模倣品の取り締まりは、かねて商標権者が商標権の価値を守るための重要な取り組みである。しかし、市場には模倣品の他に商標権者が出所を掌握し難い中古品や並行輸入品も大量に出回り、真贋鑑定の難易度が高まっている。
特に、訴訟係属中に、被疑侵害者が係争商品について本物の中古品又は並行輸入品であると主張したとき、商標権者は識別するカギとなる情報を開示して、係争商品の真贋を鑑定する必要が出てくる。しかし、いったん開示してしまうと、将来的にその商品の真贋がより見分けにくくなってしまう恐れがある。
商標権者はこのようなジレンマに直面したとき、裁判所に秘密保持命令を出すよう申し立てて、情報漏洩を防止することが考えられる。
知的財産及び商事裁判所の「110年(2021年)度刑智上易字第18号」刑事事件の被告は、通信機器販売店を開き、携帯電話「iPhone」のパーツや周辺機器(タッチパネル、イヤホン、電源アダプター、ケーブル、内部部品の配線、裏蓋、バッテリー等)を販売していた。そして、顧客の携帯電話の修理時には、上記商品と交換するなどしていた。
「iPhone」の商標権者であるアップル社は、被告が販売している商品が模倣品であることに気づき、捜索・差押を求めて、刑事告訴した。
被告は自らが販売した係争商品は中古品で、模倣品でないことを主張したが、これに対しアップル社は鑑定レポートを提出すると同時に、本件差押商品の検証レポート等がアップル社の営業秘密に関わるものであると主張し、被告に対して秘密保持命令を発令するよう裁判所へ申し立てた。
裁判所は斟酌した後、本件差押商品の検証レポート及び開廷陳述等が確かにアップル社の営業秘密にかかわるものであると認めた。
被告は携帯電話修理を生業とし、携帯電話部品組み立ての専門性を有する。そして被告は法廷で検証レポートや関連書面を閲覧することができ、その場で鑑定人が裁判所に対し説明するその観察と検証のポイントや、いかにして商標の模倣を結論付けるかという根拠を聞くことで、鑑定人が判断する方法を知り、これに基づいて応答を行うことができる。これは、被告の訴訟上の防御権を保障するものである。
しかし、仮に被告にコピー・抄録・撮影等の方法で、検証レポート等の文書または検証者の法廷での陳述記録で開示された検証過程の詳細等の訴訟資料を法廷外へ帯出することを認めれば、アップル社の営業秘密が不当に漏洩される危険性がある。
被告の防御権と商標権者の営業秘密漏洩リスクを斟酌し、裁判所は被告に秘密保持命令を発令し、被告に関連鑑定レポート等の資料を閲覧のみを認め、コピー・抄録・撮影又はその他の方法での保存を制限した。
この秘密保持命令の裁定は、商標権者により充実した保護を与えることにほかならない。営業秘密情報に基づいて商標の模倣品を鑑定する際、商標権者は裁判所に秘密保持命令の発令を申し立てることで、商標権侵害訴訟において重要な機密情報が漏洩しないよう対処することができる。