台湾では、1997年12月から、小売役務を指定役務として商標登録出願することが可能となり、審査の根拠となる「小売役務審査基準」が公告された。同審査基準によると、小売役務は、デパートメントストア、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ショッピングモールなどの「総合的商品の小売役務」と、化粧品の小売、衣料品の小売、時計の小売などの「特定商品の小売役務」に分けられる。
両者は、小売役務の表示の審査、他の商品または役務との類否判断の原則、商標の使用において、いずれも規範が異なっており、長い間、台湾知的財産局(以下、知財局)、商標出願人、商標権者は、当該審査基準を出願における判断の根拠としてきた。「総合的商品の小売役務」と「商品」そのものは、その性質が異なることから、原則として類似せず、商標出願の審査においても、知財局は、総合的商品の小売役務と、販売し得る全ての商品との相互検索注[1]は行っていない。しかしながら、上述の原則は、絶対的なものではなく、最近、知的財産及び商事裁判所(以下、知財商事裁判所)の判決注[2]により、異なる判断が示された。
異議申立人は、第3類「線香,お香」商品を指定して先行登録した第1359638号「
(台湾漢香府城呉萬春香行 Since 1902及び図)」商標(以下、根拠商標)を根拠として、第35類役務を指定する第1930281号「
(呉萬春WU WAN CHUNデザイン)」商標(以下、係争商標)に対し、異議を申し立てた。この争点の一つは、係争商標の指定役務の一部である「デパートメントストア、ネットショッピング、消費者のための商品の情報及び商品の購入に関する助言の提供」(即ち、総合的商品の小売役務)などと、根拠商標の指定商品との類否関係であった。知財商事裁判所は、「特定の商品と総合的商品の小売役務は性質が異なり、原則として、非類似とされるべきであるが、昨今の販売チャネルや販売戦略の多様化に鑑み、『デパートメントストア、生活用品店、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、量販店、ショッピングセンター』役務が提供する商品は多岐に渡っており、根拠商標の商品もその中に含まれる可能性がある。また、『通信販売、テレビショッピング、ネットショッピング』などの電子ビジネスに係る新たな形式の総合的商品の小売役務は、総合的な役務を表すとともに、特定商品の小売役務の出所を指し示す作用を兼ねる可能性もあるため、両者は販売チャネル・購買者などの要素において、共通性または関連性を有しており、社会通念及び市場取引の状況に照らせば、需要者に商品または役務の出所が、同じ、または異なるが関連しているとの誤認を招くものであり、類似関係を有すると認定すべきである」と判示した。
知財商事裁判所の判断は、知財局の異議申立に対する決定処分と一致したものとなっている。このことから、総合的商品と特定商品の小売役務は、性質が異なるため、原則として非類似であるものの、実際の審査においては、知財局と知財商事裁判所は、総合的に検討を行い、各ケースの状況に基づいて、判断をしていることがわかる。
上述の判決例に鑑み、商標出願人または商標権者は、以下の事項に留意されたい。
一、特定商品への使用を指定する商標出願人は、総合性商品の小売役務にて使用を指定する先行出願または登録商標に留意する必要がある。特に、商標の主要部分の類似度が高い場合は、商標登録の障害となる可能性がある。
二、特定商品への使用を指定する商標権者は、総合性商品の小売役務にて使用を指定する、後続の出願または商標登録の状況を見守り、特に商標の主要部分が同一である場合、関連需要者が出所を誤認しないよう、適宜措置を講じる必要がある。
注[1] 「小売役務審査基準」第5.1.3点。
注[2] 知的財産及び商事裁判所2021年度行商訴字第27号行政判決、判決日:2021年8月26日;最高行政裁判所2021年度上字第629号判決、判決日2021年11月11日。
-----------------------------------------------------------------------
本ウェブサイトのご利用に当たって、各コンテンツは具体的事項に対する法的アドバイスの提供を目的としたものではありませんことをご了承下さい。