台湾の知的財産事件審理法(中国語名:智慧財産案件審理法)の33条第1項によると、特許無効審判の請求人は行政訴訟の段階で新証拠を提出することができる。なお、同条の第2項は、「知的財産の主務官庁は前項における新たな証拠につき、答弁の書状を提出しその証拠に関する相手方の主張に理由があるか否かを表明しなければならない」と規定している。これについて、行政訴訟における被告の知的財産局(台湾特許庁、台湾の知的財産の主務官庁)としては、「原告の請求を棄却する」と答弁することとなるが、知的財産局が無効審判の請求人である原告の新証拠を調べたあと、その証拠に関する原告の主張に理由があると判断し、かえってその証拠に対する知的財産局の立場が原告のそれと一致する場合、知的財産局はどのような原則で行政訴訟に臨むのか。また、原告が新証拠の提出で勝訴した場合、知的財産裁判所は尚も訴訟費用を敗訴した知的財産局に負担させるか。それとも、他の判断要因で異なる対応を行う可能性があるのか。
知的財産裁判所の108年度(2019年度)行専更(一)字第1号判決の事件において、前記のように、知的財産局が答弁した際、無効審判の請求人(原告)による新証拠の組合せに関する主張に理由があることを表明した上、知的財産裁判所もそれを認めて原告に勝訴判決を下したため、知的財産局の原処分が取り消されるという知的財産局に不利な結果となった。これについて、知的財産局はその特許行政訴訟事件ケースブック(2019年~2020年版)に当事件を収録しており、その結論文に行政訴訟の際に無効審判の請求人が提出した新証拠に対する処理原則を明確に示している。
| 知的財産局が出廷する目的は、知的財産の主務官庁の職権に基づき、専門的意見を提出し知的財産裁判所の裁判官に斟酌させることにある。この目的に基づき、如何なる専門的知識に係る質問でも、知的財産局が新証拠の組合せで特許が無効となると表明し、知的財産裁判所が新証拠を採用して知的財産局の原処分が取り消されるという不利な結果をもたらしたとしても、実際、知的財産局の原処分の瑕疵によるものではない。そのため、「新証拠の組合せに関する主張に理由があるか否か」を表明する場合、客観的な立場を以って意見を陳述するほか、新証拠に関する補充答弁を行う際に、「訴訟費用の全額を原告に負担させなければならない」と知的財産裁判所に促さなければならない。 |
台湾の民事訴訟法第82条は、「当事者が適当な時期に攻撃又は防御方法を提出せず、期日又は期間を超過し、若しくはその他自己の責に帰すべき事由のために、訴訟を延滞させた場合、その当事者が勝訴した場合であっても、延滞のために生じた費用につき、裁判所はその全部又は一部の負担を命じることができる」と規定している。特許行政訴訟の訴訟費用について、原則として、裁判所は行政訴訟法第98条第1項の前段により敗訴した当事者に負担を命じることとなるが、行政訴訟法の第104条により民事訴訟法第82条が準用されるので、例外的な取り扱いが可能となる。そのため、原告が新証拠の提出で勝訴した行政訴訟の判決のうち、裁判所が敗訴した被告(知的財産局)に訴訟費用の負担を命じる場合が多数を占めているが、衡平原則により知的財産局が負担すべきではないと判断したケースもある。例えば、上記の108年度(2019年度)行専更(一)字第1号判決、及び同裁判所の109年度(2020年度)行専訴字第13号判決、109年度(2020年度)行専訴字第7号判決の事件では、裁判所は、民事訴訟法第82条の準用を理由に、新証拠を提出した原告が全部の費用を負担しなければならないと判断した。そもそも、知的財産局は無効審判の請求当時の引例に基づいて請求を認めない判断をしたため、行政訴訟が行われる前に新証拠に対し確認する術がなかった。さらに、知的財産裁判所としては、知的財産事件審理法第33条第1項により新証拠を確認しなければならないが、原告が無効審判の手続きで全部の引例を提出できるはずであったにもかかわらず、行政訴訟になってはじめて新証拠を提出した行為は、特許の有効性に対する確認を延滞させ、民事訴訟法第82条の趣旨に合致するため、原告に全部の訴訟費用を負担させたこととなる。
その他、同裁判所の108年度(2019年度)行専訴字第54号判決、108年度(2019年度)行専訴字第43号判決では類似した理由が採用されたが、原告と知的財産局は各々訴訟費用の半分を負担することとなった。また、稀な判例であるが、106年度(2017年度)行専訴字第69号判決では、原告と参加人(特許権者)は各々訴訟費用の半分を負担することとなった。その理由として、行政訴訟において参加人も敗訴した当事者であること、且つ、無効審判の対象となる特許に特許性がないことが認定された以上、特許出願時に既に特許要件に関する法律に合致していないため、参加人に訴訟費用の一部を負担させることが合理的であることが挙げられた。
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