近年、人工知能(AI)・ビッグデータ・ブロックチェーン等の技術が、目覚ましい発展を遂げている。これに伴い、台湾ではコンピュータソフトウェアに関連した発明の出願数も増加し続けているが、このような技術分野における特許出願の審査では、進歩性欠如を理由として拒絶される割合が非常に高くなっている。
台湾知的財産局は、審査実務における需要に応じるべく、2021年に『コンピュータソフトウェア関連発明審査基準』を改訂し、進歩性に係る判断ステップを「進歩性が否定される方向に働く要素」と「進歩性が肯定される方向に働く要素」に分け、更に、「進歩性が否定される方向に働く要素」を(1)複数の引例を組み合わせる動機付け、(2)引例の技術内容の「簡単な変更」、の二つに区分した。
審査基準の総則では、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が複数の引例の技術内容を組み合わせる動機付けを有するか否かを判断するとき、原則として「技術分野の関連性」等を総合的に考慮しなければならないとしている。しかし、ソフトウェア関連発明審査基準では、コンピュータソフトウェア技術は通常、各技術分野に応用可能であることから、複数の引例が技術分野における関連性を有しないことのみで、組み合わせる動機付けが無いと認定すべきではないことを強調している。
また、改訂後の審査基準には、引例の技術内容の「簡単な変更」に該当する態様につき、次のように挙げられている。①他の技術分野への転用、②人間が行っている作業方法のシステム化、③従来ハードウェアで行っている機能のソフトウェアによる実現、④公知の事象のコンピュータ仮想空間上での再現、⑤出願時の一般知識の応用又は変更、⑥技術効果に寄与しない特徴。
ソフトウェアに関する発明の出願は、審査過程において、「進歩性が否定される方向に働く要素」により拒絶されやすい状況にあると言える。ニューラルネットワーク(Neural Network、人間の脳の働きを模倣する数理モデル)に係る発明の出願を例に挙げると、発明の内容が、ディープラーニング(深層学習)の一般的な手法により、いくつかのデータを生成して特定のフィールドに適用するというものである場合、従来のアルゴリズムにより得られた結果をこの特定のフィールドに適用するとの先行技術が存在しているのであれば、たとえ、一般的なディープラーニングと従来のアルゴリズムに係る2つの先願が同じ又は関連する技術分野に属していないとしても、それらの先願は組み合わせることが可能であるとし、審査官に、進歩性を否定される可能性がある。
また、この例においては、ディープラーニングに関する先願を挙げることなく、「出願時の通常の知識の応用又は変更」を理由として、審査官により、直接、当該出願は従来のアルゴリズムに関する発明の簡単な変更であると見なされる可能性も考えられる。
ソフトウェア関連発明の出願・審査過程において、「簡単な変更である」と拒絶された場合には、必要な補正を行うほか、応答時の論点の参考として以下の点を提供したい。
(1)明細書にて明らかに記載・説明されている、先行技術と比べて有利な効果。
(2)出願案と引例の技術面における本質的な差異(その差異により、当業者であっても、引例の技術を変更することには想到し得ない点)。
(3)引例にその変更を示唆する内容が無く、当業者にはその変更を行う動機付けが無い点。