設計専利(意匠登録)は、視覚を通じて美感を起こさせる創作を保護するものであり、その創作性の審査は設計全体を対象としなければならない。
もし、その設計が属する技芸分野における通常の知識を有する者が、先行技芸に基づき、さらに出願時の通常の知識を参酌して成し得る自明なものであると判断されれば、その創作は創作性を有しないことになる。
しかし、出願人の意志により又はその意に反して公開された後、6ヶ月以内に出願した場合、新規性又は創作性喪失の例外規定の適用を受けることができる。
台湾知的財産局は、先ごろ、ある設計専利侵害訴訟で専利の有効性を判断する際に、専利権者が出願前に公開した設計の情報が、新規性又は創作性喪失の例外規定を適用することができず、係争専利の先願に該当するとして、当該専利が無効であるとの判断を下している。
ここで、この例について説明してみる。
一、係争設計専利「階段式スロープ」の侵害訴訟において、専利権者は被疑侵害者の製品が当該専利を侵害していると主張し、対する被疑侵害者側は証拠(右下の係争専利出願前に専利権者が公開した商品の写真)を提出し、係争専利が新規性と創作性を備えないと主張した。
二、係争専利(左下の図に開示されているもの)は、その斜視図から見ると、左側が11段の階段状になっており、右側は角度が付いた坂であり、左右の中央には平面のスペースが設けられている。正面図と底面図から見ると、全体は概ね台形のスタイルであり、左側は連続した階段で、中間が平面状で、右側が坂になっている。この構成は独特で、特異な視覚効果を有する外観設計である。
三、全体を比較・観察した上で、知的財産裁判所は、係争専利と証拠の「差異特徴」が下記であると認めた。
差異特徴1:証拠の連続的な階段部・平面部・坂部が一体に成形されていない。
差異特徴2:証拠の平面部の下方が空洞で、2本の脚部がある。
差異特徴3:証拠の坂部の下が空洞である。

係争専利の階段式スロープ 証拠の写真
知的財産裁判所は、両者の外観特徴に上記の差異があると認めた。しかし、係争専利は、証拠の階段部・平面部・坂部の三者を組み合わせて一繋ぎにする態様を全体が一体に成形された態様に変え、平面部分と坂部分の下部の空洞を中実に変えたもので、公知設計を簡単に変化させたに過ぎないとした。
そして、簡易な手法で上記の差異特徴を簡単に転用しても、証拠が持つ外観を逸脱することはなく、係争専利の全体的な外観は特異な視覚効果を生じさせることができず、その設計が属する技芸の分野における通常の知識を有する者が、証拠に基づき容易に思いつくものであるため創作性を有しないとした。その上、その証拠の公開日が係争専利の出願日から6ヶ月よりも前であることから、新規性又は創作性喪失の例外規定を適用することができず、係争専利が新規性・創作性を有さない証拠となり得ると認めた。
四、専利権者は、証拠の坂部が空洞であることが、係争専利の中実と異なるため、両者が異なるものであると主張した。しかし、知的財産裁判所は、“その証拠が証明するのは新規性欠如でなく創作性欠如であり、証拠と係争専利が異なっていても、当業者が容易に思いつくものである”と判断した。
上記の裁判所の見解から、物品の設計が一体に成形したものであっても複数個を組み合わせたものであっても、そしてその構造が中実であっても中空であっても、もし元の設計が持つ外観を逸脱することがなく、全体の外観が特異な視覚効果を生じなければ、容易に思いつく設計として創作性を有しないと認められる可能性があると考えられる。
この為、出願人が出願前に関連商品を公開しなければならない場合、その商品が出願する専利と同一又は近似でないと考えたとしても、商品の公開がその後の専利出願の障害になることも有り得ることから、新規性又は進歩性の喪失の例外規定を適用できる期間内に、できる限り早く出願することが望ましいと言える。