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Rimowaの“グルーヴ”デザインは、公平交易法で保護されるか

    ドイツのスーツケースメーカーであるRimowa(リモワ)社は、2006年に複数のスーツケース販売業者を相手取り、各業者が販売したスーツケースに、Rimowa社の著名な凹凸平行線のデザイン(“グルーヴ”デザイン)が用いられ、公平交易法違反であるとして、販売の停止と損害賠償を求める訴訟を提起した。

    知的財産裁判所は、第一・第二審において、いずれもRimowa社が勝訴となる判決を下した。

    その主な理由として、公平交易法第22条で求める3つの要件に合致していることを挙げている。即ち、①Rimowa社がスーツケースで用いている“グルーヴ”デザインが、著名な商品の表徴であり、②これらの業者のスーツケースに、似通った“グルーヴ”デザインが用いられ、③一般消費者又は関連業者に混同誤認を生じさせるおそれがある、というものである。

    その後、被告は異なるものの、案件内容が似ている2件は、最高裁判所に上訴され、それぞれ別の法廷での審理を経て、2020年12月に判決が下されている。その結論は、いずれも「破棄差戻し」であり、しかも両法廷の判決理由も似通っていた。ここで、その要旨をまとめてみる。

  1. 公平交易法第22条でいう表徴とは、商品の出所を示す機能が無ければならず、消費者又は関連業者に、別の商品と区別させ得るものでなければならない。

        Rimowa社が提出した長期にわたるマーケティングの証拠からは、商品の出所を示しているのが、商標『Rimowa』であるのか、それとも“グルーヴ”デザインであるのかに疑義が無いとは言えない。

        また、Rimowa社が2003年に台湾に進出し始めた時点で、既に一部のスーツケースメーカーが係争の“グルーヴ”デザインを用いていたようであり、2017年までその他の業者が似通った“グルーヴ”デザインが施された外観のスーツケースを販売し続けてきた。中には似通った設計専利を出願した者さえ存在した。

        そして、Rimowa社のブランド紹介・販売広告等は、いずれも係争“グルーヴ”デザインに、商標『Rimowa』を組み合わせる形で行われ、その内容は、該商標がもたらす品質保証を謳うものに見える。もし、その他の要素(例えば、商標・アルミニウム色・軽量・耐久・四角の外観・特殊な特許技術のキャスター設計)を切り離したとして、係争のリブデザインに商品の出所を区別する機能があると言えるだろうか。

        関連事業者や消費者が係争の“グルーヴ”デザインのみで該商品の出所を識別でき、購買動機とすることができるかについて、検討の余地が無いとは言えない。 

  2. 公平交易法第22条でいう『他人の商品と混同する』について、実際にそのような事実が発生している必要は無いが、一般消費者が普通の注意力と記憶能力で混同するという具体的な危険性があることに基づかなければならない。例えば、抽象的又は想像上のリスクは適用する余地がない。そして、混同に至る具体的な危険性の有無は、商品の表徴の著名性又は識別力の高さや、表徴及び商品又は役務の類似レベル、客層の重複性、価格の差異性、競合関係の有無等の事情を総合的に判断することができる。

        本件で、被告等のスーツケースとRimowa社のスーツケースの価格帯(前者は凡そ後者の十分の一)や販売ルートには、明らかな違いがある。そして、被告の『両者の価格の差がはっきりとしており、スーツケースの外形も同じではないことから、消費者が通常の注意を払えば、その差異を分別できるため、混同には至らない』との主張を全く採用できないかについても、再検討する必要が無いわけではない。

        原審は被告等のスーツケースの外形と係争“グルーヴ”デザインの異同を細かく比較していない上、係争“グルーヴ”デザインの表徴の識別力程度や、両者の商品の客層の重複性の有無、競合関係と営業の類似レベル等の状況から、混同に至る具体的な危険性があるかどうかを総合的に判断していないため、混同誤認のおそれが生じるという抽象的な危険性のみで、直ちに被告等が係争規定に該当して侵害していると認めたことは、当該規定を不当に適用するという誤りがある。

    この2件の判決から、最高裁判所が公平交易法第22条の表徴と混同誤認のおそれと認定する要件が、知的財産裁判所のそれよりもはるかに厳格であることが分かる。

    知的財産裁判所に差し戻された後、本2件に第22条における違法行為の成立が認定されるか否かが、注目されている。

    また、実務では、仮に第22条が適用されなかったとしても、権利者は適用条件が比較的緩やかな第25条により救済を求めることもできる。

    第25条は、事業者が取引秩序に影響を及ぼすに足りる欺罔又は著しく公正を欠く行為をすることを禁じるもので、Rimowa社も訴訟提起時に合わせて主張していた。知的財産裁判所はこの部分について審理をしないままとしていたため、最高裁判所も見解を示さず、判決において知的財産裁判所に注意を促すにとどまった。

    この為、本件で将来的に知的財産裁判所が第22条を適用しないと認めた場合、第25条の適用可否が審理されることになる。そしてもし第25条が適用されれば、Rimowa社は元々の提訴の主な目的を達成することができると言える。

被告のスーツケースの一つ(判決書より抜粋)

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