断で原告の写真を利用したとして、2万台湾ドルを原告に賠償するようB社に命じた。
著作物の利用を許諾する際に、書面によらなければならないことはないが、利用の形態と範囲をできる限り明確にすることが好ましい。この事件で、B社は原告に同意を求めていたが、原告が同意を与えた際に、写真をフェイスブックのみに利用できるという点については触れていない。そして、裁判所はその同意の範囲を狭く解釈した。
著作権侵害を避けるため、著作権者に使用許諾を求める際には、許諾を構成する言葉や許諾の経緯に特に注意を払わなければならない。
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