キーワード広告は、インターネット時代において、多くの企業にとり、有力なマーケティング手法の一つであり、その活用方法もますます多岐にわたっている。
人工知能(AI)の普及に伴い、企業がマーケティングに必要なキーワードを自動的により早く正確に把握すべく、機械学習を導入するケースも見られるようになっている。このような中、最近、台湾の公平取引委員会(日本の公正取引委員会に相当。以下、「公平会」と称する)は、Agoda Company Pte. Ltd.(以下、「Agoda社」と称する)に対し、機械学習によって自動的に選び出されたキーワードが他の事業者の名称に関連するとして、台湾の公平交易法第25条に違反していると判断し、100万新台湾ドルの罰金を命じた(公平会処分書番号:公處字第110075號)。
本事例は、申告者が「Google」と「Yahoo!」の検索エンジンで申告者の事業者名(会社名)を検索した結果、Agoda社のウェブサイト広告が優先的に表示されることを発見し、公平会に報告したものである。
本事例の特徴としては、Agoda社は自己学習機械(self-learning machine)を用いて、消費者がAgoda社のウェブサイトにアクセスする際に使用したフレーズを分析し、Agoda社がターゲットとするキーワードが推薦されるシステムを利用していたが、自己学習機械から自動的に推薦されたキーワードの一つが、申告者の事業者名称だったのである。
Agoda社は、答弁にて、キーワードについては、自己学習機械が自動的に推薦・購入するシステムを用いたものであり、「キーワード挿入」機能により表示される形式ついては全く把握しておらず、キーワード広告を購入した期間にその形式を監視する担当者もいなかったため、責任に問われるべきではないと主張した。
しかし、公平会はAgoda社の答弁を認めず、Agoda社の自己学習機械が、“消費者がAgoda社のウェブサイトにて検索に使用した特定のフレーズから、「申告者の事業者名称」というキーワード広告を推薦した”という状況から、逆に申告者の事業者名称が公平交易法第25条「著しく公正を欠く行為」における「他人の努力の成果を搾取すること」の「事業者が相当な努力をしたことにより、市場にてある程度の経済利益を得ている」要件に当てはまると認めることができると判断した。
さらに、公平会は、キーワード広告を購入した事業者は、そのキーワード広告が他の事業者の名称・商標であるか否かを確認すべきであり、そのキーワードの使用が、インターネット使用者に対し、供給される商品又はサービスの出所についての混乱を引き起こすものであるか、同一シリーズの製品・関連企業のものであるかについての誤認を引き起こす可能性があるか等について、注意を払うべきであると指摘した。そして、本件では、Agoda社が、申告者の事業者名称をキーワードとして採用する際に十分な注意を払わなかったことから、その責任を免れることはできないと判断された。
人工知能とビッグデータ技術が汎用される時代において、機械学習を利用したデータ分析が益々広がっていく中で、事業者は自己学習機械の利用には、その監督と注意義務が追随することを認識しておく必要がある。
本事例のように、自己学習機械から推薦されたキーワードが、他の事業者の名称や商標と関係があった場合、そのキーワードが人工知能により自動的に推薦されたものであり、状況を認識していなかったという理由で、公平交易法の責任を免れることは難しいであろう。
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