台湾において、真正品の並行輸入の合法性は長らく論争の的となっている。とりわけ、同一商標の台湾国内における商標権者と外国における商標権者が異なる場合、並行輸入業者が商標権の消尽を主張できるかどうかについて、台湾実務界の見解に齟齬が存在している。同一の商標が台湾の国内外で異なる商標権者により取得され、これらの商標権者に相当程度の経済上の関連性がある場合、商標権の消尽原則の適用があるのだろうか。
台湾最高裁の108年度台上字第397号民事判決では、商標権者が同一の図を以て自ら、又は他人に許諾し、他国で商標登録した場合、属地主義の概念では異なる商標となるが、同一の図であるため、本質的に排他権は同一の権利者に由来するため、異なる国における商標権者に許諾関係、又は法律上の関係がある場合、消尽の効果が生ずるとしている1。
その事件の当事者である会社の責任者と営業部長(責任者の配偶者)は、争いの対象となった並行輸入行為で商標法違反として刑事告訴を提起され、一審で有罪とされた。しかし、知的財産裁判所による二審の刑事裁判では、上記の台湾最高裁の見解でこの二名の被告が無罪とされ、判決が確定した(知的財産裁判所106年度刑智上易字第11号判決。以下、当判決と称する)。そして、知的財産裁判所は、当判決を通して、台湾最高裁が示した「相当程度の経済上の関連性」という要件を一層具体化した。
当判決によると、国内外の商標権者が異なる場合、台湾国内における商標権者が外国における商標権者の取次店、代理店であれば、外国における商標権者は明らかに「商標権者の同意を得た者」ではなく、文言上、並行輸入業者は商標権の消尽を主張する余地がないように見えるが、前記台湾最高裁の108年度台上字第397号民事判決の見解に基づくと、「両者間に法律上、又は経済上の関係(例えば、関連会社、代理店、取次店、下請け製造業者等に類似する関係)があり、且つその商標が同一の商品出所を表示する場合」、外国における商標権者と国内における商標権者を同一の者と見なすことができ、商標権が消尽する。
しかし、知的財産裁判所は、台湾国内における代理店が並行輸入品の輸入を阻止できる可能性を完全に否定していない。当裁判所は、商標の出所を表示し品質を保証する機能から、「国内における商標権者が相当の努力をして、独自の商標の商業上の名誉を築き、その商標が国内における商標権者の商品のみを表示することを消費者に認識させ、その商品がその国内おける商標権者と特殊な関係を持つ外国における商標権者に由来することを認識させない場合、並行輸入された商品は国内の商標権の出所を表示する機能に危害を与えてしまうので、商標権を消尽させるべきではなく、並行輸入を禁止することができる。その他、国外における商標権者が国内の取次店、代理店に交付した商品が国内市場のみのためにデザインされた商品であり、外国において同一商標で流通されている商品と異なり、国内の商標権者がマーケティングを行うときにもその独自性を強調しており、その商標を用いる商品が国外における商標権者の商品から差別化されたものであることを消費者に認識させる場合、国内の商標権者は既に独自の商業上の名誉を築き、このときは並行輸入を禁止することができる」と論じた。
結果的に、この判決は、台湾国内における商標権者が国外における商標権者の取次店、又は代理店である場合、並行輸入業者の並行輸入行為が合法であるかどうかという判断過程に対し、「商品の特性」及び「国内の商標権者の実際のマーケティング方式」という二つの判断要因を新たに加えたので、判断結果の不確定性が一段と増している。そして、当判決の判断結果は並行輸入業者に有利であるものの、上記の判断要因の増加が、並行輸入品の市場に妨害を与える効果が生じるかどうかについては、今後の観察を要する。
1 弊サイトのこの記事を参照。
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